忍者ブログ

増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第128回・夏の終わり

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

【閑話休題】第128回・夏の終わり

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-09-03 17:30:00]

【閑話休題】第128回・夏の終わり

▼夏の終わりに、もっともふさわしい風情の一つに、「ひぐらし」がある。とくに、人の気配が次第になくなってくる頃、海岸の松林に広がる「ひぐらし」の声に、いわく言いがたい哀感を覚えるのは、私だけではないだろう。まだ、今年はそれが聞こえない。

▼今年の夏は、浴衣などというものを一度も着る機会がなく終わりそうだ。私の父親は古い人間だったから、いつも家ではステテコ、ラクダのシャツに丹前だった。夏は当然、ステテコ一丁か、浴衣だ。昭和30年代は、そこかしこで、まだそんな男性の姿が普通のように見られたものだ。父親などは、冬場は丹前姿に襟巻き、ベレー帽、下駄であった。ハイライトを吸いながら、散歩する姿は、今だったら異様な風体だろうが、当時としてはおそらくかなりハイカラだったろう。

▼その浴衣だが、もともと日本では夏に合わせて、見事な着分けがなされていた時代があった。日中は白地の浴衣で涼む。夜は虫避けもかねて、紺色の藍染めの浴衣だ。西部開拓時代のアメリカで、ジーンズにインディゴが用いられたのも、同じ効用を目的としている。今では日常、家の中を浴衣で過ごすなどという光景は、まず見られなくなった。

▼物がなくなっていくのなら、せめて行為だけでもと、失われていく時代に抵抗を試みようとしたくなる。たとえば、「打ち水」などはそうかもしれない。しかし、たちまち近所から「節水しなければいけないのに、あんな無駄づかいをしている」と非難されそうだ。面倒な世の中になったものだ。

▼話は変わるが、そういえば父親は、長年「ふんどし」の愛用者だった。私はといえば、高校のとき父親にすすめられて、夏場に「ふんどし」を使った。これが実に爽快であったため、冬場も通して結局、社会人一年生のときまで用い続けた。

▼ただ当時でも、すでに「ふんどし」を売っているところはほとんどなく、自分で麻布を買ってきては切り、縫い、自前のものを使っていた。社会人になってからというもの、その作り直す手間がやたらと面倒になり、とうとうパンツに戻ってしまった経緯がある。

▼時代が経つにつれて、時節の風物詩も次第に姿を消していった。子供のころには、家に電気冷蔵庫がなかったから、氷屋さんが自転車付きのリヤカーで、大きな氷を何柱も積んで売りにきたものだ。それをのこぎりで切ってもらい、家の木製冷蔵庫に入れて、食品を保存していた。

▼蚊帳(かや)などというものも、ほとんど絶滅危惧種ではないかと思われる。扇子ですら、私は出かけるときにはいつも持っていくのだが、結局どこにいっても冷房があるので、無用の長物と化す。

▼寝るときにも、昔は氷枕に頭をおき、ゴザを布団の上に敷くと実に心地よく寝入ることができたものだが、今では私も安易にエアコンをつけてしまう。思えば昔の人は、エアコンのない時代によく炎天下で暮らせたものだ。どこへ行ってもエアコンなどは滅多になく、扇風機がカラカラと音を立てているだけだった。体への負担は、今とは比べ物にならないくらい大きかったことだろう。

▼フィリピンでは1960年代まで、平均寿命といったら40~50歳代にすぎなかった。それが、日本の中古のエアコンが大量に流れ込むようになってから、庶民でもエアコンを持てるようになり、80年代後半には、一気に60歳代まで伸びたという。それだけ熱帯の気候は心臓などへ負担をかける。だから熱帯地方の人たちがダラダラしているとか、のんびりしているとかいうのは間違っている。肉体への負荷は、われわれ温帯地方の人間に比べてはるかに大きいのだ。

▼夏の終わりと書いたが、すでに暦の上では秋である。中秋が近い。今年は9月19日だそうだ。満月が予定されている。その直前には、シリアから戻った国連調査団の結果も判明していることだろう。日本ではメジャーSQが終わり、FOMCも終わった直後だ。タイミングとしてはマクロから、日米の中間期末の業績のようなミクロへと、材料の視点が変わっていく時期になる。

▼さて、満月に相場が転換するというが、夏枯れ相場から、豊熟の秋相場へと実り多いものになる転機になるだろうか。それにしても、まだ「ひぐらし」の声は聞こえてこない。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



日刊チャート新聞のコンテンツは増田足のパソコン用ソフト、モバイル用アプリから閲覧可能です。

15日間無料お試しはこちらから
https://secure.masudaasi.com/landing/pre.html?mode=cs
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。