【閑話休題】
[記事配信時刻:2017-09-08 16:03:00]
【閑話休題】第486回・戦国策
▼昭和21年1946年11月3日、日本国憲法が発布されて、これで71年が経過した。憲法前文の「諸国民の公正と信義に信頼し」た結果、今どうなっているかといえば、さっそく1952年には、悪名高い韓国・李承晩政権が、竹島を実行支配を始めた。いわゆる「李承晩ライン」の勝手な線引きである。
▼当時、独立直後(サンフランシスコ講和条約)の日本政府はこれに抗議。アメリカ政府でさえ、韓国の竹島領有には根拠が無いとして認めなかったにもかかわらず、李承晩は譲らなかった。日本は一貫して抗議しているが、韓国政府は「領土問題は存在しない」と言い切り不法占有を続けている。このように、実効支配が始まったら、当時、世界最強であったアメリカでさえ、原状復帰させることができないことがわかる。
▼ましてや、平成27年7月、韓国国会では「対馬返還要求決議案」が国会議員五十名の連名で発議されている。もともと韓国は、李承晩ラインを引いたときに、対馬の領有権も主張しており、この主張は現在も変わっていない。実際、対馬における韓国資本の土地買収が進んでいる。
▼つまり、チャンスがあれば、将来対馬を強引に併合する可能性もあるということだ。そのときに、韓国は中国方式をとるはずである。数百・数千隻の漁船を仕立て、民間人とそれに偽装した正規兵を混在させ、強硬上陸をする。太極旗を掲げ、ただちに正規軍が駐屯を開始する。手口は、必ずこうしたものになる。
▼そのとき、日本は海保も自衛隊も、発砲できないはずである。なにしろ民間人が押し寄せてくるのであるから。これは、絵空事ではない。従って、これを武力で強制排除できる法整備が、可及的速やかに行われる必要がある。
▼尖閣諸島も中国によって、同じような手口で乗っ取られることは、すでに明白である。その「先例」を良いことに、韓国は対馬に上陸を開始する算段をするだろう。
▼これが、われわれの偉大な憲法の「諸国民の公正と信義に信頼し」た結果の事態なのだ。この憲法は、押し付けられたことが問題なのではなく、中身がまったく話にならないということだ。第9条第2項の「交戦権はこれを認めない」もそうである。
▼そもそも「交戦権」とはなにか。「戦争を行う権利」ということになるが、世界的にこの「戦争を行う権利」などという概念は存在しない。そんなことを議論している国は、いまだかつて一つも無いのだ。憲法をつくったアメリカチーム自体が、その後、この「交戦権」とはどういう意味なのか、と日本サイドから説明を求められたとき、「どういう意味かわからない」と明確に述べている。GHQから渡された草案にそうなっていたから、使用したというのである。ばかばかしくて話にもならない。
▼この「交戦権はこれを認めない」の一文だけで、日本の反戦主義者たちはそろいもそろって、自衛権まで含めて戦争放棄を主張しているわけだ。
▼もちろん左翼的人種の間にも、「自衛権は仕方ないが、集団的自衛権はダメだ」というこれまたとんちんかんなことを言っている者もいる。およそ、古来、戦争というものは、自国だけで防衛が可能であるならともかく、往々にして集団的に防衛しなければ無理だという現実をまったく無視している。それが仕掛けられた戦争であれば、なおのことだ。また集団であればこそ、抑止力にもなる。
▼日本は、今後の国際戦略において、敵は誰かを明確にしておくべきだろう。言うまでもなく、中共である。中国とは敢えてここでは呼ばない。中国人が問題なのでもなく、中国という世界観が問題なのでもない。問題は、共産党政権にあるからだ。
▼われわれが「諸国民の公正と信義に信頼し」ている間に、南沙諸島のベトナム領海域の岩礁地帯が、中共によって不法占領された事態を、われわれ日本人は黙って見逃してきた。われわれは「ひとごと」として、目をつぶってきたのである。恥を知るべきである。論語ではないが、「義を見てせざるは、勇なきなり」である。
