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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第504回・今年の「びっくり予想」

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【閑話休題】第504回・今年の「びっくり予想」

【閑話休題】

[記事配信時刻:2018-01-12 16:38:00]

【閑話休題】第504回・今年の「びっくり予想」


▼年明けというのは、有名人士がこぞって今年一年の「びっくりニュース」というものを発信する。もともとは、バイロン・ウィンがバロンズ紙などに毎年発信した「今年のびっくり予想」が草分けだったろう。

▼一般の投資家が定義する”ビックリ=サプライズ”な出来事は30%の確率で起こること、ウィンの場合は50%以上と定義しているが果たしてどうだろうか。

▼今年のバイロン・ウィンの発信したものは、だいたい以下の項目である。

1.共産主義の北朝鮮については、中国は予測不可能な金正恩が核の保有をすることを許容しない。北朝鮮が核開発プログラムの継続をし続けるなら、原油と輸送(食料等)を停止。

2.ポピュリズム、トライバリズム(部族主義)、アナーキー(無政府・無秩序)は世界中に広がる。イギリスではジェレミー・コービンが次期首相になる。スペイン政府の圧力にもかかわらず、カタロニアは依然として荒れる。

3.ドルは最終的には復活(上昇)。ドル建て資産に対しての投資家の関心を引きつけ、ドル円は 120 円、ユーロは下落して 1.1。

4.米国経済は 2017 年よりも良くなる。しかし、金利上昇により S&P 500 は 10% の調整し、 2300 ポイント に向けて下落。とはいえ、経済は 4% に向かう成長のため、2018 年末には 3,000 ポイントで終わる。

5.原油価格は 80 ドルを超えて上昇。世界経済の成長と発展途上国の予想外の需要高が要因。

6.インフレは懸念材料となる。世界の GDP が成長し続けることは、コモディティ価格に圧力をかける。そして、米国の平均時給の増加率は 4% に近づいていき、消費者物価指数は 3% を超えて行く。

7.より高いインフレにより金利は上昇する。FRB は 4 回の利上げを行い、10年債利回りは 4% に向けて上昇。バランスシートの縮小については金融市場へのインパクトを懸念し、緩やかに行われる。ただ、イールド・スプレッド(利回りの差)が広がることで、株式市場への懸念要因となる。

8.NAFTA(北米自由貿易協定)とイランは、最終的には合意する。トランプはまた、中国の影響力が増していることから、TPP に署名しなかったことを間違いだと思うようになる。そして、アジアに二国間取引を持ちかける。

9.11 月の中間選挙では共和党はコントロールを失う。有権者は、トランプが政策を実行できないことや、また、終わりのないネガティブなツィートに対しても失望を感じており、彼に対する国民投票になる。

10.中国の習近平は 10 月の19 回党大会で、権限の強化をより進めていく。そして、一時的に失業率の上昇や経済成長の低下を伴うとしても、中国の債務問題に対して注力し、借り入れに関して制限を与える。一方で、中国の持続可能性のある成長を確実なものにする、と宣言するで。

▼これら以外に、ウィンは、「大穴予想」をして、さらに6項目の予想をしている。

1.投資家たちはヨーロッパや極東の新興マーケットの成長がアメリカのそれよりも加速することを認識する。

2.ミューラー調査は、2016 年の大統領選挙におけるトランプファミリーのロシア疑惑について関与を証明できない。

3.AI は勢いを増す。サービス業は自動化される。とりわけ影響がある業界は、法律、金融。そしてファーストフードやアウトレット、ヘルスケア。にもかかわらず失業率は 4% に低下するので、経済学者たちは疑問を持ち始める。

4.サイバーテロはより一般的になり、消費者の消費マインドにまで影響を及ぼす。大手金融機関は 3 日間取引を停止したり、小売業者は個人情報をハッカーから入手したと報じたりといったことが起こる。

5.ヨーロッパとアメリカは、インターネットによる創造的破壊について懸念を抱く。小売業者や旧来のメディア業界からの圧力の結果、アマゾン・フェイスブック・グーグルの反競争的な行為についての調査を始める。多くの人々はこれらの会社(アマゾン・フェイスブック・グーグル)にあまりにも力がありすぎると考え始める。

