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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第255回・暗 闘

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【閑話休題】第255回・暗 闘

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-03-14 16:26:00]

【閑話休題】第255回・暗 闘

▼昨日、地政学の話を書いたが、そこから派生して、現在の中国の時事的問題に及んでみようと思う。

▼いったい何が起こっているのだろうか。中国の政策発動というものは、必ずといっていいほど権力闘争がその裏にある。どこの国も多かれ少なかれそうした傾向はあるものの、中国のそれは凄まじい。

▼地政学的な見地から見れば、あまりにも自浄作用を超えた規模であるというそのこと自体が、大きな不具合と不協和音を奏でる。それが、過去のような鎖国状態であれば、国内だけの影響にとどまるが、いまや中途半端に市場開放をしているだけに、世界にも甚大な影響を及ぼしてしまう。

▼世界の鉄鋼需要が平均15億トンというときに、生産能力は20億トンである。完全に過剰生産業種になっているわけだが、中国沿海部の港湾には、行き場の無い膨大な鉄鋼石や鋼材が山積みとなったまま放置されている。世界の銅需要の4割をがぶ呑みしているために、理財商品の不渡りを補填するのに、担保となっている銅を投売りして、これが暴落する、といったようなことも、すべてそうだ。

▼ここに、中国という国の制御能力の限界が見てとれよう。景気のサイクルごとに、どこの国の産業界も、過剰設備投資と過剰生産、逆に需給逼迫といった「行き過ぎ」の循環を繰り返す。しかし、中国のそれは日本の10倍、アメリカの4倍の規模で「行過ぎる」のだ。

▼汚職などの腐敗も、その規模と根深さは、一般の近代国家のレベルを遥かに越えてしまう。今、石油公社の大立者・周永康(以下、敬称略)に司直の手が及んでいるが、すでに糾弾されている薄熙来とは一蓮托生と言われる。彼らの後ろにいるのは、元老・江沢民(前国家主席)である。前国家主席・胡錦濤派と、この江沢民派で、文字通り血で血を洗う暗闘が繰り広げられているというのが、もっぱらの観測だ。

▼政敵を追い落とすのに手段を選ばない。先般、雲南省昆明駅舎内で起こった、無差別殺人を見てみよう。事件は、3月1日夜に起き、刃物を持った集団が駅の利用者を切りつけた。29人が死亡し、143人が負傷した。中国当局の見解では、犯行グループは男6人、女2人の8人で、事件現場で4人を射殺、1人の身柄を拘束した。3月3日に拘束された3人と合わせると、犯行グループ全員の身柄を押さえたことになる。

▼誰しも推測するのは、ウィグル人など少数民族の過激派による犯行というものだろう。わたしもそう思ったが、どうも事件の詳細が明らかになっていくにつれて、疑問が多い。イスラム系がこれまで中国で行ってきたテロ行為と、かなり異質なものを感じるのは、わたしだけだろうか。

▼なにしろ、刃物なのだ。しかも実行犯8人というのに、現場で押収された刃物が20本というのは、どういうことなのか。両手に持っても余る。しかも、これだけの大量無差別殺人である。やるなら当然、先般の天安門広場での車を使った自爆テロのように(これも真実はわからない)、目だったところでアピールするだろう。なぜ、観光名所とはいえ、田舎の昆明なのか。

▼雲南はほかの少数民族も多いため、同じ少数民族に累が及ぶことを憚(はばか)って、まず「除外する」場所のはずだ。北京や上海といった、大都市こそがテロの効果が一番大きい。テロである以上、なによりも「象徴的」な場所でなければならないのだ。

▼もちろん、一分の観測でしかないのだが、この事件は、当局がやったのではないか、という見方もあるのだ。武装警察のOBなどを言わば騙して、無差別テロを行わせる。まんまと逃亡する筋書きだったのを、当局が「予定通り」一網打尽にして鎮圧する。