▼習近平主席は、訪米の折、長々と「朝鮮半島は古来中国領土である」と主張して、アメリカ側を呆れさせた。過去歴史上において、自分たちに朝貢した国は、すべて自分たちの領土である、という主張にほかならない。朝貢という外交関係と、国民国家としての独立性はまったく別ものである。誇大妄想狂の域を超えた発想だ。
▼しかし、嘘やでたらめも、百万回言い続ければ、そして誰もそれを「ばかばかしい」と思って、一々反論しなければ、それ自体が「既成事実」となっていく。外交において、「沈黙」は「容認」と同じだからである。
▼そして朝鮮は自分のものだと言い切る一方で、今般の北朝鮮問題では、アメリカから関税発動をちらつかされ、追い詰められると、「なんでも中国に責任があると考えるのは間違いだ」と簡単に前言をひっくり返す有様だ。ご都合主義というのはこのことだ。自分のものなら、しっかり監督する責任があるはずだが、難しくなると手のひらを反す。この毀誉褒貶は、およそ条約や協定など結ぶ信頼性がまったく無い政権だということを示している。
▼トランプ大統領は、中共が「朝鮮は自分のものだ」と言い切るなら、ちゃんと制御してみろ、と突っぱねているのだ。そして、それが無理だということが明らかになれば、「アメリカが単独で解決する」と脅しているわけである。「おまえにも、懲罰を課す」とさらに畳み込んでいるわけである。
▼中共のこうした膨張主義は止まらない。尖閣諸島の領有権問題は、1971年に突如として中国が領有権を主張し始めたことが発端である。海域一帯に膨大な海洋資源があることが判明したことが一因だが、現在ではそれのみならず、太平洋に支配権を拡大するための橋頭保として重視し始めているのである。
▼それどころではない。すでに中共は沖縄の領有権まで主張し始めている。公式にではないが、布石を打っている段階だ。2010年8月20日の新華社(中共の国策メディアである)は、中国社会科学院日本研究所の署名で、「沖縄の主権は中国に属する」と臆面もなく披瀝しているのである。
▼続いて9月19日には、人民日報傘下の環球時報が、元駐日中国大使館員の論文を掲載し、「沖縄は、日本の領土ではないのだから、日本は釣魚島(尖閣諸島)について、中国と対話する資格がない」とこれまた鉄面皮にも主張している。
▼やがて機会を見ながら、国営メディアではなく、政府当局から公然と「沖縄は中国の領土である」と言い始めるはずである。
▼尖閣諸島に、夥(おびただ)しい漁船を接舷させて強硬上陸し、実効支配を成功させた次の標的は、こと日本にとっては、沖縄であることはすでに明確である。中共はすでにあからさまに標的にしているのだ。武装していない、膨大な数の中国民間人(偽装である)を、海保も自衛隊も、現状では発砲その他の手段で強制排除することができまい。
▼日本人にも記憶に新しい、2010年9月に発生した、尖閣諸島沖の海保巡視船と中国漁船との衝突事件は、まさにその象徴的な例だ。中国漁船のほうから衝突してきたのである。ところが、新華社は、日本の海上保安庁巡視船が、中国漁船を取り囲み、追いかけまわし、日本側から衝突してきたと、事実とまったく反対のことを発表。嘘と捏造の鉄面皮が、中国外交の真骨頂である。
▼しかも、当時の温家宝首相は、国連総会出席のためニューヨークを訪れていたが、そこで「船長を釈放しなければ、中国は対抗措置をとる用意がある。その責任はすべて日本側が追わなければならない」と発言している。中国が一件の賠償まで請求するに及んで、右派の論客である櫻井よし子氏などは、「盗人たけだけしいとはこのことだ」と痛罵している。
▼ここで、当時の丹羽宇一郎駐中国大使は、現地で夜中も含め5度も呼び出され、激しく中国側から抗議された。ところが、この人物は、一体どこの国の大使なのか、まったく理解に苦しむ行動をとった。立場を超えて、むしろ中国側に完全に立って日本政府(民主党政権)の説得を試み、仙谷官房長官、玄葉国家戦略担当大臣、菅直人首相と言った左翼政治家を篭絡。解放・帰国させた「戦犯」と言っていい。検察は、「船長の起訴が可能だ」と主張していたにもかかわらず、これを押し切ったのである。