6.ビットコインのリスクはあまりに大きいため、規制当局は取引を制限する。リスクとは、安全性と健全性の尺度がない、間違った取引や誤った取引の保証がない、サイバーリスクが高い、預金保険がない、など。

▼どうだったろうか。非常に面白い分析をしているわけだが、昨年2017年の”ビックリ10大予想”の結果を振り返ると、実際には1勝6敗3分け。けして勝率は高くないことがわかる。それ以前の予想に関しては、平均ですると、だいたい勝率半々といったところだ。

▼この2018年版の十大びっくり予想に関して、わたしが個人的に思うことを付加すれば次のようになる。

(標的は中国)
基本的にアメリカは、中国を信じていない。南沙諸島占有に関して、中国は従来「軍事目的ではない」と言い続けてきたが、昨年末には「軍事施設の増強」と公言し始めたからである。従い、アメリカの21世紀の最大の課題の一つは、中国の膨張を阻止、そのためには、国内分裂と体制変更を工作するだろう。

(北朝鮮問題)
中国が、どこまでアメリカの北朝鮮への武力行使の現実性を認識するかにかかっているが、本気だと思えば、ウィンの予想通り、北朝鮮への石油全面禁止をするはずだ。が、本気だと思わなければ、なあなあの関係が続き、韓国など反北朝鮮連合の分断・切り崩しを行っていくことになる。
したがって、アメリカが武力行使に踏み切るかが最終的なカギを握っているわけだが、わたしは武力行使することはすでに決まっていると思う。それは、トランプという人物が、政治家ではなく、ビジネスマンだからである。政治家は前言を覆すが、ビジネスマンは計画を遂行する。北朝鮮が核の全面廃棄をしない限り、アメリカは交渉もしないし、武力行使のタイミングを計るだけである。

(もう一つの国連)
イスラム国(すでに崩壊)、カタルーニャに見られるような極度の民族主義的傾向は確かにさらに増大する。ロシアや中国も同じである。英国のEU離脱や、それに追随しかねないオランダ、イタリア、ポーランドなど、現状への不満は爆発する。
この流れの中で、アメリカが、戦後秩序の崩壊に伴って、「もう一つの国連」をつくりだそうとする。現在の常任理事国(五大国)体制では、ロシアや中国その他の反米国家を抑制できないと認識しているからである。

(中東問題)
トランプ政権は、極端にイスラエルに肩入れしており(エルサレム首都承認)、一方でアラブの盟主であるサウジ・アラビアの抱き込みに成功した。このサウジとは、オバマ政権以降離反傾向だったが、この修復を行ったわけだ。それは、より西欧的な民主国家に変貌させ、アラブ社会全体をグローバル化させていくための要にサウジがなっていく。サウジの王権による事実上のクーデタを後押ししたことでもわかる。サウジの財政破綻を救済し、新体制を擁護するということが、サウジとのバータである。
これで、アメリカはユダヤ・アラブ両方の要と結託することに成功したわけで、当然標的は、両者の共通の敵であるイランということだ。
そのイラン国内で、すでに反政府運動を扇動しており、この流れはロシア・イランに接近して反米化・反EU化しつつあるトルコの体制変革を成功させることで、ロシアの中東南下阻止、中国の一帯一路遮断を目的としている。
このイラン・トルコの現体制破壊は当面の大きなイベントになる。

(相場)
ウィンは、「最終的にドル高」と言っている。株価もS&P500は結局3000に上昇するとしている。原油は80ドルまで上昇。背景は新興経済国の需要増大とインフレだとしている。これは、きわめて素直なシナリオで、しかもそこへ行くまでに、いったん株価は下がると言っている。
このため連銀は年4回の利上げをするという予想で、こうしたものは、おおむねわたしも同感である。これは昨年後半から述べている通り。しかし、昨年などは、ほぼ市場では物価上昇も、景気も拡大できず(減税法案その他が議会通過せず)、利上げは3回がせいぜいだというのが圧倒的に多い予想だった。
ウィンは言及を避けているが、ようはこれらの根本的な要因は、なによりアメリカ経済が不必要なほどの拡大するためにほかならない。すでに財政投資が必要無い状態にもかかわらず、減税法案を成立させ、ここからインフラ投資計画や、金融規制緩和を掲げているわけであるから、アクセル全開で米国経済を押し上げることは必至である。
ウィンもいわゆるリベラルな「きれいごと大好き」人士の一人であるから、ことさらトランプ大統領を否定したいのだろうが、昨年誰も予想しなかった減税法案を議会通過させたわけであるから、このトランプという人物の評価そのものが、完全に間違っていたことは明らかだ。

