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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第473回・クラシックへの誘(いざな)い

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【閑話休題】第473回・クラシックへの誘(いざな)い

【閑話休題】

[記事配信時刻:2017-06-09 16:47:00]

【閑話休題】第473回・クラシックへの誘(いざな)い

▼少々相場に疲れてきたところ。ネタ切れもあるので、今回は音楽をざらっと並べて胡麻化そうと思う。

▼けして、現代ポップス、ジャズ、ロック、ラテンが嫌いなわけではない。が、だんだん聴いているうちに飽きてくるのは、わたしだけだろうか。

▼結局、クラシックに戻るのだ。今日は、ネタ切れもあるので、クラシックにどちらかという縁遠い人向けに、導入にでもなればといくつかyoutubeから引っ張ってきた。

▼人間、長く生きていると、昔、どういう年齢のときに、こんな音楽を聴いていたということは、誰しも覚えがあるだろう。音楽を聴くと、その当時自分が何をしていたかを思い出したり、時代を思い出したりする。

▼おそらく音楽というのは、本当の意味で、人間にとってはBGM=バック・グラウンド・ミュージックなのだろう。

▼ここでは、好みも人それぞれだろうから何ともいえないのだが、独断と偏見で、ざっと状況に合わせて、サンプルを選んでみた。できるだけ短いものを集めた。管弦楽で、長くても10分ていどだ。しかも、ほとんどが、映画音楽のBGMにどれだけ使われたかわからない、というものばかりだ。気が向いたら、youtubeをググられよ。以前も、閑話休題で引き合いに出したことはあるような気がするが、きちっとまとめて並べたことは無いように思う。

▼さらりと気持ちよくなりたい人向け。

【ショパン エチュードOP25-1 】

https://www.youtube.com/watch?v=GOe670xcKhk

ショパンのピアノ練習曲の一つだが、奏者にとっては、終始右の小指だけで旋律をつなげていかなければならないところが、聴かせどころだ。
通称、「エオリアン・ハープ」とか、「牧童」、「牧童の笛」と呼ばれたりしている非常に短い曲だが、よくプロが好んで演奏する名曲だ。
ショパン自身は、「牧童が、近づいてくる暴風雨を避けて洞窟に避難している。遠くで風や雨が吹きずさんでいるが、牧童は静かに笛を取って美しい旋律を吹いている。そういうところを思い浮かべてみなさい。」と述べている。
ショパンにしては、珍しく「健康的な」曲想だと思う。ちなみに、シューマンは、この曲を、「練習曲というよりも、詩だ。」と言っている。
ショパンの心臓は、ワルシャワの聖十字架教会に埋葬されている。

(ショパン)

▼恋愛や情熱に燃え上がりたい人向け。

【リスト 愛の夢】

https://www.youtube.com/watch?v=IKfe1TtBd6w

もともとリストが3つの歌曲を作り、それを後にピアノ・ソロ用に編曲しなおしたものだ。ここに挙げているのは、三曲目だ。
小品ながら、リストらしい絢爛豪華そのものだ。プロからアマチュアまで、広く演奏に使われるが、流れるような展開部は意外に難しい。
聴く分には、ひたすら、恋愛の惑いと奔騰する情熱と、それに伴う苦しみが如何なく盛り込まれているので、どっぷり浸れるだろう。

(リスト)

▼とにかくロマンティックな気分、感傷に浸りたい人向け。

【ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲から、第18番変奏曲】

https://www.youtube.com/watch?v=yTyiwtfpO8s

恋愛中の人にもいいのかもしれないが、やはりなんといっても感傷的な気分に沈み込みたい人向けだろう。甘美な旋律は、ロシア・センチメンタリズムの結晶といってもいい小品だ。数多の映画音楽で、おそらく一番多用されている曲の一つだろう。
とくにこの曲が映画音楽に使われて有名になったものには、『ある日何処かで(Somewhere in time』がある。

(ラフマニノフ)

(ある日何処かで)

