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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第361回・怒れる山

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【閑話休題】第361回・怒れる山

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2015-05-15 15:25:00]

【閑話休題】第361回・怒れる山

▼どうも山は怒っているようだ。このところ、箱根山が不穏だ。水蒸気爆発はいつ起きてもおかしくないと言う警戒論がある一方で、2013年のケースに比べると、山体膨張は、その4分の1でしかなく、当時も噴火には至たらなかったので、今回も噴火は無い、という見方がある。

▼どちらも大学の「専門家」の意見であるから、まったくわからないということだ。 7万年前に噴火した時には、火砕流が現在の横浜市の辺りまで到達したことが確認されていおり、万一噴火すれば、新幹線のような速さの火砕流が、湘南地区を覆う可能性もある。

▼注意するに越したことはない。流言飛語はもってのほかだが、昨年の御岳の噴火を思いだす人も多いだろう。蔵王も不穏だと言われている。山体膨張である。桜島では過去最高ピッチで噴火が頻発している。

▼そうなると、誰しも思いが及ぶのは、富士山噴火の可能性である。これまた専門家によれば、箱根と富士山の火山脈は別個であるから、影響は無いという。マグマだまりは、箱根が地下10kmでマグマの成分は安山岩。富士山のほうは、地価20kmで成分は玄武岩だから違うというのだ。そうした見方がある一方で、素人目にも、箱根と富士山は25kmという至近距離であるから、不安は拭えない。

▼もともと数十万年前に、島が本州にぶつかる形で伊豆半島ができ、2つの山は同時期に形成された。関連性は否定できない。

▼噴火ばかりが表にでているものの、誰しもこうした最近の地殻変動が、2011年の東日本大震災(3.11)から始まっているということは、容易に想像できる。世界ではマグニチュード9クラスの地震が起きた後、ほとんどのケースで5年の間に、震源近くでいくつもの火山が噴火している。日本では3.11の後、噴火が起きたのは御嶽山の1度だけだが、それだけに不安である。

▼御嶽山の噴火では、東京ドームの容積の4分の1の噴出物だったが、箱根山や富士山が“大噴火”すると、その噴出物は東京ドーム約250杯分もの量に達するという(宝永の大噴火では、富士山から560杯分が噴出した)。 しかも富士山の火口中心から東京都庁まで、直線距離にして95kmにすぎない。

▼しかし、ある専門家はまた、箱根山や富士山の噴火よりも可能性が高いのは、東京直下型の大地震だという。歴史的にみても、箱根山が噴火することは考えにくいという。なかなか噴火しない山なのだ。富士山どころではない、なにしろ最後の噴火が7万年前なのだ。むしろ、今回の箱根山の動きは、東京直下型地震の“前触れ”ではないか、という見方だ。

▼一見、東日本大震災でエネルギーが“解放された”と言われているが、この見方からすると、むしろエネルギー解放の流れが、次第に関東地方に“移ってきている”と考えるべきだということになる。

▼地震は予知があるていど可能だと言われるわりには、見事に当たって住民非難などに成功したという例は、聞いたことがない。

▼こうなると、噴火が先か、地震が先かという話になってきているようだ。江戸時代中期の1707年(宝永4年)に起きた富士山の「宝永大噴火」は、日本最大級の地震であるマグニチュード8.6~8.7と推定される宝永地震の49日後に始まった。

▼現在、富士山は巨大地震の強い力で内部にひびが入ると、そこから爆発的な噴火を起こしかねない状態だとする分析結果を、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などのチームが発表している。

▼測定されたデータの解析によって判明したのは、3.11でもっともダメージを受けたのは東北地方の地殻ではなく、富士山の地下400kmをはじめとする火山帯であるという事実だった。2011年に起きた地震の影響によって、富士山のマグマ溜りにかかった圧力は、1707年に起こった最後の噴火(宝永大噴火)時より高かったことがわかり、近く再び噴火するのではないかと懸念されている。

