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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第257回・外来語

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【閑話休題】第257回・外来語

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-03-18 15:36:00]

【閑話休題】第257回・外来語

▼和製英語には、いくつかのパターンがある。代表的な二つのパターンを挙げてみよう。一つは、もともと英語だったのだが、これがまったく誤解されて、まったく違った意味で使われているうちに、完全に日本語として定着したものだ。もう一つは、まったく日本人の手によって作られた英語風のもので、実は英語にはそんな言葉はなく、英米人に言ったところで意味不明というものだ。

▼まず、前者を見てみよう。『フリーマーケット』というのがある。一般にfree(自由な、無料の)という意味で、了解している日本人も多い。しかし、元の綴(つづ)りは、fleaだ。これは、「のみ」の意味にほかならない。「のみ」がついていてもおかしくないほど、汚かったり、古かったりする物品を、二束三文で投売りしている市場ということだ。

▼『ショートケーキ』というのも、長いことわたしは意味不明であった。Short(短い)ケーキってどういう意味だ、と、ずっと悩んでいたことがある。聞けば、ぜんぜん違うではないか。本当の意味は「shortening」(もろい、くずれやすい)という意味なのだそうだ。

▼『スイートルーム』というのもある。ショートケーキよりは早めにその意味を知ることができたのだが、なんでsweet(甘い)部屋なのか、ずいぶん悩んだものだった。ついつい隠微なことを考えてしまった。ところが、suiteではないか。「揃(そろ)い」、つまり、リビング、寝室、応接間など各種用途の部屋が、1セットになっているものを、スイートという。

▼このsuiteという英語は、たとえば、音楽の組曲のようなものも、表現する。たとえば、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の組曲といった場合、Nutcracker suiteと言う。

▼これらはみな、正しい英語を知っているかどうか、ということなのだが、後者のほうはいささか違う。そもそもそんな英語などないのだ。野球の『ナイター』などというのはその最たるものだ。いつ、誰が使い始めたのかもわからないが、実に定着している。

▼『ベースアップ』などというのも、普通向こうではpay raiseである。おそらく意味は通じない。『ファンタジック』という造語も、英語には無い。Fantastic(ファンタスティック)ならある。『アイスキャンディー』なんてものもない。

▼『ドライブイン』というのも、英語で使ってしまうと、自動車を乗り入れたまま映画を観ることができる野外劇場やファーストフードレストランを指す。

▼『バックミラー』は、reaview mirrorだ。『ビニールテープ』は、plastic tapeだ。『ぺーパーカンパニー』はshell campanyだ。Shellとは貝のことだが、貝殻だけで中身がない、とう意味合いなのかもしれない。いずれにしろ、和製英語もいいたいことはそういうことなのだが、やはり和製英語であることに変わりは無い。

▼『モーニングコール』が、wake-up callだというのは、ビジネスホテルに一度でも泊まったことがある人なら、内線電話機やベッド近くのアラーム時計のところに書いてあるから、ご存知だろう。たいてい、あれで『モーニングコール』が実は和製英語だ、ということに気づく人が多いはずだ。かくいうわたしもそうだった。

▼『ジェットコースター』は、もともとroller coaster(ローラー・コースター)だし、『クラクション』は、horn(警笛)だ。

▼こうしてみると、実に多種多様、多彩な和製英語が夥しくでてくる。すべてが、原語を離れて一人歩きをし、今では立派な日本語だ。これを可笑しいということくらい、馬鹿な話もない。

▼ちなみに、こういう誤解から生まれた和製言語には、なにも英語からばかりではない。たとえば、ロシア語にもある。『イクラ』だが、そもそもがロシア語で「魚卵」のことだ。サケに限らず、魚卵であればキャビアも、たらこもすべて「イクラ」だ。

▼日本では、サケ科の卵をバラした物のみを指すが、サケの卵は、ロシアでは「赤いイクラ」(クラースナヤ・イクラー)と呼ばれる。一方、キャビアは「黒いイクラ」(チョールナヤ・イクラー)だ。

▼もともと日本では、サケの卵巣から取り出したもの(筋子)と粒状にばらしたもの(イクラ)を区別する名称がなかった。あるとき、ロシア人が粒状にばらしたサケの卵を「イクラ」と呼んでいるのを見た日本人が、これを「イクラ」と呼ぶものと思ったことに由来するらしい。実際、筋子と区別するのに都合がよかったのだろう。

▼古くは、『パン』は戦国時代にポルトガルから入ってきた言葉と言われるが、原義は「餌を与える」といったような意味らしい。

▼『天麩羅(てんぷら)』というのもいろいろ諸説あるようだ。戦国期まで遡ると、なかなか由来を特定するのが難しくなってくるようだ。このてんぷらの場合は、ポルトガル語の調理(テンペロ、tenpero)なのか、スペインの風習で魚の揚げ物を食べる日(テンプロ、tempro)なのか、よくわからない。

▼スペイン語には、tenprano(テンプラーノ、早い)という言葉があるけれども、天麩羅というのは、日本ではその後、ファーストフードとして開花していったことからすると、もしかしたら、このテンプラーノかもしれない。

▼残念ながら、この戦国期に入ってきた南蛮からの和製外国語は、いまや死語と化しているものが多い。『ギヤマン(ダイヤモンド)』、『ビードロ(ガラス)』。まだほそぼそと生きているものでは、カルタ、金平糖、ブランコなどがある。このへんの古い南蛮語が、実生活ではほぼ使われなくなってしまったことは、とても惜しい気がする。

▼もはや死語といってもいい、『襦袢(じゅばん)』だが、これもポルトガル語からきたらしい。ジバンというらしいが、さらに元を正すとアラビヤ語だという。いずれにしろ、襦袢という様式のものを、日本に持ち込んだのはポルトガル人だったというから、驚きである。

▼『おんぶ』というのも、ポルトガル語らしい。Ombro(背負う、肩)が由来らしいが、いや、韓国語のオブバだ、という説もある。「おんぶして」を「オンブジュセヨ」というらしい。一体どちらなのだろうか。

▼こうやって言葉の原義を辿っていくと、どんどん歴史の流れや、文化の形成過程が、なんとなく頭の中で広がってくるから楽しいものだ。時代によって、流行というものがあるように、吸収して借用する外来語という文化形成も、どうやら免れないようだ。

▼戦後は、明治期には、ドイツ語が流入し(『アルバイト』、『コンパ』、『カプセル』)、社会主義がはびこりはじめると、ロシア語がどんどん入ってきた(『インテリ』、『カンパ』、『ノルマ』)。戦後はご存知、怒涛のごとく英米語が流入。近年はサッカー人気が影響しているのか、やたらとイタリア語が氾濫している。それも、分野は無差別に使われている。

▼このイタリア語はいまや商品名でも、料理名でも、鬱陶しいくらいだ。イタリア語ではないのかもしれないが、「イタリア風」の言葉も、なんだかあちこちで使われているような気がする。では、このイタリア人気が一巡した後、この先はどうなるのだろう。次に、日本語を席巻する外国語、外来語というものは、なにがくるのだろうか。あの国か、この国か、と想像するのも、意外と時代を先読みするのには、いいアプローチかもしれない。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄




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