▼ノスタルジアに浸りたい人向け。

【ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ】

https://www.youtube.com/watch?v=pIy-UZEir4A

フランスのモーリス・ラヴェルの名品だ。オーケストレーションの天才、管弦楽の魔術師と呼ばれるだけあって、その音階の組み合わせ(和声)は、確かに余人をもって代えがたい。ラヴェルというと、「ボレロ」が有名だが、わたしはこのほうがずっと好きだ。
パヴァーヌというのは、16-17世紀の欧州宮廷に普及していた舞踏の一種だそうだ。
一見、タイトルからすると、死者の弔いのようなイメージを持つが、ラヴェルに言わせると、「昔、スペインの宮廷で小さな王女が躍ったようなパヴァーヌ」だとしている。
おそらく聴くほうの勝手だから、鎮魂歌として聴いても良いのだろうが、本来は、むしろ往時、昔日への郷愁・懐古的な雰囲気に浸りたい人向きなのだろう。

(ラヴェル)

▼株に疲れた。とにかく、やすらぎが欲しい人向け。

【ボロディン 弦楽四重奏曲第2番 第1楽章・第3楽章】
第1楽章:

https://www.youtube.com/watch?v=fgbzzIYYQ5Q

第3楽章:

https://www.youtube.com/watch?v=OKm-oipDkp0

ロシアの化学者という異色の作曲家ボロディンの作品。本業は、アルデヒドの研究などでしられる化学者で、音楽に関しては「日曜作曲家」と自称していたようだ。
弦楽四重奏曲の中でも、かなり人気が高い曲目で、古典派・ロマン派・民族楽派問わず、好まれている。
非常に抒情的で、心地よいストリングに終始しているので、とくに疲労感の強いときにお勧めの一曲。
ちなみに、この曲は、ボロディンが妻に愛を告白した20周年の記念として、夫人のエカテリーナ・ボロディナにに献呈されている。

(ボロディン)

▼エキゾチックな気分を味わいたい人向け。

【ボロディン オペラ「イーゴリ公」から 「韃靼(だったん)人の踊り」】(ロック・バージョン)

https://www.youtube.com/watch?v=ISTAKDPZYoI

ロシアのボロディン作のオペラの一部分(第二幕)だが、これは珍しくロックにアレンジされている。クラシックでも、ボロディンの作品では最も人気の高い歌曲だ。イスラム文化圏の、独特のエキゾチズムが炸裂しているものの、やはりロシアの感傷趣味がそれを際立たせているといったほうがいいかもしれない。

(オペラ「イーゴリ公」から、「韃靼人の踊り」)

▼とにかく、勢いが欲しい人、前向きに気分を押し出したい人向け。

【ワーグナー オペラ「ニュルンベルグのマイスタージンガー」から序曲】
https://www.youtube.com/watch?v=9-JaIa8fBKA

ワーグナーの中でも、かなり「健康的」な仕上がりになっている。なんにせよ、テンションを高めたいと思っている人には、おあつらえむきだ。なにしろ、ナチス・ドイツのテーマ音楽に使われたくらいだから、そう聞けばどういう曲か一発でわかる。
人間、音楽一つでわーっと、感情が高ぶってくるというのがわかる典型的な曲だ。さすがに、この曲はステレオで、大音響で聴いたほうが迫力がある。

(ワーグナーとコジマ夫人)

▼人生の賛歌や荘厳に酔いたい人向け。

【マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」から最終部】

https://www.youtube.com/watch?v=o1E8QL89msc

「千人の交響曲」というタイトルは、興行主がつけたもので、マーラーの命名ではない。むしろ、嫌悪していたらしい。
この曲は、マーラーの自作演奏会として生涯最大の成功を収めたと同時に、近代ヨーロッパにおいて音楽創造が文化的事件となった典型的な例となっている。
これまでの作品には、いずれも主観的な悲劇を扱ってきたが、この交響曲は、偉大な歓喜と栄光を讃えている。
生涯、悲劇を扱うことが多かったマーラーが、珍しく生に対する壮大な賛歌を歌い上げていうる。この作品を妻のアルマに献げており、自身の作品を他者に献呈したのは、これが唯一だ。ユダヤ人故に、反ユダヤが盛り上がっていたウィーンで、さまざまな行きがかりから、音楽界のみならずオーストリア=ハンガリー二重帝国全体を敵に回すような孤立感の中でつくられた傑作である。
初演は大成功をおさめ、演奏終了時、聴衆も演奏者も熱狂の渦に包まれたという。批評家の書き残したものによると、「嵐のような熱狂は30分近く続いた。…マーラーはおそらくこのとき、その生涯の絶頂、名声の絶頂に達した。」となっている。
マーラーは、その絶頂の中で、8か月後、逝った。

