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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第351回・蛇の道は蛇

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【閑話休題】第351回・蛇の道は蛇

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2015-03-06 15:24:00]

【閑話休題】第351回・蛇の道は蛇

▼今回は、完全に時事放談である。不穏な世界情勢についてだ。

▼ハクティビスト(政治的ハッカー)集団の「アノニマス」は1月9日、フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」が襲撃された事件を受け、イスラム過激派へ報復すると宣言した。イスラム過激派のホームページを閲覧しにくくするなどの攻撃を行うという。

▼アノニマスはこの日、「anonymous belgique」というYouTubeアカウントを使って「#Op Charlie Hebdo」というタイトルのフランス語の動画を投稿。仮面をつけたメンバーが「我々は警告する」として、「ネット上の活動を監視する。もはやお前たちにとって安全な場所などない」と述べ、殺害の報復として、テロリストに関係のある全てのソーシャルアカウントを、最後の1つまで閉鎖に追い込むと表明した。

▼また、動画の最後は、アノニマスの標語とともに終わった。

「我らはアノニマス。我らはレギオン(軍隊)。我々は決して忘れない。我々は決して許さない。我々を恐れるがいい。イスラム国、そしてアルカイダ。お前たちは我々の報復を受けることになるだろう」

▼また、アノニマスはテキストデータを保存し公開することができるウェブサービス「ペーストビン」にも、宣言文を投稿。「表現の自由を侵すものへ」と題したその宣言文には、次のように記されている。

「我々はいついかなる時も、表現の自由の敵とは闘う。アノニマスは、表現の自由が、民主的な国家においては基本的な権利であることを、すべての市民に思い起こさせなければならない。自由に意見を述べ、脅しや圧力が無いなかで表現・出版することは、誰にも奪うことができない権利である。
表現及び意見を述べる自由は、かけがえのないものであり、これを攻撃することは民主主義を攻撃することなのだ。正面からの大いなる攻撃を覚悟しておけ。これらの自由を守ることは、我々の基本的な方針なのだから」

▼この動画や宣言文は、英語にも翻訳されており、「Anonymous France」や「Anonymous Australia」などのアカウントが、YouTubeに英語版を投稿している。Anonymous Franceは、ターゲットリストも公開している。

▼アノニマスは、この報復プロジェクト「#OpCharlieHebdo」を行うため、Twitterの専用アカウント「@OpCharlieHebdo」も開設。11日にはこのアカウントを通じて、攻撃対象のリストとされていたイラクのイスラム教武装組織である「アンサール・アル・イスラム」のサイトをダウンさせたと発表。アメリカのインターネットメディア・Mashableによると、このアンサール・アル・イスラムのサイトは実際に長時間ダウンしていたとされる。

▼一方で、このアノニマスの宣言動画については、効果を疑問視する声も出ている。また、この宣言動画で使われた「#OpCharlieHebdo」という文字を使ったホームページ「www.opcharliehebdo.com」も出現。謎のカウントダウンが表示されているが、これに対しては「アノニマスが運営するホームページではない」との情報もネットでは飛び交い、情報が交錯している。

▼標的とされた一覧リストの中には、「若者をシリアでの戦闘に送り込んでいるリクルーター」のものとされるFacebookページなど、既に削除されたり、つながらなくなったりしているアカウントもある。

▼このアノニマス・Anonymousは過去にソニー・ピクチャーズエンタテインメントなどの民間企業や各国の報道機関、政府機関を狙ったハッキング行為にかかわったとされるハッカー集団だ。どこまでが本音で、どこまでがヒーロー気取りの名誉欲で、またどこまでが米国情報部(CIAやNSA)と「つるんで」の話なのか、もちろんわからない。先般、日経新聞では、世界中を騒がせているハッカー集団には、かなり政府系の筋が多いという暴露報道がなされていた。本当のところ、アノニマスも、つきつめていけば、米国情報部にたどりつかないとも限らない。しょせん、蛇の道は蛇。敵の敵は味方だ。

▼今回の声明では、「われわれはイスラム教徒であり、キリスト教徒であり、ユダヤ教徒でもある」と述べ、「自らをイスラム国(ISIS)と呼ぶテロリストはイスラム教徒ではない」と強調している。いずれにしろ、ISIS撲滅に寄与するなら、何でも良い。暴れてもらおう。

▼しかし、話はこれで終わらない。考えてみれば、もっと奇怪で複雑、ましてやおぞましい真実がこうした裏にはあるかもしれない。

▼「閑話休題」では、昨年8月20日に過去のアーカイブを再掲載した。「歴史の闇」だ。911事件が、言われているようなアルカイダによる一方的なテロ攻撃だったかどうか、きわめて疑問だという内容だが、同じことが今回のISISに関しても言えるとしたら、どうだろうか。

▼あの怪物を作り出したのが、米CIAと英MI6、そしてイスラエルのモサドの協力によるものだったという「とんでも説」がある。こういう話はどこまでが本当か実に疑わしいことは言うまでもない。しかし、である。リビアのイスラム過激派にしろ、アルカイダにしろ、また今回のISIS、ナイジェリアのボコ・ハラムにしろ、一体長年にわたって、なぜかれらは潤沢な武器と弾薬を持ち続けていられるのか、そのほうが不思議だ。だれかが売っているか、供与しているとしか考えられまい。よく言われる武器商人だろうし、米国の軍産共同体かもしれない。

