【閑話休題】
[記事配信時刻:2017-10-20 17:11:00]
【閑話休題】第492回・今そこにある危機
▼言うまでもなく、北朝鮮問題である。目下、行われているであろう、北とアメリカの水面下における断続的な交渉が、最終的に妥結することを祈っているが、それは北の核開発とICBM(大陸弾道弾)開発の全面放棄以外にない。アメリカは、どちらの保有も許さないであろう。先例をこれ以上残したくないのだ。核は容認するが、ミサイルはダメだという取引をしたパキスタンやイランのような国が、結局その後もいまだにアメリカにとっては頭の痛い問題児で有り続けているからだ。
▼この最終条件を北が受け入れれば、アメリカはその代償として、北を国家承認することも平気でするだろう。朝鮮半島は、韓国人の彼岸である統一の夢が永久に消え失せ、分断国家として存続し続けるのだ。アメリカは、単独で大々的な経済支援を行い、事実上アメリカサイドに取り込もうとするだろう。それには、むしろ韓国が邪魔なのである。日本はその支援に協力させられることは間違いない。
▼ちなみに、安倍首相は、先だっての田原総一朗氏との会談で、「もう改憲の必要はなくなった」と述べたそうだ。意外感があるが、すでに安保法案が通っているからだ。安保法案の内容をざっと整理してみよう。
・集団的自衛権を認める
・自衛隊の活動範囲や、使用できる武器を拡大する
・有事の際に自衛隊を派遣するまでの国会議論の時間を短縮する
・在外邦人救出や米艦防護を可能になる
・武器使用基準を緩和
・上官に反抗した場合の処罰規定を追加
などいろいろあるが、ポイントは筆頭に挙げた「集団的自衛権を認める」である。これ一つで良いのだ。これで、日本の自衛隊は、軍隊となったに等しい。
▼安倍首相は、ではなぜ今回の衆院解散選挙で、改憲を公約の一つにしているのか。それは、「最後の壁」の突破である。つまり、首相は田原氏に述べた言葉によれば、「憲法学者の7割が、自衛隊は憲法違反である」としているので、これを打破するには、憲法に自衛隊という文言を入れる以外に無いというものだ。
▼こうなると、平和を追求する国家ではあるけれども、自衛隊を通常通り、一切違法性を伴わずに、軍隊として機能させることができるわけだ。だれも、その存在自体の違法性すら問題視することができないようにする、それが今回の選挙で圧勝することが、大きな眼目なのである。
▼だから、憲法第9条を変更するような、それこそ国論を二分しかねない劇薬をつかわなくとも、むしろ平和憲法の精神を維持したまま、「普通の国」に戻れるというわけである。
▼さて、北朝鮮だが、アメリカは最終的な妥結が出来ない場合に、別の選択肢である先制攻撃というシナリオも有している。ここでは、このシナリオについて考えてみよう。無いほうがいいに決まっているが、それが発生する場合を考えることは無駄ではない。
▼安倍首相が衆院解散を突如行ったのには、もちろん長期政権を狙って、一番野党・民主党が内部分裂を起こした今がチャンスだと判断したためだろう。しかし、もう一つあると言われている。それは、アメリカの先制攻撃のシナリオがすでに進行しているためだ。
▼おそらく、アメリカからは内々で、このシナリオが進行していることを、安倍首相に知らされている。だからこそ、「北は吠えるだけで、実際にはやらない」というムードが大勢を占めている世論にもかかわらず、非常に違和感のある「国難選挙だ」とアドバルーンを上げたのだろう。
▼メディアは、浅薄皮相だから「森友・加計問題の隠蔽をする、大義なき選挙だから、こういう大げさな選挙テーマを訴えたのだろう」としているが、まったくおめでたい限りである。
▼テレビでの党首討論でも、安倍首相はぎりぎりの表現を使っているように見えた。たとえば、「北朝鮮問題は、12月に非常に危険な状態になる」と言っている点である。これが、有事を指していなくてなんであろうか。
▼世論もメディアも、概ね「北は、そんな無茶はしない」という前提に立ってものを言っている。それは事実である。北は、自分からは手を出さない。負けると決まった話だからだ。
▼そうではないのだ。戦争は、アメリカが起こすのであって、北ではない、ということを彼らは勘違いしているのである。恐ろしいのは、北朝鮮ごときではない。アメリカなのだ。