▼このとき、中国船が海保に意図的に衝突した物証としての映像がyoutubeで流出した。海保関係者がリーク、暴露したのである。政府は、このビデオを公開せず隠蔽しようとしていたわけだが、この態度からいっても、当時、一体政府はどこの国の政府かと、怒りというより、ほとんど呆れるばかりだった人も多いだろう。
▼こうした問題をさらに深刻にさせているのが、いわゆるチャイナ・スクール(親中国派)と呼ばれる連中の存在である。本来、チャイナ・スクールというのは外務官僚の中の、派閥の意味だが、本稿では広く民間人も含め、日本の国益に害毒としかならない人種のことを、すべてチャイナ・スクール(親中国派)と呼ぶことにしておく。
▼先述したように、北京駐在だった元日本大使の丹羽宇一郎という人物がいる。伊藤忠商事会長・社長、日本郵政株式会社取締役を歴任し、2010年(平成22年)6月から2012年(平成24年)12月まで中華人民共和国駐箚特命全権大使を務め、同月から早稲田大学特命教授。日中友好協会会長という、金ピカのエリートである。そして、同時に強烈なチャイナ・スクールであり、別の言い方をすれば、「国賊」である。
▼この人物が一体、日中間において何をしてきたか、ネットでググればいくらでもその反日の悪行を目にすることができる。
▼日本中各地に、中国資本が土地買収をし続けてきたのも、この人物の「功績」と言っていい。麻布の中国大使館横に、1720坪を一般競争入札で(60億円)で落札している。2011年のことだ。中国大使館の3900坪に隣接している。
▼在外大使館・公使館・領事館設置に関する国際法は、ウィーン条約に基づくが、そこでは「適性な規模」という条件が付されている。誰がみても、「適性な規模」を遥かに超えていることは自明である。
▼ここだけではない。各地に中国は積極的に土地所有を拡大している。この便宜を図ったのが、丹羽氏である。彼は、深田祐介との対談で、「日本は中国の属国になったほうが、幸せなんです」と大真面目で語り、深田氏が腰を抜かしている。
▼しかもである。日本にある外国大使館等は、すべて賃貸である。英国もアメリカもすべてそうである。しかし、中国だけが日本の土地の「所有」をしているのである。外交は、すべて「互恵主義・相互主義」である。日本人は何人も中国に、一くれの土地も購入することができないのに、この事態は一体どういうことなのか。なぜ中国にだけ、日本の国土の所有を認めているのか。
▼日本人が認識を改めなければならないのは、すでに戦争は始まっているという事実である。中国という国は、孫文が辛亥革命を成功させたとき、その革命の公約とは「韃靼(だったん)人を関外(万里の長城の外)に追い出す」というものだった。革命の成功後、その公約に違反して、満州を併呑・侵略したのである。古来間違いなく「中国(漢民族居住地域)」とされてきたのは、東は山海関・西は玉門関までである。その外は、戎夷(野蛮人)が住む土地とされてきた。つまり、中華民国は、外国(満州)を侵略したわけである。
▼この中華民国の満州併呑は、人民共和国成立直後の、チベット侵攻と虐殺・征服につながっていく。
▼とくに、この恥知らずなチャイナ・スクールと呼ばれる人たちは、外務省に多い。有名なものは、対中国ODA(政府開発援助)である。中国に対するODA供与は1980年に始まった。以来、2015年まで、日本は円借款3兆3164億円、無償資金協力1566億円、技術協力1772億円を中国に対して供与している。
▼2007年に日中双方が確認した6つの案件を最後に円借款を新たに供与することを中止。だが、無償資金協力と技術援助についてはいまだに継続されている。
▼先に述べた数値は、あくまでも外務省分であって、経済産業省や文部科学省などほかの省庁を合わせた数字はさらに跳ね上がる。
▼低利で資金を貸し出す円借款は、中国が拒否しない限り、いずれ日本に回収される。だから、中国は「これは日本による投資と同じだから、感謝する必要はない」とへ平気な顔をして言う。
▼しかし、無償資金協力と技術協力は「贈与」であり、日本には1円も返ってこない。それでも続けているのは、外務省によれば、日中両国の 互恵的な関係を構築しようという狙いがあるという。
