忍者ブログ

増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第41回・騎馬戦と肩車

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

【閑話休題】第41回・騎馬戦と肩車

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-04-30 17:15:00]

【閑話休題】第41回・騎馬戦と肩車


▼およそ人類の歴史上、人口が増えない国が栄えたためしはない、と言われる。アメリカは、かの1929年の大恐慌の前、中国人を中心にアジア系移民を遮断した経緯がある。大恐慌が勃発した理由というものは、未だに諸説紛々で「藪(やぶ)の中」なのだが、重大な理由の一つとして、この「移民を制限した」という事実は見逃せない。

▼1921年、1924年とアメリカは移民を厳しく制限したが、これで国内では「赤ん坊が不作」になった。決定的だったのは、1929年の移民割当法で、アジア系移民を極端に制限したことだった。日系移民などは、割当人数をゼロにされてしまった。この結果、大恐慌の勃発とともに新たな消費が生まれなくなり、アメリカ経済が奈落の底に落ち込んでいく大きな加速要因となっていったのだ。せっかく、T型フォードが国民車として全米に普及していったのだが、それが一巡した後の、次の消費先を用意していなかったことになる。そこに大恐慌がやってきて、経済は瓦解してしまった。

▼以来、アメリカはこのときの失敗に懲りて、どのような経済状況であろうと決して移民を極端に制限しない、という国是ができあがったようだ。かのベトナム戦争のときのような経済苦境時代でさえ、移民は受け入れた。近くは、サブプライム・ショックのあとだ。未曾有の金融恐慌に見舞われ、年間40万人と移民受け入れに制限はしたものの、止めることはしなかった。

▼アメリカ政府の試算では、19歳から65歳の人が増え続けるためには、毎年100万人の人口増加が必要だという。2050年まで、政府は毎年100~110万人規模の移民を想定しており、これで過不足分を相殺できると考えているようだ。これが実現すれば、2050年には白人の比率が半分に低下するが、総人口は4億人になるという。8秒に一人生まれ、11秒に一人死に、30秒に一人移民がある。つまり、13秒に一人の割合で人口が増加するのだ。

▼翻って日本はどうだろうか。産むことも、産ませることもしない。移民を入れることもしない。経済にもっとも影響を与える生産年齢人口( 15~64歳)は、1995年にピークアウト。その後緩やかに低下してきたが、2010年から加速化し始めている。このペースでいくと、2060年には2010年対比で46%減ってしまうという。

▼総人口では、2048年に1億人を割り込み、2060年には8674万人になってしまう計算だ。出生率がこのままの低水準で推移したら、8000万人をも割り込んでしまうことになる。2010年の統計では「騎馬戦型」と言われるように、2.8人で一人の高齢者を扶養していたが、2060年には1.1~1.3人で、一人を扶養することになるらしい。騎馬戦どころではない。これでは「肩車」だ。肩車の人口構造で社会が存立し、持続した例を少なくとも私は知らない。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



日刊チャート新聞のコンテンツは増田足のパソコン用ソフト、モバイル用アプリから閲覧可能です。

15日間無料お試しはこちらから
https://secure.masudaasi.com/landing/pre.html?mode=cs
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。