【閑話休題】
[記事配信時刻:2016-09-16 16:02:00]
【閑話休題】第436回・魔女狩り
▼かつて、「魔女狩り」という恐るべきムーブメントがあった。中世ヨーロッパの話だ。最もそれが跳梁していた15世紀から、18世紀までの間に、欧米大陸ではおよそ4万人の処刑が行われたとされている。
▼最も極端な数字では900万人といったような説もあるらしいし、従来は数百万人ということで話が通っていたようだが、近年の現実的な推算によると、どうも4万人くらいらしいというわけだ。
▼もっともそれは、「記録」に残っているものからの推算であり、「記録」に残らなかったあまたの虐殺行為というものを含めると、およそ4万人で収まるとはおもえない。
▼この魔女狩りで不思議なのは、実は15世紀ごろから極端なムーブメントとなったものの、それ以前、実は魔法を使うもの、あるいはそう信じられた女たちというのは、ギリシャ時代にも、エジプト時代にも、そしてカトリックが円熟していたローマにも存在したのだ。
▼実際、ローマ時代にはすでに魔術を使って他人に害をなすことは禁じられていた。しかし、魔女はただ魔女であるという理由だけで、問答無用に処刑されることはなかったのである。
▼この当時の魔女裁判は、宗教的な理由というよりも、単なる窃盗や殺人といった刑事事件として扱われていた(ある意味、現代的である)。中世ヨーロッパの魔女狩りの時代のように、組織的・狂信的に魔女が恐れられ、迫害されたことは一度としてなかったのである。つまり、魔女狩りが起きるまで、比較的平穏な「魔女の時代」は、1300年ごろまで続いていた。
▼例えば、9世紀、フランク王国のシャルル大帝(シャルルマーニュ)は「魔女をむやみに焚き殺すことは殺人罪に相当する」と布告した。同じ頃フランス・リヨンの大司教アゴバールが、魔女の嫌疑を受けた人々を、すんでのところでリンチされるところを救ったという記録が残っている。
▼また、1080年、教皇グレゴリウス7世は「暴風雨や災厄を魔女のせいだとするのは全く悪い習慣である」とデンマークのハーラル王に書き送っている。
▼更に初期の裁判例では、非常に面白い事例が確認されている。イングランドで飛行する魔女が目撃されて逮捕されたのだが、その後、無罪放免になっているのだ。その理由は「だれにも迷惑をかけていないから。空を飛ぶこと自体は、法律では禁じられていない」というものであった。
▼時代は昔、ずっと鷹揚(おうよう)なものだったのだ。言葉を変えれば、理性的だったのだ。魔女だというだけで、目くじらを立て始めたのは、その後である。
▼魔女狩りが、本格的に始まったのは、「異端審問制度」が始まってからのことだ。
「魔女は死刑にすべきである。殺人を犯したからではなく、悪魔と結託したがゆえに」ということで、即刻一方的な宗教裁判にかけられ、拷問され、殺されていったのである。
▼ではなぜ、異端審問制度が始まったのか。これは、実はカトリックによるきわめて政治的な思惑が背景にあったと言われる。いわゆる、「カタリ派」の台頭に畏怖したのである。
▼北イタリアで発生したカタリ派は、グノーシス主義(フリーメーソンの出自ともいわれる)と同じように、物質世界に捉えられた魂(性悪説)はこの世を逃れることで非物質世界である天国に到達できると考える思想を持っていた。
▼カタリ派の教義は、魔女狩りの過程でことごとく焚書坑儒され、徹底的に歴史から抹殺されてしまったために、もともとどういうものであったのか、その全貌はいまだに明らかになっていない。あくまで弾圧した側の文書などから類推するしかないのである。
▼カタリ派によれば、この世から逃れるための唯一の方法が、汚れた世俗と関係を断ち切って禁欲生活を送ることであった。そうすれば、死後はすみやかに天国に行くと考えたのだ。とてもおとなしい、周囲に害悪を与えるような思想ではない。しかし、その完全な禁欲生活は、当時のカトリック教会の聖職者たちの堕落した生活とは対照的なものであった。カトリックによる酸鼻を極める魔女狩り・弾圧の根拠は、ここにある。