▼外務省の眼は、とんだフシ穴か、あるいは確信犯的な中国の軍事膨張支援者か、どちらかだといっていい。こうした援助金の大部分は、中国がアフリカはじめ世界各国の、反中国主義を骨抜きにするため、海外援助金に使われている。どころか、兵器製造や海外における軍事・輸送施設に回されているというのが実態である。外務省はことごとくこの批判に目をつぶり、杓子定規な「日中友好に、一定の効果がある」と繰り返すばかりだ。
▼しかし、こうした「援助」にもかかわらず、度重なる反日暴動の扇動をし、南シナ海への膨張、尖閣諸島のみならず、沖縄も中国領であると公言してはばからないこの強圧外交を見れば、まったく無意味な援助であったことがわかる。「一定の効果」など無いどころか、明確に「利敵行為」である。
▼にもかかわらず、外務省は「両国民間の相互理解の増進も日中関係の健全な発展を促進するために重要であり、そのような分野におけるODAを通じた取組は依然として一定の意義を有している」と公式に述べている。間抜けでなければ、外務省そのものが、売国的行為を行っているとしか思えない。
▼そもそも中国側には日本によるODA供与は、中国に対する戦争賠償の代替の意味合いを持っているとの認識がある。昭和47年に出された日中共同声明の 第5項では、中国は日本に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言しており、中国が戦争賠償の代替という認識を持っているとすれば、完全な誤りだ。
▼韓国が、1965年の日韓基本条約で、それ以前のすべての問題は、最終的に解決済みとして膨大な経済協力を日本から受けたにもかかわらず、今般慰安婦・強制連行といった問題を蒸し返し、「人道に反することは、時効は無い」と済ました顔で言ってのけているのと、同じである。自国政府が戦後、100-200万人に及ぶ虐殺(保導連盟事件その他)をしたことは、司法によって「時効」判定を下しているのにもかかわらず、である。この二か国というのは、約束や条約というものが、まったく意味をなさないということがよくわかる。
▼中国が国内総生産(GDP)で初めて日本を上回り、その経済力をバックに軍事拡張を続け、その海 軍艦船は東シナ海や南シナ海をわが物顔で横行し、西太平洋でも頻繁に軍事演習を展開している。しかも公然と日本の固有の領土である尖閣諸島を 奪い取ろうとしている。そういう独善的な国に対して資金援助をし続ける外務省の認識というものは、実質的には国家反逆罪に該当するものといっていい。その外務省を、このたび外務大臣となった河野太郎氏は、「害無省」と批判している。言い得て妙である。
▼この河野太郎大臣は、思ったより「人物」かもしれない。小泉元首相が、森、麻生、安倍といった総理歴任者たちと、和気あいあい飲み会をした際に、「あいつは、意外に大化けするかもしれんぞ」と言ったそうだが、もしかしたらそうかもしれない。
▼先般、マニラの経済会合で、中国側からまたいつものくだらない、実に辟易(へきえき)とする注文や言いがかりをつけられた際に、すかさず「それよりあなたたちは、大国としてもっとまともな責任ある行動をとってもらいたい」と切り返して沈黙させたところなどは、見事であった。外務官僚のお勉強ができるだけのチャイナスクールには、とても事前に原稿として用意できるような芸当ではない。
▼この中国の野望を挫くためには、日本は当然連携を構築していかなければならない。戦略の根幹は、「仮想敵国は中国である」ということに尽きる。ロシアではないのか、という意見もあるだろう。それは違う。
▼韓国・中国と、ロシアでは決定的に違う点がある。韓国・中国は、いざとなると反日の感情に流されることがこれまでの歴史を見てきて、明々白々であるのに対し、実はロシア人というものは、対日感情がきわめて良いのである。日本人が思っているより、はるかに彼らは親日的だという事実だ。それは、ソ連時代からも一貫している。この点、日本人は認識を改めるべきだ。
▼それは、韓国がかつて日本統治下にあったこと、中国では全土にわたって日本軍が戦争をしていたのに対し、ソ連・ロシア本土というのは、日本軍によって侵略されたことが無い点も関係している。日本人を嫌う理由が、根本的に無いのである。