▼専門家の話によると、火山の下にあるマグマが上に動き出すと、まず最初に、人間が
感じることができない低周波地震が起き、その後に有感地震が起き始めて、噴火となる。最初の低周波地震は、噴火の1ヶ月前に起きるとされ、これを「1ヶ月ルール」という。

▼水蒸気ではなく、富士山が噴火し始めると、窓がガタガタ揺れる、いわゆる空振(くうしん)と呼ばれる現象が発生するという。

▼仮に、宝永噴火と同じ規模の噴火が起きた場合、高度2万mまで真っ直ぐ立ち昇った噴煙は偏西風に乗ってわずか2時間で首都東京に到達するという。100キロメートル圏内であれば火山灰の被害を受ける。当時は、江戸で5cmの灰が積もったという。

▼そうした場合、首都圏に居住する人間があらかじめ想定していなければならない被害状況というものを、知っておこう。

▼東京湾周辺にある火力発電所や、ガスタービン式の火力発電は、外からの空気を取り込んで燃料を燃やして発電する。取り込んだ空気に火山灰が混ざっているとタービン内に
灰が入り込んで故障してしまうことが容易に想像される。

▼また、水分を含んだ火山灰は電気を通してしまうので、送電線に降灰すれば高圧線が漏電して停電を引き起こす。また、火山灰の重みで送電線が切れることもある。このように、最初に発生しそうな被害は、大規模停電ということになる。

▼水道も同じだ。水源地に降り注ぐ火山灰の影響で給水停止になる可能性がある。内閣府は、200万人前後が水道を利用できない事態を想定している。しかも、火山灰の除去作業には大量の水が必要で、首都圏で水不足が続くことになる。

▼そうなると、物資輸送が問題になってくるが、このライフラインも途絶される。大量の降灰で成田・羽田は運行停止となる。ジャンボ機の燃焼温度は非常に高く、火山灰がエンジンに吸い込まれて融解し、排出口を塞ぐのだ。

▼鉄道も同じだ。電車の車輪とレールの間に灰が5mm程度以上挟まると電流が流れず電車が動かなくなる。たった5mmである。

▼これは灰が車輪とレールの絶縁体となり、これに由来する信号システム・踏切などが動作しないためだ。また屋外設置機器に電子機器を大量に使用しているから、降灰による故障で運行制御システムが麻痺することにもなる。従い、航空機や自動車などより、ずっと微量の降灰があった段階で鉄道は運行停止となる。

▼もちろん自動車通行も不能になる。火山灰は雪よりも重く、水に濡れて固まったり、スリップの原因になるので、道路に数cm積もるだけで車が走れなくなってしまう。

▼内燃機関にも影響がある。舞いあがった火山灰は、自動車の吸気口から吸い込まれ、
エンジンのフィルターを詰まらせる。この結果、道路の上には走行不能となった多数の自動車が立ち往生する可能性が高い。

▼通信手段もそうだ。大気を舞う火山灰の影響で携帯電話もつながりにくくなる。パソコンなどの電子機器も、こうした火山灰には弱い。

▼さらに、火山灰が大量に側溝に流れ込むと、下水道の機能不全を引き起こす可能性があるため、下水処理ができず、こんどは衛生状態に影響がでてくる。

▼火山灰には硫黄が含まれているので、水田や畑に1センチでも降灰したら耕作不可能になる。日光遮断により光合成ができないことによる成長阻害もある。このため、流通量減少によって、価格の高騰が引き起こされる。

▼なにより、火山灰が2センチメートル積もるようだと、ほとんどの人に健康障害が出るとされているのだ。

▼こうした富士山噴火の場合の経済損失は、政府の試算によると、2兆5000億円に達する見通しだ。地震は一発で破壊が取りあえず終わるが、噴火の場合は、場合によっては1年以上経っても続く。地震より厄介なのだ。

▼いずれにしろ、首都圏に住む人間としては、地震が先か、噴火が先かはともかく、どちらもあるという前提で、日ごろから地道に備えていたほうが良さそうだ。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄




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