▼金正恩委員長がそれに気づけば、(おそらくわかっていると思うが。かなり頭のいい人間だと推測する)まず間違いなく、交渉に妥協するはずだ。しかし、それを阻み、あくまでそれを許さない軍や情報部などを、金委員長が押さえきれなくなるということかもしれない。あるいは、自国民の中に不穏を感じているからかもしれない。内部崩壊の恐怖である。
▼アメリカは、12月、あるいは遅くとも年明けに先制攻撃を予定しているとしたら、それは北の長距離弾道ミサイルの開発が完了する前に、行動を起こさなければならないと考えているためだ。もともと、北が核ミサイルの完成にまだ1年はかかるとされていた見方が、今年実験の進捗状況から、それほどかからず、半年から8か月で完成するだろうと、予想が前倒しになっているのだ。
▼それを北が有してしまったら、それまでの「自分からは手を出さない」スタンスは、「いつでも自分から攻撃できる」というスタンスへと、いきなり北の方針が変わってしまう恐れがある。外交交渉も、圧倒的に北に有利になってしまう。
▼北がまだ中距離弾しかまともには効力を発揮できないうちに、北を叩かなければならない、とアメリカは考えているのである。ちなみに、中距離弾の場合、日本へのミサイル発射はあまり効果が無い。着弾正確性がまだきわめて乏しいためである。ただ、距離は飛ぶようにはなってきているから、まかり間違って日本のダメージが大きくなるというリスクは当然ある。
▼【赤備え・日報】でも先日述べたが、マティス国防長官の発言のうち、重要な点が二つある。
・開戦となった場合、韓国の被害は、われわれがこれまで想像してきたよりはるかに甚大なものに発展する。
・アメリカ軍は、全資産の6割を北朝鮮包囲に差し向ける。
つまり、米軍部は尋常ではない被害は覚悟の上で、軍事行動を起こすとしているのである。
▼おそらくこれには、それしか方法が無い、ということもあるだろうが、かなり韓国という国に対して、「嫌気がさした」ということも背景にあるだろう。
▼朝鮮戦争が1955年にいったん休戦となって以来、62年たっているうちに、韓国自体の「当事者意識」が希薄になってきているという点。とくに韓国の文新政権は、あたかも北朝鮮のメッセンジャーボーイではないか、と疑われてもしかたないくらい、容共的なスタンスを取っている。
▼なにより、今そこにある危機に対して、まったく向き合わず、ありもしない歴史捏造に依拠して(慰安婦問題)、ひたすら反日運動ばかりにかまけている現状というものは、およそハタからみていて、奇怪である。敵は一体だれなのか、現実に向き合っていないと言われてもしかたがない状況に陥っている。それでいて、韓国自身が破棄した、万が一のときのための日韓スワップ協定を、今になって復活してほしいと言い始める。当然日本側は、なにを言っているのかこの国はということで、取り合っていない。
▼かつて朝鮮戦争では序盤で、一気に前線を突破された折、李承晩大統領は軍民を、総攻撃にさらされているソウルに置き去りにしたまま、自身は逃亡。あろうことか、北の南進を少しでも遅らせようと、漢江の橋を切った。ソウルは壊滅した。
▼この苦い経験があったにもかかわらず、それ以降、現在に至るまで、一貫して休戦ライン(38度線)から、わずか40kmのソウルに首都を置き続け、人口集中を許してきたのは、怠慢以外の何物でもない。釜山や大邱、など南部や、せめて中部に首都を移すこともしなかったのだ。歴史に学んでいないのは、韓国なのである。
▼防空能力にいたっては、ほとんどゼロに近い。日本と違い、衛星を飛ばす努力をしてこなかったために、GPSによる情報能力も事欠いている。今回の北朝鮮の暴走に際して、文新政権は独仏などに、衛星の借用を頼み込んだが、すべて断られている。当然であろう。自助努力をしていない国を、一体だれが支援するものだろうか。
▼こうした韓国の見当違いな外交(対日、対北朝鮮)と、自助努力の決定的な欠如、夜郎自大な自己認識といったものは、ほとほと国際社会では同情すら買うことがない。
