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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第335回・NN倍率〜日米ダウ平均のグランドクロス

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【閑話休題】第335回・NN倍率〜日米ダウ平均のグランドクロス

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-11-14 15:26:00]

【閑話休題】第335回・NN倍率~日米ダウ平均のグランドクロス

▼たまには、相場に関係した話を書いてみよう。といっても、相場的には、まったく意味の無い話だ。NYダウ(ダウ工業株30種)と、日経平均の比較のことだ。両者はまったくベースが違うわけで、比較して、どっちが高いとか安いとかというのは、全然合理性はない。

▼ところが、国の勢いということで考えると、これらの代表的な指数が与えるイメージはけして馬鹿にならないインパクトがある。

▼ちなみに、11月14日の日経平均SQ値は17549。前夜のNYダウは。同じ17652。ここから仮に両方ともブルトレンドがまだ続くとした場合に、その上値のスピードを想定すると、日経平均がNYダウを数値上は上回る、いわゆる「グランドクロス」が発生する。

▼この日経平均とNYダウを、除して導かれる数値をNN倍率(日経平均÷NYダウ)というのだが、これは、戦後ずっと1倍以上だったのだ。80年代には10倍が普通だった。このNN倍率が、1倍を下回るようになったのは、2003年の日本の最後の銀行恐慌のときと、サブプライムショックの煽りを受けた2009年以降、現在に至るまでの期間だけである。

▼そのため、ときに米国の調子が悪くなって、日経平均がNYダウを上回ったりすると、市場では「グランドクロス」が発生した、とはやし立てた。1989年以降、なにをとっても負け続けの日本が、わずかにアメリカに勝ったと幻想を抱くことができるささやかな精神的抵抗の表れともいえる。要するに、「ざまあみろ」といったような、逆立ちしたコンプレックスとも言える。

▼ところが実は、日経平均といえば、歴史的に常にNYダウより数値上は恒常的に高かったのである。下回っている時期のほうが、きわめて短い期間に過ぎない。

▼もっともっとずっと昔に遡ってみよう。たとえば、戦前である。まだ日経平均というものはなかった。フィッシャー指数というものがあり、これが日本株の総合評価指数として使われていた時代があった。

▼このフィッシャー指数を振り返ってみると、1920年代、このフィッシャー指数はおおむね90台から、120台のレンジで往来相場を繰り返していた。1923年9月の関東大震災の後、このフィッシャー指数は、20年代としては最安値の91.6まで下落。そこから反発して、1927年の昭和金融恐慌直前には、144まで上昇して暴落した。

▼一方NYダウも、当時は現在の30種ではなかったが、同じ1920年代の推移を見ると、なんと100から120のレンジで往来相場を繰り返していたのだ。1924年の年末には130まで上昇している。これが、いわゆる第一次大戦後の好景気で最終的には1929年9月3日に、史上最高値381をヒットし、大恐慌に突入していった。

▼つまり、日本は昭和金融恐慌前に、アメリカは大恐慌前に、それぞれほぼ同じ水準120-130あたりで、数字上は拮抗していたということになる。

▼その後、戦争で連続性は破断されるが、戦後に東証再開をしたのが、1949年昭和24年5月16日。再開当日の日経平均は176.21円だった。同時期、NYダウは175である。これも拮抗していた。そこから日経平均の長期爆騰相場がスタートを切ることになる。

▼つまり、日米株価の代表的指数は、戦前・戦後とほぼ同じ水準からスタートをしているわけで、戦後のほとんどは、圧倒的に変化率の大きい日経平均が恒常的にNYダウを数値上は上回っていたことになる。株価の変化率が大きいということは、経済の変化率が大きいということと同義である。件(くだん)の1990年の暴落以降ですら、ずっと日経平均は数値上は、NYダウを下回ることはなかった。

▼日本経済はデフレに沈み続けた挙句、ついにときに米国経済が第二次湾岸戦争に突入したとき( 2003年)、日本は最後の銀行恐慌に陥って、とうとうNYダウを下回る憂き目にあったが、これもごくごく短期間で、すぐにNYダウを上回ることとなった。2008-2009年ごろまで、その状況は続く。

▼ところが、サブプライムショックで未曾有の恐慌懸念に陥ってからというもの、今度は恒常的に日経平均はNYダウを下回ることになってしまったのだ。それが今に続いている。

▼2009年以降は、ほぼ一貫してNN倍率は1倍を割り込み続けたが、アベノミクスがスタートしてから、1倍に限りなく接近する状態となっている。さて、このNN倍率、比較すること自体がナンセンスだが(ドル円にも大きく影響されるわけで)、それでも、ある種の象徴的な現象としてとらえることはできる。

▼金融や経済の実力ということで言うのであれば、指数の水準ではなく、なんといっても時価総額であることは間違いない。しかし、その時価総額も500兆円台を7年ぶりに回復している。(過去最高は1989年の590兆円)ある意味、この時価総額がバブル時代に次第に接近しているという状況下での、NN倍率のグランドクロスは、もしかしたら、それなりの意味があるかもしれない。

▼何より、市場に参加するものは、それがナンセンスだということがわかりきっているものの、心のどこかでは、「グランドクロス」に、曰く言いがたい快感を覚えるものだ。「してやったり」ということだ。とくに今は、日本が再び「日出づる国」になるかどうか、という瀬戸際だ。象徴的な現象というものは、思った以上に大事なのだ。

▼さて、日経平均が、NYダウを数値上、凌駕するのは、いつになるのだろうか。株価の命が変化率であるとしたら、それは今をおいてほかに無いと思うのだが。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄


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