▼今の中国では、そんなことが平気でまかり通る。まったく関係無いのに、なんでもイスラム系少数民族のせいにされているかもしれない、ということくらいは、頭に入れておいたほうが良さそうだ。

▼そこに、今回のクアラルンプル発、北京行きのマレーシア航空の消息不明事件である。これもおかしい、どこのレーダーにも爆発のようなものが確認されていない。ハイジャックなどの際の救難信号も確認されていない。ブラックボックスの信号発信も無い。これだけ各国が捜索していながら、まともな残留物がほとんど海上には皆無である。

▼偶然に偶然が重なってそういうこともあるだろうが、どうもおかしい。そもそも上述の、昨年10月に起こった、イスラム系家族が天安門の毛沢東肖像前に、つっこんで自爆した事件も、指摘すれば、あまりにも不可解な証拠が多すぎる。

▼昨年10月の自動車自爆テロ、先般の昆明駅無差別殺人、今回のマレーシア航空機消息不明事件と、一連の出来事は、もしかしたら一本の線でつながっている疑惑も取りざたされている。

▼クアラルンプル空港は国際ハブであるから、長いこと高飛びや、薬物の密輸などの起点になったり、ストップオーバー(経由地)になったりしている。通常、出国の際には、航空会社と出入国管理局でパスポートチェックが二重に行われる。

▼しかし、同じ便に搭乗する4人が、盗難されたパスポートでやすやすと出国しているところを見ると、そこに協力者がいたと考えるほうが自然だろう。

▼国際刑事警察機構によると、そのうちの2人のパスポートは、同機構のデータベースに盗難パスポートとして登録されていたことが確認された。しかしながら、不可解なことに、この情報は、これまで照会された形跡が皆目無いというのである。

▼そして、妙に中国は、この捜索活動に熱心である。大規模な艦艇・航空機による捜索に乗り出しているのだ。これも、不可解である。中国当局はあらかじめ、このテロ計画を知っていた、とも言われる。

▼というのは、この航空機事故(としておく)が発生する直前、政府は軍に対して、正体不明の航空機が北京に接近した場合には撃墜せよとの命令を下していたようだ。それが事実なら、やはり知っていたということになる。

▼では、偽造パスポートで搭乗した4人が、ハイジャックによるテロを敢行したのだと仮にしよう。いったい、それでどうしようと思っていたのか。実は、驚くべき説が取りざたされている。それは、ハイジャックした航空機で、かつての911事件さながら、機体ごと自爆突入するという計画である。

▼時折りしも全国人民代表大会(昨日閉幕)である。これが自爆突入のターゲットだったのではないか、というのだ。これなら、イスラムらしいドラマティックなテロ計画だ。昆明事件とは、雲泥の差である。

▼中国が大規模な捜索を開始したということは、おそらく撃墜、あるいは途中で自爆、墜落したマレーシア航空機の消息が、なにか掴めたということなのかもしれない。現場を完全に軍が封鎖し、重要な痕跡はすべて消してしまうつもりかもしれない。

▼そもそも、昆明の事件と、マレーシア航空の事件は、一見無関係のようでいて、実は一体のものなのか。現地では、両事件が実はつながっているのではないか、という疑惑が解けないようだ。

▼意味不明の奇怪な事件が続く中、先述のように全人代が閉幕したわけだが、これら一連の謎の事件は、これから起こる事態の伏線であるかもしれない。というのは、江沢民派の代表格・薄熙来追及が始まったのは、前回の全人代の直後だったからだ。しかも、話を複雑にしているのは、習近平国家主席が、江沢民であるという事実だ。

▼全人代が終わった今、当局はなにかを始めようとしているのかもしれない。2012年の反日デモのときも、ちょうど激しい権力闘争が行われていた真っ最中だった。デモが、そのカモフラージュに使われたことは、ほぼ間違いない。「官製デモ」と呼ばれる所以だ。

▼すべては藪の中だが、全人代の後の「異変」では、一体なにが起ころうしているのだろうか。よその国のことだが、興味は尽きない。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄


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