▼プーチン大統領自身が、心情的には日本に好意を持っており、二人の娘もサンクトぺテルスブルグ大学で日本史専攻だったということも、好都合である。(次女のエカテリーナ・プーチナは、日本語が堪能である。)
▼ところが、政府レベルになると、ロシアは確かに厄介である。北方領土という、先の大戦の負の遺産が邪魔になって、どうしても講和条約一つ結べないという状況が続いているのは確かだ。しかし、ここはどうにかしてロシアの抱き込みを図らなければ、中国の膨張を止めることは不可能である。
▼実はロシアも、中国には穏やかではない感情を持っている。それはなにかというと、中国が北朝鮮の日本海側の港湾都市・羅津を、租借しているのである。2005年から50年間だ。
▼この羅津港は、戦前日本が満州に物資輸送をする最短コースとして開発した港で、不凍港である。ソ連のウラジオストック軍港の隣にあるだけに、これを牽制する軍事的意味合いもあった。これを北朝鮮は、中国に事実上切り売りした格好になる。租借であるが、形式上だ。実質的には中国の施政権が及ぶ中国そのものだと思って良い。
▼従って、近年中国が、やたらと新潟・北海道に土地買収の大攻勢をかけてきたことも、これとの関係で見れば一目瞭然。つまり、日本海をも中国の「内海」にしようという意図は明白である。これに穏やかではないのが、ロシアだということになる。しかも、極東の橋頭保ウラジオストックの、すぐ隣だということが、またロシアの逆鱗に触れているわけである。
▼大国との連携でもう一つ言えば、インドとの連携である。こちらは、カシミールで実際、中国と武力衝突をしているから、積極的に取り込み工作が効く。しかもインドは、それまでの非同盟主義を捨てて、モディ政権になってからというもの急速に親米に傾斜しているのはご存知の通り。
▼中国の人件費などアメリカと変わらなくなってきており、ほとんどコスト安のメリットはない。ましてや日中関係が緊張して、日本品不買運動が起こったところで、大量の日本品消費者をインドやロシアで獲得していけば、中国などいらぬ存在である。すでにインドは、人口で中国を上回りつつあるのだ。おまけに中間所得層が日本の人口すら上回っている。かてて加えて、インド人は、戦争中、日本がインド独立戦争を支援したことから、大の親日である。選ぶ相手を間違えるなということだ。
▼実際、中国からは生産拠点を、現在どんどん日本本国に戻したり、繊維産業を始め中国からベトナムシフトを強めつつある。もともと、戦後日本軍将兵が大量にベトナム(当時の北ベトナム)に残留して、ベトナム戦争を効果的に指導したことから、ベトナムもきわめて親日国家である。
▼そして、一番重大な、中国包囲網の究極の1ピースは、実は台湾である。世界で最も親日的で信頼のおけるパートナーであるはずの台湾と、日本は国交がないという致命的な障害がある。が、実は関係無い。国交などというものは、名ばかりである。実質的な利害こそがすべてだからだ。
▼先に、尖閣諸島や沖縄への、領土的野心をまったく隠さなくなってきた中国のことを述べたが、台湾に関しても旧来通り「武力解放」の旗を降ろしていない。とくに、蔡民進党政権が誕生してからは、あからさまに嫌がらせを始めている。
▼台湾がかねてから、国民党政権以来の「大陸光復(奪回・反攻)」を放棄し、独立を志向しているということは間違いないが、すでに深く台湾経済が中国大陸にかかわっているという事情もあり、簡単に独立を達成することができない。
▼民意としては、圧倒的に独立を志向しているのだろうが、国際社会の同意はなかなか得られない。どこの国も中国経済という「甘い蜜」の前に、小国・台湾を見捨てるというスタンスがずっと続いているわけだ。中国が、「台湾は中国の領土だ」と主張しているからである。日本もその片棒をかついできたことは言うまでもない。しかし、一体だれが敵で、だれが味方かということを、もっと現実的により戦略的に考えれば、台湾の取り込みは必須である。
