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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第131回・政争の具

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【閑話休題】第131回・政争の具

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-09-06 17:30:00]

【閑話休題】第131回・政争の具


▼オリンピックが、昔から政争の具とされてきたことは言うまでもない。古くは、1936年のベルリン・オリンピックだが、これなどは明らかに当時のドイツ第三帝国(ヒトラーのナチズム)の国威発揚・威武喧伝に最大の効果を発揮した。

▼事の真偽は定かではないが、ベルリンの前のロサンゼルス大会において、乗馬で金メダルを取った西竹一(陸軍軍人。のちに硫黄島で戦死)が、ベルリン大会ではドイツの選手を勝たせるために、わざと落馬したといったようなことがさんざん取り沙汰されていた。それくらい、不自然な落馬だったそうだ。

▼古代ギリシャで始まったオリンピアードが衰退していったのは、全市民皆兵体制の軍事都市国家、スパルタを排除したことが一つの大きな要因だったとも言われているが、こうした政治的なパワーバランスの駆け引きに、オリンピックが使われることは、避けられないのだろう。

▼現在、2020年の夏季オリンピック・パラリンピック開催地を巡って、さまざまな取り沙汰がされている。開催地は東京(日本)、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)に絞られている。結果が明らかになるのは、日本時間9月8日未明(早朝5時頃)だが、一筋縄でいかない状況だ。

▼まずトルコだが、3国のうちもっとも頭にきているのはこのトルコだろう。国内の内紛を抱えている上に、隣国のシリアでは化学兵器の使用疑惑が浮上するほど内戦が激化しており、開催地のカードを得るには、かなり困難な状況に追い込まれてしまった。

▼だからであろうか。米国の軍事介入が「警告」という意味で、限定的な行動になるという方針表明に対して、噛みついている。「軍事介入が、一日で終わるようなものでは済まされない。あくまで、アサド政権の崩壊に導くようなものであるべきだ」と、激烈な強硬派と化している。

▼トルコとしては、なんとしても短時日のうちにシリア問題に決着をつけさせ、イスタンブールでのオリンピック開催に持っていきたかったのだろう。ただ、あまりにも時間がなさすぎた。それで、こうなったら徹底的にやってやるということなのだろうか。

▼一方、スペインだが、これはこれで、サマランチ前IOC会長の息子がスペイン開催に執念を燃やしている。おまけに、ユーロ経済圏としては7四半期ぶりにプラス成長へ転換したところだけに、なんとかここで脆弱なスペイン経済のテコ入れを図りたい意図があるだろう。ただ、1992年にバルセロナ大会があったばかりだから、「またスペインか」という問題がないわけではない。

▼翻って日本は、東京電力福島第一原発の汚染水問題が、大変なマイナス要因となっていることは周知の事実。政府は7日(現地時間)の決定前に、この問題に関する対応・処理のガイダンスを急いだが、どうにも遅きに失している。日本に比べて、とくに欧州での問題の取り上げ方は、連日トップ記事になっているように、まったく温度差が違う。ある意味、意図的に問題視しているのではないかとさえ、うがった見方をしたくなるほどだ。

▼ここに、面白い話がある。これは、当研究所の奥原氏が見つけてきた話題なのだが、実は、2020年大会の次、つまり2024年大会の候補地として、フランス・パリが想定されているのではないか、という話だ。

▼パリは1924年が最後で、以来一度もオリンピックを行なっていない。ちょうど2024年というと100周年記念になる。もちろん、まだフランスは手を挙げていないし、あまりそうした声があるわけではないらしいが、十分に考えられることかもしれない。

▼そして、フランスが2024年の開催を狙っているとしたら、2020年、2024年と欧州開催が連続することは考えられない。フランスとスペインの政治力からすると、どう考えてもフランスのほうが圧倒的に強いだろう。そうだとすると、2020年のスペイン開催という線はなくなる。

▼あまり希望的観測で考えても、ハシゴをはずされたらがっかりするだけなので、このへんにしておこうと思うが、なにしろ健全なスポーツに仮託された、壮絶な政治闘争の場であるのがこのオリンピック招致問題だ。政治力という点ではあまりにも見劣りする日本が、果たして開催地の切符を手に入れることができるか、大変注目されるところだ。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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