▼そうなのだ、一体、それは誰だという話なのだ。問題の解決で手っ取り早くできることは、現地に武力介入するよりもなにより、まずその武器・弾薬の供給路を絶つということに決まっているではないか。なぜ、それがまったく国際会議で問題にもされず、話題にすらならないのだ。おかしくないか。

▼こうした歴史の闇を推論していくときには、なんでも推理小説や殺人事件捜査と同じで、定石は「それで誰が一番得をしているのか」という命題に尽きる。ISISに始まり、現在イスラム教を奉じる各国で、イスラム過激派vs政府軍、イスラム過激派vsイスラム過激派と入り乱れた内戦状態があたかも常態化してしまっており、およそ国家の体をなさなくなりつつある。

▼この混乱が一番都合が良く、心地よく思っているのは、やはりイスラエルという答えがどうしても出てくる。周囲のイスラム国家が自滅状態になることで、イスラエルの安泰が保証されるとしたらどうだろう。実際、今だれも、イスラエル・パレスチナ問題を取り上げることがほとんどない。一体このISISをはじめとするイスラム各国で起こっている、内戦と混乱のドミノ現象の裏で糸を引いているのは、誰なのか。考えるだけで、背筋が寒くなる。

▼昨年、米ジャーナリストがISISによって、斬首刑にされた映像が世界に向けて公開されたとき、オバマ大統領は保養地にいた。これに対して避難する声明を発表し、その足で数日にわたって、ゴルフ三昧であった。どうもよく感覚がわからない。この人物のなんでも「きれいごと」で済ませる人格的問題なのか。それとも、この身の毛もよだつような中東の混乱こそが、見えない誰かが意図的に生み出したものなのか。

▼直近では、イスラエルのネタニヤフ首相が、オバマ大統領を頭越しに、連邦議会(とくに共和党系議員団)と直接交渉の上、議会で演説をするというとんでもない事態が起こりました。当然、大統領府は不快感を露骨に示し、一方ネタニヤフ首相は、あろうことか米国政府のイランとの核交渉を直接批判。米国政府とイスラエルの亀裂がかなり如実になっている。恐らく、イスラエルは、強硬派の共和党に接近を図っていると思われ、次期大統領の呼び声高いヒラリー民主党議員に揺さぶりをかけているということなのだろう。

▼このほど、イラク政府軍は、イスラム国に対して地上戦で大攻勢に入っているようだが、イラン空軍がこれに支援参戦している。米軍は、この作戦自体には関与していない。イスラム国の支配するイラク北部の要衝ティクリートを、イラク政府軍が奪回するような事態になった場合、米国はまったく面目丸つぶれ。中東における発言権は大きく後退し、イラン優勢になってくる。

▼サウジやエジプト、もちろん彼らと敵対するイスラエルにとってすら、このイランの発言権増大は、由々しい事態だ。引いては、米国の対イラン核交渉にも、影響を与えかねない。米国は、その使命を果たしていないのだから、当然である。

▼この問題は、最終的にはシリアをどうするのか、ということに集約されることになる。そもそもイスラム国の膨張は、シリア内戦がきっかけだからだ。そして、現状、シリアのアサド政権はイスラム国をあからさまには敵対視していない。イラクからイスラム国が叩きだされたとして、それはシリアの本拠地に逃げ込むだけだ。殲滅は出来ない。こうしてみると、一昨年、オバマ政権が、シリアのアサド政権への武力介入を、土壇場で投げ出したことが、すべての事態悪化の元凶であったと、ますます明確になってしまうだろう。

▼折りしも、ロシアでは反プーチンにして、ウクライナへの武力介入反対を唱導していた野党指導者が、驚くべきことにクレムリンの目と鼻の先で、暗殺されるという事件が起きた。誰しも思う、プーチン派による犯行というのは、当たり前すぎで、逆にわたしなどは疑ってしまう。本当のところわからない。プーチン政権にとって、なんのメリットも無いからだ。

▼これによって、ロシアの国論が分裂するという効果を、誰が享受するのかといえば、欧米であることは明らかだろう。もちろん、「ままごと遊び」しかできないオバマ政権の仕業ではない。これも含めて、大掛かりに、オバマ政権の力の及ばないところで、実はアメリカという暴力的な野生が目覚め始めている可能性はあるだろう。

▼先の米国のシリア内戦への武力介入回避のときには、ロシアが間に入ったことで、米国は矛を収めている。一方で、ロシアはまんまとクリミアを奪取することに成功している。これらすべてに対する巻き返しの動きが始まっているとすると、昨年来の原油暴落を皮切りに、アメリカのいわゆる産軍共同体は、着々とそのプロジェクトを進めているのかもしれない。ロシア封じ込めから、分裂へ。イランの反革命運動化。イスラエルの安泰を確保するための、中東各国の混乱と弱体化。軍事、金融、情報通信、そして資源の支配権を取り戻し、第二のパックスアメリカーナを実現するシナリオは、素人目にもわかる話だ。

▼荒唐無稽なことを考えるつもりはないが、報道されているような「個々の事件」は、なんだか通り一編の単純な話では無い様な気がしてならない。蛇より怖いものが、潜んでいるかもしれない。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄



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