▼日本も言ったらよいのだ。1965年の日韓基本条約で、過去のすべてがこれで清算された、としているはずにもかかわらず、ありもしない慰安婦問題を引っ張り出してきて、賠償せよといっているわけだから、日本からも、「それなら、いったん、日韓基本条約も清算しましょう。当時、韓国の国家予算の1.5倍に相当する1兆800億円分をまず返済してください。」
▼借款は良いのだ。無償供与分だけで勘弁しよう。「当時の360円換算、なおかつ当時と現在の物価相違を換算に組み入れると1兆800億円は価値があるはずだ。分割ではなく、一括返済である。金利分は、免除しましょう。即金で、返してください。」と言ったらよいのだ。
▼あるいは、こういう計算をしてもよい。現在の韓国の国家予算の1.5倍をまず返却してください。これも合理的である。21兆円くらいだろう。その1.5倍であるから、31.5兆円である。なんのことも無いではないか。民族の大義だというのなら、歴史こそが重要だというなら、国家予算の1.5倍を一括返済するくらい、なんでもないであろう。
▼あるいは、当時の日本の国家予算が37兆円超であったから、無償供与分はその2.9%に相当する。現在日本の国家予算は、ほぼ100兆円であるから、2.9兆円に相当する。これでもよい。1兆800億円か、2兆9000億円か、それとも31.5兆円か。どれでもよいから、とにかく一括で耳をそろえて返してもらいたい、と言ってもよいのだ。それで、晴れて韓国は、日韓基本条約を完全に破棄しh、「ふりだし」に戻って、改めて戦前の日韓併合問題をどう清算するか、話し合いましょう、ということだ。それでいいじゃないか。それが望だろう。
▼話がだいぶそれてしまったが、このような韓国はほとんど無視して、アメリカは自分の選択肢をそろえている。それが先のマティス国防長官(狂犬)の発言であろう。
▼有事発生に際して、北朝鮮が日本に核ミサイルを発射しないかという問題がある。これはもちろん絶対否定はできないものの、現実問題無いだろうと思っている。自分が、金正恩委員長だったらどうするだろうか、と考えれば自ずと回答はすぐでてくる。
▼それでなくとも限りある有効な武器である。目標への着弾率が不正確なままにグアムや日本、アラスカなどに撃ったところで、アメリカ軍の進撃を止めることはできない。
▼同じ負けるなら、敗戦直前の日本と同じく、できるだけ敵(米韓)に出血を強いて、停戦あるいは休戦に持ち込むという、万に一つの可能性に賭けるだろう。それは、韓国領土と、自国周辺海域に包囲網を築く米韓連合軍に、ほぼすべてを集中的に使用するはずである。日本などに撃つような、無駄撃ちはしない。
▼では、安倍首相はなぜ、「国難」と呼んだのか。それは、言うまでもなく、有事発生後、間違いなく大量の避難民が、南北朝鮮から流入してくるということである。試算によれば、1000万人に及ぶ可能性があるという。日本の総人口の12%に相当するから、大問題である。
▼一体それを、どう制御するのか。どこに臨時収容するのか。どうやって管理するのか。この問題は、実戦以上に難問である。これを指して国難と言ったに違いない。しかも、難民のなかには、多数の工作員が紛れ込んでくるであろうし、とりわけそれが国内の敵性国民(左翼である)との連携を取ろうとするであろう。それを見据えての、「共謀罪」の立法化だったのだ。安倍政権も用意周到である。
▼ただ、直近、噂で在韓米軍がまるごと日本に先に退避行動をとるという話が出回っているので、それだと話ががらりと変わってしまう。この場合、確かに日本も攻撃の標的と化すだろう。アメリカは、急襲を優先するであろうから、在韓米軍(陸軍)をいったん日本に退避させるという、いかにも「これからカウントダウンするよ」と言わんばかりのアクションは起こさないのではないか、と思うが。どうだろうか。
▼一方、こうしたアメリカの「先制攻撃やむなし」という結論を、ロシア、とくに中国は認めないだろう、と言う意見もある。そのことを書いておく。
▼北としては、確かにアメリカが独立国家として北を承認し(それは事実上、朝鮮半島の永久分断を意味する)、平和条約を結ぶことができれば、核も、またミサイルも持つ必要はない。北は条件によっては、そこまで呑む腹はあるはずだ。内部崩壊だけが問題なので、とりわけ、金正恩委員長は全権継承後、ひたすら、自分の意に反する人種を、ことごとく大量処刑してきたように見える。