▼近年、台湾の対中国警戒感は増幅している。それは直接的な脅威である。尖閣諸島などは比較にならない。現時点で、中国軍には台湾本島への上陸作戦を行う能力はない。しかし、すでに離島を奪取する力は十分に備えている。
▼中国軍は、昨年以降、台湾への武力による威嚇も隠さなくなってきた。今年8月までの1年間、中国軍の戦闘機が台湾を一周する形で演習を行った回数は実に16回に及んでいる。毎月一回以上ということだ。
▼台湾が、独立を宣言して国際社会に復帰しようと勝負をかけてきた場合に、中国軍が一斉に台湾上陸を敢行するということは、荒唐無稽でも何でもないのである。
▼そのとき、日本人の平和主義者たちが、どう釈明するのか、どんな顔をして台湾を見捨てるのか、民意を明確に蹂躙しようとする中国の軍事行動をどう非難するのか、見てみたい気もするが、そうは言っていられない。なにがなんでも台湾を中国の併呑から逃れさせなければならない。これは、日本の存立にかかわる重大なケースだと認識すべきだ。
▼仮に台湾が失陥したら、尖閣・沖縄はほぼなし崩し的に併呑されていくことになることは明らかだからだ。日本は、中国が言う「第一列島線」を逆の意味で、中国封殺の最前線としなければならない。つまり、日本・沖縄・尖閣・台湾・フィリピン・そしてベトナムという東・南シナ海の「内輪」確保だ。
▼台湾も、国民党政権時代以来、尖閣諸島の領有権を主張しているが、本気ではない。むしろ、彼らの関心は漁業権の問題である。従って、前回の閑話休題でも述べたように、尖閣諸島にインフラを整備し、常駐者を置き、海保・自衛隊の駐屯を常時行い、国際的なマリンスポーツをはじめとする大会を開催するというのみならず、台湾の尖閣諸島海域における漁業権を認め(実際、昔は両方が仲良く漁をしていた海域である)、それを皮切りに、いわゆる自由貿易協定を二か国間で締結し、法整備・関税その他、一体化を目指すプランを提案すべきだろう。
▼国交などなくとも良いのだ。経済的な一体化と、それを共同防衛するための軍事協力は、単独の二国間条約で十分国際法上有効である。実際、同じように台湾と国交が無いアメリカには「台湾関係法」があり、これは事実上、米台軍事同盟協定である。国交がなくてもまったく問題ないのだ。
▼2012年3月、日本政府(民主党政権)は、東日本大震災の追悼式において、160の国と国際期間の代表に1階の来賓席を用意した。しかし、台湾代表に関しては「民間期間代表」という位置づけをして、2階の一般席に案内している。指名献花からも台湾と外し、羅代表は一般参加者と献花したのだ。
▼しかし、震災に際して93の国・地域・国際期間から寄せられた義援金・救援物資は合計して175億円。これに含まれない台湾は、単独で200億円を超える義援金を寄せてきてくれたのである。それも、ほとんどが民間人の募金である。その台湾に対する非礼というものは、国辱以外のなにものでもない。
▼その意味では、天皇陛下が4月の園遊会で、台湾の羅代表らを招待して、台湾への感謝を述べられている。園遊会に、台湾代表が招待されたのは初めてのことである。これでかろうじて留飲を下げた思いがしたが、先の日本政府・官僚の台湾に対する非礼は、永遠に国恥として記憶されることになるだろう。
▼戦後70年以上、「国際社会の公正と信義に信頼して」中国や韓国にいいように、してやられ続けてきた日本は、いい加減、目を覚ましたら良かろう。本当の敵は誰なのか、それは中国のみならず、国内に実は日本の存立を脅かす「利敵・敵性日本人」がいるということを忘れてはならない。それも、官僚や大企業幹部といったような、エリートたちの間に、とんでもない「食わせ物」が数多いることに、戦慄すべきである。
▼最後に、いわゆるチャイナ・スクール(親中国派)とされる人物の名をざっと、列挙してみる。国民は、この人物たちの言動が、中共の独善的国益に寄与せぬよう厳重に監視し、国策から徹底的に排除しなければならない。
(官僚)
●谷野作太郎氏
アジア局中国課長、アジア局長、第10代駐中国大使、東芝取締役。天安門事件弾圧で孤立した中共は、経済制裁を受け、経済成長率が1%に低迷。中共を救うため、天皇陛下訪中をさせた罪。さらに、2001年に小泉純一郎首相が目指した終戦の日の靖国神社参拝の中止を進言。
