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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第151回・張りぼての日本

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【閑話休題】第151回・張りぼての日本

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-10-08 18:00:00]

【閑話休題】第151回・張りぼての日本


▼日本の建築物は耐久年数が30年、米国は70年、英国100年と俗に言われたりもする。だが、実際には建築技術や素材の向上によって、日本の建築物が米欧に見劣りすることはない。早稲田大学の研究チームが行なった調査によると、日本の鉄筋コンクリート製住宅と木造住宅を比較した場合、その耐久年数は50年前後とほとんど変わらない。それどころか、ものによっては木造のほうが耐久年数が長かったりする。

▼ところが、である。米国の全住宅の初期投資金額と、現存する住宅ストックの評価額では、後者が上回っているという驚愕的な事実がある。一方日本では、後者(現存の住宅ストック)は前者(全住宅の初期投資金額)より500兆円も少ない。これはいったい、どうしたことか。

▼答えは、経年劣化による減価償却という間違った考え方のためだ。日本では、新築から1年経過するごとに、経年劣化が評価額から減額されていく。20~22年くらいで、建物自体の価値は事実上ゼロになる。

▼ところが、米国ではリフォームやリノベーションなどの補修を行なうことによって、評価額が上積みされる。やり方によっては、新築以上の評価額も可能になる。そもそも、欧米の住宅の世界では圧倒的に中古住宅が主力だが、米国ではとりわけこの分野の流通が活況だ。それに引きかえ、日本では中古住宅が落ち込んでいる。

▼そもそも日本では、建物というのは朽ちていくもの、という前提がある。だから、補修も最低限のことしかしない。結果、価値は減額され、流通もしにくくなる。ところが米国では、建物は補修によって評価価値が改善され得るという前提がある。だから、価値(建物の品質)は保たれ、流通も活況を呈する。

▼こうしたことを考えると、日本の長いデフレは、間違った不動産の評価方法が一因になっているとも言える。このような間違いがまかり通っているのは、現状をけっして変えようとしない役人がその元凶ではあろうが、使える資源の有効活用が、まったく出来ていないという現実に行き着く。

▼こうした誤謬(ごびゅう)の大前提になっているのは、日本人に根強い土地の絶対神話であると言われる。しかも、これは戦後より顕著になった。戦前はそこまで極端ではなかったようだ。確かに、国土の90%が原生林であり、平野部が少ないという国情はある。だが、それを口実にした現状を打破するためには、幻の土地神話というものを打ち消す必要がある。

▼上モノ(建築物)に対する鉄筋コンクリート製の優位神話、評価価値の減額神話など、あらゆる不動産にかかわる神話を、ひとつずつ取り壊していかなければならない。あたかも、「張りぼて」のようなものとしか思っていなかった日本の住宅について、私たちが戦後信じてきた多くの常識を、覆されなければならない時期にきているのだ。

▼そういう意味では、民放の「ビフォー・アフター」などという番組は、日本人の不動産に対する既成概念に革命を起こす、見事なくさびの役割を果たしているかもしれない。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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