▼北の最終目的というものは、あくまでアメリカとの共存である。それが可能なら、核もミサイルも放棄できるのだ。最大の脅威は、なんといってもアメリカに国家を消滅させられることにほかならないからだ。
▼だから、トランプ大統領としては、確かに北とウィンウィンの合意に到達できるチャンスはあるのだ。しかし、それはあくまで北が長距離弾の完成に至る前までの話である。先述通り、半年から8ヶ月と言われている。アメリカには時間が無いということだ。
▼今、一番北との関係が良好なのは、ロシアのプーチン大統領である。中国の威光が、近年とみに北朝鮮から失われてきているのと反比例して、ロシアの影が濃くなってきている。経済制裁を受けている北朝鮮が、唯一の航路を維持しているのは、ロシアだ。
▼逆に、北朝鮮と中国の関係は朝鮮戦争以降、最悪である。朝鮮戦争(1950~53年)以降、朝鮮と中国両国は互いに『血盟関係』を唱え続けていたが、今やむしろ敵対関係に近い。実はこの悪化は、金正恩委員長の父親、金正日時代からすでにそうだったのである。しかし、発端はさらにさかのぼり、実に金日成時代にすでに始まっていた。
▼もともと北朝鮮は、鴨緑江をはさんで北側に広がる満洲(満州ではなく、正式には満洲である。満州と書くことで、いかにも中国の一部のようにカモフラージュしているにすぎない。本来、満洲が正式な名称であり、漢民族とは別個の、満民族の国家であった)、つまり現在中国の東北部の南部は、北朝鮮が本来領有すべき地域だという事で、ずっと主張し続けている。一時、朝鮮戦争時には中国はそれに色よい返事もしていたのである。それが、反故にされて以来、北は中国に深い不信感を抱き続けてきたという経緯がある。
▼習近平体制になってから、とくに両国関係は悪化の一途をたどった。中国は経済というそれこそ共産党にとっては「国難」の問題を解決していかなければならないときに、奴隷のはずの北朝鮮が、暴れまわるものだから、米中関係がこじれにこじれている。南沙諸島の実効支配にも、アメリカがとうとう武力的威圧を始めてしまう有様だ。習近平主席も、おそらくアメリカが韓国を見限っているのとは違った意味で、同盟国のはずの北朝鮮を見限っている。
▼実際、北朝鮮は現在、韓国に向けている全砲門・ミサイル発射装置を、いつでも北京や中国東北部に変更できるように、万全を期している。北は、中国さえも、武力で挑発し、自身に有利な環境をつくりだそうとしているのである。これに、習近平主席はキレているのだ。
▼アメリカが、先制攻撃をした場合に、まず北の制空権を握り、航空戦力を瞬時に壊滅させ、次いで38度線北側に展開するあらゆる地上軍の終結地と兵站を絨毯爆撃によって沈黙させようとするだろう。
▼問題は、結局北朝鮮を屈服させるとしたら、占領しなければ土台無理な話だということだ。その役目は、韓国軍にやらせるつもりか、それともあくまで米軍が地上軍を上陸させて、韓国軍はあくまでその補助の役割しかさせず、戦後処理に際して韓国に余計な口出しをさせないようにするつもりだろう。少なくとも、現在の文政権が相手なら、アメリカはそのように「ないがしろ」にするはずである。相談相手にすらならないからだ。
▼この米地上軍(マティス国防長官は14万人を送り込む、と発言している)による北朝鮮占領には、当然、中国人民解放軍の介入を招くであろう。北朝鮮の治安維持を名目とした派兵である。
▼アメリカがこれを制することができるか、それとも容認するかは、空爆後どのくらいの短時間で地上軍による全土占領が達成されるかにかかっている。もちろん、序盤で、鴨緑江南岸地域(北朝鮮と中国国境地域)の制圧を先行するということをするはずだ。
▼これは、同時に米軍特殊部隊による、金正恩委員長の身柄拘束、あるいは殺害(斬首作戦)がどのくらいの短時間で達成可能かとも関係している。それが短時間で達成されれば、アメリカはただちに内外、そして北朝鮮国内においても、政権崩壊を喧伝でき、これから臨時に軍政を敷くので、周辺国は一切介入するなと宣言できる。治安維持は、米軍と足で使われる韓国軍で十分だ、と声明発生すればよいのである。そのとき、難民収容などの作業は、日本が請け負うことになるはずだ。(これが、安倍首相の言う「国難」である)
