【閑話休題】
[記事配信時刻:2019-03-15 15:58:00]
【閑話休題】第564回・本物のユダヤ人と、偽物のユダヤ人
▼これは歴史の、タブーとは言わないが(事実なので)、ただ表立ってまともに研究が進んでいない部分である。ユダヤ人には二種類あるという説だ。
▼ことの発端は、(歴史をややこしくさせたのは)聖地エルサレムを追われた古代ユダヤ人ではない。あのときは、ローマ帝国によって滅ぼされたわけだが、ここでややこしくなったのではない。
▼ずっと時代は下って、7-10世紀の話である。ハザール王国という正体不明の国家が、現在のウクライナ東部から黒海沿岸、そして東はカスピ海沿岸に至るまでの広大な地域に登場し、これが威勢を張っていた時期がある。ここでいきなり話がややこしくなったのである。
▼そもそもユダヤ人という定義が実は非常に難しい。母系で遺伝子を継承してきた人がユダヤ人として認められるという説。もう一つは、人種・民族は関係なく、ユダヤ教徒であるならユダヤ人とみなす説。ほかにもあるが、話を簡単にするとこの二つの種別が大きい。たとえば、現在のイスラエルに居住する人達の間でも、この種別はかなりはっきりしている。
▼われわれには、とても不思議な点は、(日本人においては血統主義という伝統がいろいろと強いためなのか)ユダヤ教であることがとても重要なのである。たとえば、母系の遺伝子を衝いていなくても、ユダヤ教徒であればユダヤ人なのである。この傾向は古来非常に強かったので、思った以上にユダヤ教徒であるということが重要なようだ。
▼そのためイスラエルでは、ユダヤ教徒ではないユダヤ人を、「イスラエル人」として区別したりもするそうである。面倒な国だ。
▼ましてや、母系の遺伝子を組むことなく、またユダヤ教徒ではない人たちのうち、父系にユダヤの遺伝子を継いでいるものはどうなるのかというと、これも結局ユダヤ人とみなすことが多いので、なんとも面妖な人たちだ。
▼こうしてみると、ユダヤ人というのは一つの単一民族であるとはなかなか言い難いものがある。実際、世界の歴史を大混乱させてきた、いわゆる国際金融資本の人たちというのは、このうちかなりの部分(大部分とざっくり言うしかないのだが)、ユダヤ教徒でも、母系のユダヤを継いでいないものだと言われているのだ。今日はこの話だ。つまり、口の悪い人に言わせれば「偽(にせ)ユダヤ人」である。
▼この「偽(にせ)ユダヤ人」がどうやって始まり、世界を牛耳るようになってしまったのか、ということだが、その発端が、先述のハザール王国だというのである。
▼ハザールは実際、何人なのかよくわからないのである。遊牧民族と言われているが、これも含まれているというだけで、一体何者なのかよくわからないのだ。トルコ系であろう、と言うのだが、これも仮説の域を出ない。
▼7世紀ごろに、突如として台頭してきて、ブルガリア一体を取り込み、ボルガ河・ドナウ河流域までを支配。南では、イスラムと戦い、西ではクリミア半島を巡って、東ローマと戦った。ただ比較的に東ローマとは友好関係を保つことが多かったようだ。姻戚関係も結んでいる。これは、両者の共通の敵が、イスラム・アラム人だったためのようだ。
▼さて、問題はその後である。強大となったハザール王国はなぜか、ユダヤ教を受容し始める。東ローマ(ビザンチン帝国)や、イスラム世界から迫害をうけて逃れてきたユダヤ教徒が、ハザールに集まったとされている。
▼結果、王が7世紀から9世紀の間に、どうもユダヤ教徒になってしまったらしいのだ。その後、ウクライナに誕生したキエフ大公国など外的の脅威にさらされて、ハザールは事実上崩壊。
▼もともと多神教・アニミズムの国だったようだが、遊牧民の特徴として他宗教には寛容で、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教徒も需要した。が結果9世紀には支配者層はのきなみユダヤ教徒に回収しており、一部の一般住民もこれに続いた。理由は、いろいろ説があるが、ほとんど推測の域を出ず、ここに歴史上たいへん不思議なことに、ユダヤ人がほとんどいないユダヤ教国家が成立したのである。そして、これが崩壊したあと、多くはロシア、ウクライナ、そしてドイツへと流れた。