▼1300年、つまり14世紀に入るや、魔女は即、死刑の有無をいわせぬ判決が下るようになる。その後エスカレートしていくにつれて、一般大衆の間で、いわば集団ヒステリー状況を生み出し、非常に厄介で、収拾がつかない事態に陥ることになる。教会でさえ、コントロール不能になっていったのだ。
▼さて、こんな縁もゆかりもない、中世ヨーロッパの魔女狩りを引っ張り出したのには、それなりに理由がある。実は今でも、現代の魔女狩りと言ってもいいような社会現象が、しょっちゅう発生しているのだ。それが、恐ろしい。
▼その真偽がいったいどうだったのか、いまだに釈然としない「事件」ではあったが、例の、STAP細胞を巡る小保方女史に対するバッシングしかり。著名人などのセクハラ発言から、一般的な痴漢行為の冤罪事件まで、大きいものから小さいものまで、要するに行動原理は魔女狩りと同じである。つまり、つねに、釈明の場すら奪うような、一方的な糾弾、社会的なリンチだということである。メディアはこの魔女狩りの発展に最も貢献しているといっていいだろう。
▼日本でも折々こうした集団リンチ症候群のようなものが発生するが、もっとも国ぐるみで魔女狩りをしているところもある。反日を国是としている、いわば魔女(親日本派)狩りが常態となっている韓国や中国である。
▼2014年6月だったと思うが、韓国では日本植民支配を擁護したり殉国烈士・愛国志士・強制動員被害者の名誉を傷つける行為を処罰する内容を含む「日帝植民支配擁護行為者処罰法制定法律案」が議会で発議された。
▼その当時の改正案によれば日帝の国権侵奪に反対し独立のために日帝に抵抗した行為を誹謗したり関連した歴史的事実をねつ造して流布するなど過去の歴史を歪曲する行為や親日反民族行為を称賛・正当化した場合、5年以下の懲役または、5000万ウォン以下の罰金に処することになるようなものだった。
▼繰り返す。「歴史を捏造して流布する者は、5年以下の懲役か5000万ウォン以下の罰金」である。当時このことを聞いたとき、わたしなどは腰を抜かしそうになった。この法案はその後、どうなったのだろうか。興味もないので、結局立法化されたか、とんと知らないのだが、仮に成立していたら大変だ。韓国人のほとんどが、5年以下の懲役または、5000万ウォン以下の罰金に処せられてしまうではないか。
▼中国は、そこまで極端に走らず、万事政治的に都合よく「操作」しているが、大衆動員するという点では、もっとタチが悪いかもしれない。すべて魔女狩りで、世論をコントロールしようという点では、韓国より筋金入りである。
▼いやだいやだ。管理された魔女狩りも、土着病のように定期的に発生する魔女狩りもどっちもいやだ。なにも、大陸国家だけではない。欧州とて同じこと。ナチスによるユダヤ人虐殺が「無かった」とか、疑惑を述べるだけで、そのまま犯罪として罰されるというのは、まるで中世の魔女狩りが、そのまままだ欧州に生きているということと同じではないか。一体どういうことなのだろうか。一方的にならずに済む時代は、果たしてくるのだろうか。
▼大勢と違う意見を言うこと自体が、衆人に罵倒されるだけでは済まされず、犯罪にすらされてしまうというのは、民主主義や人権とか、近代的価値観どころの話ではない。要するに、野蛮への退行現象にしか見えない。そういう「仕掛け」をする政治、それにまんまと乗せられるヒステリーな大衆、どちらも同罪である。粛清されなければならないのは、そういう「運動」のほうだ。
増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄
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