●浅井基文氏
台湾・米国(ハーバード大学)で中国語研修、アジア局中国課長、東京大学教授。毛沢東、周恩来が率いた中国革命の成功を支持。日米同盟を基本とした日本外交に批判的。
●阿南惟茂氏
アジア局中国課長、アジア局長、第11代駐中国大使。2002年の瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件に際しては、「人道的に問題になって批判されても面倒に巻き込まれるよりはマシ」として事件発生4時間前の定例会議で亡命者を追い返す指示をした。2005年、小泉純一郎首相宛てに靖国神社への参拝の中止を要請する内容の具申書を公電にて打電。わたしも香港に通算7年半居住し、アジア中を仕事で回っていたが、駐在員たちの間における一致した認識は、「有事に際して、絶対に日本大使館・領事館に駆け込もうとするな。アメリカ大使館へ行け。」であった。自国民すらいざとなったら平気で切り捨てるのが、日本の外務官僚であるという認識は、長年駐在員たちの共通認識だったといってよい。
●野田英二郎氏
内閣調査室次長、香港総領事、外務省研修所長、駐インド大使を経て、1991年から1995年まで日中友好会館理事長。2000年10月、文部科学省教科用図書検定調査審議会委員として審議会に参加。白表紙本としてしか公開されていなかった特定の教科書をネオナチと同一視し、一発不合格にすべきだと各委員に迫ったことを産経新聞にスクープされ、委員を解任された。背後に中国の関与が噂され、以降、教科書検定審議会から外務省関係者が続々と排除される転機となった。この人物は、その後日本労働党の機関紙などにたびたび寄稿している。
(政治家)
基本的に、民進党はかたっぱしから親中国派が多い。その他では、小沢一郎氏も同様。しかし、なにより与党が問題だ。
「靖国問題研究会」を発足させた高村正彦氏(日中友好議員連盟会長)や野田毅氏などは、典型的な親中派だ。
このほか、二階俊博氏を書かないわけにはいかない。
東シナ海の日中中間線でのガス田開発問題で、中共の強硬策を容認。断固反対の麻生氏と衝突した経緯がある。しかも、当時、経済産業大臣中川昭一経産相は帝国石油に東シナ海ガス田の試掘許可を下ろしたが、後任として二階氏が経済産業大臣になると試掘は中止された。日本はダメだが、中共ならよいということだ。この認識は、反国家的と言わざるを得ない。このほか、当時の温家宝首相に国会演説させようと手引きしたのも二階氏である。余罪はいくらでもある。反日・江沢民元主席が自筆で書いた「登高望遠睦隣友好」との揮毫石碑の建立を計画。併せて「日中国交正常化30周年記念碑」の建立を計画。その石碑を新東京国際空港をはじめ、全国に建立する画策に奔った。
▼いわゆる日中友好議員連盟に名を連ねる人士の中には、「本物」の親中派もいる一方で、それほどの主義主張があるわけでもなく、つきあいで名を連ねただけだという人もいるだろう。ただ、特定の国に対して、友好議員連盟などというものをつくること自体が、そもそもどうかしている。
▼一方、中共も着々と日本の政界に工作を続けている。自民党の若手親中派のリーダー・小渕優子氏もその標的にされていると言われる。中共は、いわゆる親中派だった先代の政治家の師弟、いわゆる二世議員たちを標的として、親中派勢力の拡大を意図している。
▼もっと、先に挙げた河野太郎外務大臣のように(父洋平氏は、親中国派の典型的な重鎮の一人である)、「わたしは父とは違う」と言い、対中政策では舌鋒鋭いところを見せていることから、あながち二世議員とはいえ、親譲りの親中国派であるとはかぎらない。が、中共はあらゆる手立てを講じて、日本国内に親中派の増殖を計っている。徹底してこの意図を破砕しなければ、国が危うい。
増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄
増田足15日間無料お試しはこちらから
https://secure.masudaasi.com/landing/pre.html?mode=cs