▼たとえば、中世西ヨーロッパにおけるユダヤ人口は、数万人に過ぎなかった。この人たちは、もともとの「本当のユダヤ人」である。古代ユダヤ国家がローマ帝国に滅ぼされた後、北アフリカを横断して、イベリア半島に逃れ、スペインに大量居住した真性ユダヤ人である。これが、スペイン王国のユダヤ人迫害が苛烈を極めてたため、そこを追われ、英国やフランス、イギリスへ逃れた経緯がある。この真性ユダヤ人が、中世には数万人いた、と考えられているのである。
▼ところが、17世紀東欧のユダヤ人口が、数十万人いたことが確かであり、これはスペインなど西欧から流入してきたとは、到底説明ができない。こうした傍証から、どうもドイツを中心に東欧各地に存在する「ユダヤ人」というのは、この滅亡したハザール国の「偽ユダヤ人」ではないかといわれているわけだ。この人たちを称して、現在「アシュケナジム」と呼んでいる。一方、スペイン経由西欧に流れた真性ユダヤ人を「スファラディ」と呼んでいるようだ。
▼実は遺伝子的なことに言及すれば、ことはそう簡単ではなく、以降、数百年の経過が、ますます混交したりしていることから、これといった決め手を欠いているようだ。いずれにしろ、ハザール国には本物のユダヤ人がいなかったとはいえ、ユダヤ教徒であったということから、その後の大陸流浪のうちに本物のユダヤ人と混交したことは十分考えられそうだ。
▼また、ドイツ発祥のロスチャイルドなど国際金融資本家のユダヤ閨閥というものは、ほぼこのハザール系であるということから、言葉は悪いが「偽ユダヤ人」ということになる。それは都合が悪いので、彼らは本来ユダヤ人に伝統的な母系の遺伝子を継ぐもの以外にも、ユダヤ人でなくともユダヤ教徒ならユダヤ人であるという理屈を生み出したのかもしれない。
▼やや乱暴だが、そんな解釈も素人的にはできそうだ。こうなると、非常に話の辻褄があってくる。なぜかというと、ロスチャイルドを始めこの200年にわたって、世界の歴史を大混乱に陥らせた人たちというのは、「偽ユダヤ人」であるから、ユダヤ迫害をしていたナチスに資金提供してミュンヘン一機を支援したり、政権獲得に多大な貢献をすることに、なんの躊躇もなかったわけだ。「同胞」である同じ(真性)ユダヤ人が虐殺されようと、平気な顔をしていられたのである。つまり、「違う」のである。
▼また、ロシアと言う国が、ことさらユダヤ人に対する敵意を持つというのも、実は長い歴史のなせるわざなのであろう。実際ハザールが強勢を張っていた時代には、とんでもない数のロシア人が、殺され、奴隷にされ、他国に売られと言う長い受難の時代があったのである。
▼その後ハザールは滅亡したが、大量にロシア・ウクライナに流入して、現地スラブ人をその資金力を背景にした威勢では、圧倒していた事実がある。だから、ドストエフスキーの小説を読んでも、しつこいほどユダヤ人に対する憎悪を書いている。彼は、ロシアを滅ぼすのは、ユダヤ人である、とまで言い切っていたくらいだ。こう考えると、スターリンの大粛清で、ユダヤ人がナチス顔前の大量虐殺をしたり、プーチン大統領がユダヤ人を徹底的に排除したりしているのも、うなずけるものがある。
▼さてさてこの大変厄介なユダヤ人という存在だが、われわれ日本人はとくにこうしたことがなかなか理解できない。このことが、今後われわれ日本人がどうやって対応したいったらいいのか、実に困った現実だが、とりあえず「ユダヤ」という世界には嫌われないようにしたほうが良さそうだ。まずろくなことは無い。まず、触らぬ神には祟り無しだ。ただ、単純にユダヤ人は日本人に興味があるとか、好意を持っているとか、そういう一面的な見方で彼らを見ないほうがいいということはいえる。もっともそれは、ユダヤ人に限った話ではない。どこの国の人であろうと(日本人であろうと)、しょせん食えないやつは何処まで行っても食えないやつであり、いいやつは徹頭徹尾いいやつなのだ。
増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄
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