(マーラー)

▼深い信仰や、神秘に浸りたい人向け。

【リスト 詩的で宗教的な調べ3 孤独の中の神の祝福】

https://www.youtube.com/watch?v=quYl0LcFKgY

これだけが、16分と長い。それだけ、ソウルフルなものを求める人には満足してもらえる名曲である。
ラマルティーヌの同名の詩から、「おお、神よ、私を包み込むこの平安はどこから来るのか。私の心に満ちあふれる信仰はどこから来るのか…」が掲げられている。
内省的、瞑想的な曲想は、晩年のリストに多いが、この曲は20台後半から30代前半にかけてつくられた曲集で、そのうちの3番目にあたり、もっとも人気が高い。

▼以上挙げた曲目には、一つも古典派、バロック派などが含まれていない。これは好みだから致し方ないとして、ご容赦願いたい。すべてロマン派か、民族楽派である。クラシック好きには、何をいまさらの名曲ばかりだろうが、あまりクラシックを聴くことが無かった人には、入りやすい曲目ではないかと思う。

▼最後に、曲というよりも(曲も名曲なのだが)、名演奏のほうを挙げておこう。同じ曲でも、演者によってこれだけ違うかという典型である。

▼ここに挙げるのは、アルトゥール・ルビンシュタイン演奏の、ショパンの【英雄ポロネーズ】である。

【ショパン 英雄ポロネーズ】アルトゥール・ルビンシュタイン

https://www.youtube.com/watch?v=nsl7XDTBaJo

ショパンの中でも、冒頭に挙げたものとは違って意味で、珍しいほど「健康的」な曲想である。
それよりなにより、ルビンシュタインの演奏が、もはや神業だ。録音は、1964年のモスクワ・リサイタルでのものだから、非常に悪い。しかし、年月と録音の悪さを超えて、おそらくクラシックに縁の薄い人でも、ほとんど圧倒的という迫力と品格に、心が震えるのではないだろうか。そういう名演奏である。幾多の演者の「英雄ポロネーズ」を聴いてきたが、とてもではないが、ルビンシュタインのこの時の演奏に勝るものは、今まで一度もめぐり合っていない。それほど贅沢な演奏だ。
実際、このときのモスクワ大ホールは35分間に及ぶ、スタンディングオベーションで興奮の坩堝と化したことは、今や伝説にすらなっている。
確かに、音楽は、人を動かすのだろう。

▼蛇足として、ひたすらドラマティックな感動を得たいという人には、全曲ではないのだが、部分だけ引っ張ってこよう。

【チャイコフスキー ロメオとジュリエット幻想序曲】

https://www.youtube.com/watch?v=TfPpa2k4RFM

バーンスタインの指揮だから、いかにも、原曲のドラマティックさをさらに煽り立てている。クラシックの素人を自称する人でも、ドラマティックとはどういうことか、一発でわかる名曲だが、なにしろ長い。全曲で22分だから、クラシックに慣れていない人には、退屈でしかたないだろう。そこで、いわゆる「名場面」だけ、紹介しておく。
上のyoutubeのバースタイン指揮のものでは、9分過ぎから、そして後半は15分30秒すぎから、ロメオとジュリエットの最大の盛り上がりが登場してくる。二か所とも、せいぜい3-4分だけの部分に過ぎない。が、こんなちょい飲み気分でも、がーんと胸を打つものがあるはずだ。
チャイコフスキーというのは、こういう素人好きのする感動の盛り上げ方がとてもうまい。

(チャイコフスキー)
@a

ざっと、クラシックには縁遠い人でも楽しめそうなものを選んだつもりだがどうだろうか。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄




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