▼また、地上軍を派遣するとなれば、金委員長の逃亡経路を遮断するために、いきなり鴨緑江南岸に敵前上陸をする線も、アメリカは考慮しているはずだ。ちょうど朝鮮戦争で、序盤の敗退で米韓軍が釜山にまで追い詰められた折、反攻の転機となったのは、米軍の38度線近く仁川上陸からであった。同じ判断をするに違いない。
▼となると、残るはロシアの去就である。北朝鮮と関係良好な、唯一の大国であるから、黙っているだろうか。しかし、ロシアにはそれどころではない国内問題が生じ始めている。反プーチン運動の台頭である。
▼来年3-4月には、大統領選を控えている。そして、若年層を中心に、反プーチン運動が日に日に高まっている。当局は、違法デモだといってあいついで投獄しているが、朝鮮半島における有事発生で、ロシア軍が動くということになると、事は厄介である。従って、アメリカがなにをするか、当然決まり切っている。大統領選の攪乱だ。
▼現在、ナワリニー氏を中心に、全土で反プーチン運動が展開されているが、ここから数か月、大統領選挙に向けてロシア国内は、世論が沸騰してくるはずである。
▼ナワリニー氏の掲げるポイントは、「戦争反対(クリミア、ウクライナへのロシア軍侵攻を指している)」と「腐敗撲滅」である。ネットでこの運動は拡散しているから、中国のようなネット規制を一段と強めてしまうと、非常にプーチン政権にとってはかえって危険になる。ましてや、北朝鮮にロシア軍を介入させるとなると、ナワリニー氏の反プーチン運動という火に油を注ぐことになるし、欧州が猛反発する。
▼しかも、ナワリニー氏は立候補できないように身柄拘束されてしまったりするので、反プーチン派はその可能性が無い、しかし集票力のある人間をトップに持ってきた。それが、クセーニア・サプチャーク女史だ。
▼この女性は、プーチン大統領がソ連崩壊で、自分のいた秘密警察が解体となった後、政界へと進出したわけだが、このときサンクトペテルスブルグ市の知事だったのが、クセーニア女史の父親だった。この父親が、プーチンを第一副知事にしたことで、そこからプーチンの政界での躍進の道が開けていった。いわば、恩人の娘である。(この父親は、後に、プーチン大統領選挙出馬の際、プーチン支援で活動していたところ、心臓麻痺で死んだということになっている。が、どうも毒殺だった可能性が濃厚である。また、プーチン支援というが、不自然である。)
▼おそらくアメリカは、工作員を総動員して、ナワリニー+クセーニアの反プーチン運動に有利なように、ロシアの汚職暴露・摘発に手を貸していくことになるだろう。そこで、プーチン大統領がアメリカと取引し、朝鮮有事に際してロシアは不介入という言質が取れれば、ロシア国内での世論攪乱はアメリカもしないだろう。ロシアがどちらを選ぶかである。
▼あくまでここまで書いてきたことは、すべて妄想にすぎないが、それなりの現実性はある。おかしな、突拍子もないシナリオでもないのだ。
▼アメリカは、なぜ、北朝鮮の制圧を急ぐのか。それは、もちろん北朝鮮の核ミサイル保有を容認することが、悪しき先例になることを恐れるためでもあるが、それだけではない。す
▼もう一つは、北朝鮮の地下資源である。意外に知られていないが、北朝鮮には、2008年時点で総額で6兆4000億ドル。640兆円相当の地下資源が埋蔵されている。内訳は黄金2000トン(単一団体として世界最大の金保有をしている米国連銀は、公称8000トン保有である)、鉄5000億トン、マグネサイト60億トン、無煙炭45万トン、銅290万トンなどである。これを押さえたいのである。従って、中国はもちろん、韓国さえも、実質的な北朝鮮占領に介入させたくないのである。
▼最後の一つは中東問題の混乱である。イスラム国がほぼ崩壊しつつある中で、新たな緊張関係に発展しようとしているのだ。完全にユダヤ政権といっていいトランプ大統領府は、イスラエルへの肩入れを鮮明にしてきており、反イスラエル的なユネスコからの脱退を言い始め、イラン(イスラエルの仮想敵国)と欧米との核開発規制合意の破棄をほのめかし、トルコが身柄引き渡しを要求する反エルドアン活動家を保護して譲らず、これまで切り捨てようとしていたサウジに急接近するなど、中東でもトランプ旋風を巻き起こしている。