(中間選挙)
もし、インフラ投資計画、金融規制緩和が、(当初の規模より縮小したとしても)プラス・アルファの経済効果を持つことは間違いないので、米国における賃金上昇とあいまって、所得増大・消費増大→金利上昇→景気過熱化→バブル化の段階を踏むのが一番自然だ。
秋の中間選挙までに、この傾向が顕著になってくるのであれば、ウィンが予想するようなトランプ弾劾などに発展することはありえない。結局経済がすべてである。アメリカ経済の復活が完成することで、中間選挙は共和党勝利で終わる可能性が高くなる。つまり、世論の共和党惨敗説は、トランプ大統領誕生と同じように、番狂わせの結果になると思う。
結局それが、ドル高=人民元安のトリガーとなり、中国の対米貿易輸出は極端に増大するため、米国の対中国経済制裁も増大する。

(巡り巡って、再び中国問題)
中国は人民元高に誘導して米国の貿易摩擦問題による経済制裁を回避しようとする。しかし、実態経済と市場の乖離が大きすぎ、機能不全に陥る。市場経済は混乱し、インフレと景気後退が同時に長期にわたって進行することで、典型的なスタグフレーションのシナリオに突入する。
結果、今年かどうかわからないが、なんらかのきっかけで国内での反政府運動が頻発するようになり、国家分裂か(香港・台湾、その他辺境地域の分離独立)、あるいは体制転換を求める運動が勃発することになる。

(ビットコインと世界のニューパラダイム)
現状の仮想通貨が取引制限によって、ブームが沈静化する。
一方、ほんとうの仮想通貨は、各国中銀が音頭を取って試験的に始まるものが、ベースになっていく。現在の安全性、健全性の尺度のないなどの弱点を、中銀主導の仮想通貨が修正して完成版が世に出てくる。
現在のビットコイン狂騒曲は、そこに至るまでに、どういった問題が実際におこるのか、「泳がせて、欠陥を特定する」ためのダミーである。
中銀主導の仮想通貨体制は、将来、現在の通貨市場にとってかわることになるはずだが、その試験的な導入として、先述の「もう一つの国連創設」がたたき台になる。
この「もう一つの国連」は、反ロシア・反中国・反EU(反ドイツ)・反イランという点で、日本、インド、英国、オーストラリア、ベトナム、ブラジル、スペイン、イタリア、サウジ、ポーランド、オランダ、オーストリア、チェコ、バルト三国、北欧三国などを抱き込む格好が進行する。
単に政治的なニュー・パラダイム創造にとどまらず、同時にTPPのような自由貿易圏という裏付けも進行する。当然、同時にそれは、軍事同盟にほかならない。
言わば、地政学的には、ユーラシア大陸のハートランド(内陸部)対リムランド(周辺地域)の政治・経済対立構造になる。途中、トルコをハートランド連合から脱落させ、ロシアを篭絡し、最後に中国一国を封じ込める戦略にほかならない。以外にも、仮想通貨がこの重要なキーになる。

▼以上、バイロン・ウィンの予想に、いろいろと難癖をつけてみた。さすがに、経済や相場に関しては、かなり的を得ていると思うが、やはりリベラル派というフィルターがかかっているのだろうか、ウィンの予想はトランプという人間を甘く見ていすぎると思う。世論(と伝えられている)トランプはろくでなしという論調は、結局大きな間違いで、独立以来、もっとも偉大な実績を残した大統領になる可能性はあるだろう。なぜなら、株式市場がそう言っているからである。さもなければ、この期に及んで、史上最高値などとるわけがない。

以上




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