忍者ブログ

増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第30回・江戸のロボット

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

【閑話休題】第30回・江戸のロボット

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-04-12 17:00:00]

【閑話休題】第30回・江戸のロボット


▼アメリカという国は、あれほど自己中心でありながら、作り出す価値はやたらに普遍的であったりする。スニーカー、ジッパー、Tシャツ、ジーンズ、タッパウェア、サランラップ、バンドエイド、ケチャップなどのチューブ容器、シリアル食品、チューインガム、エレベーターやエスカレーター、冷蔵庫、洗濯機など数え上げれば限りがない。電子レンジもそうだ。巡航ミサイル製造大手のレイセオンが開発した。レーダー部門の技師が、ポケットの中のチョコバーが溶けていたことから着想したという。

▼日本が作り出したもので、こうしたものはあるだろうか。宮崎駿のような、アニメの世界に期待がかかっているが、まだそこまでには至っていないようだ。いつまでたっても、「学芸会」の域を出ない日本映画だが、それでも黒澤監督のようにハリウッドに多数の信奉者を生み、その技法が受け継がれたような例はある。しかし、そうした輝くような日本の「凄さ」は、おおむね個人技の世界にとどまり、日本の社会的潮流とはいささか異なる。

▼戦後のものでは、ソニーのウォークマンは、世界中の人々のライフスタイルをひっくり返すほどのインパクトがあった。いまだかつて、日本が生んだ製品で、あれだけの衝撃的な革命はなかったのではなかろうか。それを考えれば、アップルの「iPod」などは、ただの亜流にすぎない。乾電池はもともと日本の発明だ。新幹線は、世界の陸上輸送に革命的衝撃を与えた。カーボンナノチューブもそうである。プラモデルもそうだ。インスタントラーメンもそうである。こちらも、考えてみれば、独創的なものが実に多いのに気づく。

▼いま日本に、世界をリードする普遍的価値を持っているものがあるだろうか。かつては半導体がその旗手だったのだが、いまや見る影もない。しかし、落胆することはない。その代表的なもののひとつにロボットがある。何も人間型ばかりではない。寸分の狂いもなく、製造過程の半導体を所定の位置に移動させる技術も、ロボットだ。要するに機械仕掛けである。このロボットという世界は、どうやら日本人のDNAに潜んでいる特異な才能であるらしい。

▼古くは、江戸時代に木製ロボットが花開いた。いわゆる「からくり人形」だ。茶運び人形は、主人のところから客人のところへ、お膳にお茶を乗せてカタカタと移動していく。客人がそれを取って飲み、空にして返すと、またカタカタといって主人のところに戻ってくる。三味線を弾く人形もあれば、数十メートル先まで矢を射る人形もあった。祭りの山車から繰り出す人形は、いまでもお目にかかることができる。文楽やこの木製ロボットという技術は、現代の「ASIMO」へと継承されている。

▼思えば、戦後の焼け跡から高度成長期入りする前後。私が親のガマ口から30円かすめて少年サンデーや少年マガジンを買いに走った頃、「鉄腕アトム」や「鉄人28号」が登場した。巨大化させるバイオテクノロジーという概念では「ビッグX」が、サイボーグという概念では「エイトマン」が、その派生として生まれていた。

▼考えてみれば、その設定は少年モノにしてはかなり暗い歴史的なバックグラウンドがある。鉄人28号などは、第2次大戦中、対米戦争の最終兵器としてつくられたという設定だったし、エイトマンも殉職した刑事の死体が前提になっていた。ビッグXは、ナチスドイツの最終兵器として、兵士を巨大化させるワクチンが前提になっていた。実は非常に暗い話だ。

▼その中で、なんといっても鉄腕アトムが世界的なヒットとなり、群を抜いた空前の金字塔を打ち立てた。このアトムを生み出したDNAこそ、江戸時代のロボットの記憶だったことは間違いない。そして、少年時代にアトムの洗礼を受けた世代が、いま二足歩行で、自分の意思によって行動するアンドロイド(人造人間)を開発している。市場はまだ100億前後と日本最大の自動車産業に比べて非常に小さいが、21世紀という100年単位でみると、20世紀の自動車産業に匹敵する可能性があると言われる。

▼アメリカがバイオなら、日本はロボットだ。最大手のファナックはもちろんのこと、日本の工作機械という業種は、欧米のそれが産業機械の延長なのに対し、明らかに二足歩行のアンドロイドを目指している。米国映画「ターミネーター」で使われたロボットも、安川電機製である。

▼日本が世界に冠たる素材産業国家だと外国人投資家が認識しているのも、このセクターあってのことだ。今後は、ロボットが一般家庭にも入り込んでいく、一段次元の違う世界が待っているだろう。どうやら日本人は、遊びの文化から「本物」を作り出す才能があるようだ。アニメも、もしかすると空前の、予期せぬ爆発力を秘めているかもしれない。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




日刊チャート新聞のコンテンツは増田足のパソコン用ソフト、モバイル用アプリから閲覧可能です。

15日間無料お試しはこちらから
https://secure.masudaasi.com/landing/pre.html?mode=cs
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。