▼アメリカが、中東でなにをしたいのか、まだわからないが、少なくとも、トルコやイランと急速に関係悪化し、サウジやエジプトと急速に関係良化していることはわかる。
▼むしろアメリカは、場合によっては、北朝鮮より、こちらのほうにこそ注力しなければならなくなるのだ。従って、北朝鮮問題はできるだけ早く決着をつけたい、そう思っているはずである。
▼混乱の仕方次第では、今のところクルド人独立(トルコ、イラン、イラクにまたがる地域に、最低1000万人)国家構想に関して、アメリカは否定的である。今、混乱されても困るのだ。
▼しかし、もしこの運動が使えるとなれば、おそらくそう遠くない時期に、アメリカはクルド人独立運動を支援する側に回る可能性もある。
▼なぜなら、クルド人が独立すると、なかなか言うことをきかないイラクの国力を削ぐことになり、弱体化させることができる。さらに、イラン領内のクルド人居住区を離反させ、国内分裂を引き起こしせる。ホメイニ革命以降、国民の大半が革命を知らない世代になってきているイランで、革命政府を崩壊に導いていこうとすれば(アメリカ資本が入りたいためだ)、このイラン領内のクルド人を扇動することがカギになってくるかもしれない。
▼さらに、次第に反目し始めたトルコが、ロシアとの接近を始めていることから、アメリカはトルコの国力を減らすために、南東部のクルド人過激派を使おうとするかもしれない。トルコのこの地域は、第一次大戦後の協定で、トルコが一切石油採掘を禁じられていた経緯がある。ローザンヌ条約である。
▼トルコの埋蔵資源は、石油100億ドル(1兆円)に加え、膨大なガス油田が存在する。この採掘禁止条項が切れるのは、2023年である。アメリカは当然ここに照準を合わせているはずだ。
▼さらに言えば、トルコの黒海側にも大変なガスハイトレードが発見されている。従い、トルコが、アメリカの信頼に足る国家に復帰するか(冷や飯を食っている、正規軍によるクーデター)、あるいは、クルド人独立運動を扇動することで、内部から崩壊させるか、アメリカがやりそうなことは、だいたい見える。
▼実は、もう一つある。それはアフガニスタンである。ここは、トランプ政権になってから、米軍増派をしている地域だ。オバマ前政権では、ビン・ラディン殺害(ということになっている)以降、撤退方向だったが、トランプ大統領がこれをひっくり返して反対に増派である。
▼アフガニスタンは、パキスタン、そしてアルカイダ、政府と入り乱れての混乱状態が続いている。ロシアや中国も触手を伸ばしてきている。
▼インドと急速に関係を改善して、半ば同盟国(なにしろ合同演習をしているくらいである。日本の自衛隊も参加した。)となったインドを拠点に、パキスタンの篭絡と、アフガニスタンの実質支配へと歩を進めたい意向は明らかだ。それは、ロシアをハートランドに押し込めて南進を許さず、中国の「一帯d一路」を寸断する要衝だからにほかならない。
▼しかし、それだけではない。アフガニスタンは、北朝鮮と同じく、豊富な地下資源を埋蔵しているのだ。
▼アフガニスタンには、鉄や銅、コバルトの巨大な埋蔵地のほか、アフガン南部では大規模な金の鉱脈が確認され、中部ガズニ州付近の塩湖ではリチウムの巨大な埋蔵地がみつかった。リチウムの埋蔵量は、世界有数の産出地として知られるボリビアに匹敵するとみられ、米国防総省内には「アフガンが『リチウムのサウジアラビア』になる」との見方もある。超伝導物質の原料になるニオブも大量にあるとみられる。
▼こうしてみると、今そこにある危機というのは、すべてアメリカが仕掛けるのだ。いかにもアメリカが仕掛けられたふうに見せながら(頭かくして尻かくさずなのだが)、実はアメリカがやりたいときに、仕掛けるのが、危機なのである。
増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄
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