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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第156回・食糧が足りない?

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【閑話休題】第156回・食糧が足りない?

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-10-16 18:30:00]

【閑話休題】第156回・食糧が足りない?


▼今年は松茸が豊作で、3割ほど価格が下落しているそうだ。しかし、日本国内の松茸消費量に占める国産の割合は、わずか5%にすぎない。とくに、香りが珍重される食材だけに、圧倒的に国産のほうが人気がある。

▼松茸に限らず、食べ物の国産か輸入物かは、つとに話題になる。かつて、昭和30年代、日本の食糧自給率は78%だった。今それは39%に落ち込んでいる。品目によって過不足はあるのだが、総合的なデータだけで比較すると、カナダの自給率が223%、豪州が187%、米国は130%、フランスが121%と余剰分がある。これらの国は、純然たる農業大国といっていい。

▼一方、100%の自給率には達していないが、健闘していると言えるのがドイツで93%、スペインが80%だ。土地が痩せていると思われる英国でさえ65%。あんな北国でと思いがちなスウェーデンでも79%あるが、これは人口そのものが少ないためだろう。ちなみに、イタリアは思いのほか多くなく59%にとどまっているが、グルメ大国(?)だけに食い過ぎるのかもしれない。

▼ところが、韓国の食糧自給率は40%、台湾が32%と日本とたいして変わらない。中国・インドはおおむね100%前後で推移しているようだ。

▼こうしてみると、多くの人はこう信じているはずだ。「日本の食糧自給率は低い」「世界的食糧危機が将来やって来るから、日本は食糧自給率を高めて備えなければならない」「日本の農業は弱く、保護しなければ崩壊してしまう」等々。しかし、もしそれが、でっちあげの大嘘とは言わないまでも、何か計算の仕方が間違っているとしたらどうだろうか。

▼実は、上記で挙げた食糧自給率は、カロリーベースの数字である。生産高ベースに直すと、じつは日本の自給率は66%と海外諸国に見劣りしていない。そもそも、カロリーベースという指標を、国策(農水省)として使っているのは、世界広しと言えども日本だけらしいのだ。

▼ではなぜ、農水省はそんな計算を敢えてしてきたのだろうか。よく分からないが、けっきょく農産物の増産とかいう話にでもしないと、予算が余計に取れないからではないのか。農水省に対しては、やや酷な見方かもしれないが、ほかに納得のいく理由があるのだろうか。

▼確かに、おかしなことに気づくことがある。新聞などを読んでいても、日本の農業生産額は約8兆円で、ランクは世界5位だと記憶しているから、かなりのものだろう。農業大国と言ってもいいはずだ。先の生産額ベースでみると、主要先進国の中では驚くべきことに3位である。一方、農産物の輸入は約5兆円。何か変だ。何かが間違っている。

▼専門家ではないから、いったい何が本当なのか、こうなると皆目分からなくなってくる。たとえば、世界的な食糧供給不足という大きな問題だが、これも供給量そのものは、人口の増加ペースよりも高い水準で増大している。過去40年間の人口増加率は190%だが、穀物の増産率は215%であり、25%分も上回っている。そのためかどうか知らないが、2009年の時点で世界の穀物在庫は、消費量の約20%に及んだという事実がある。足りないどころか、むしろ過剰な生産と在庫ということにはならないのだろうか。

▼もともと、この食糧供給の危機意識というのは、18世紀の経済学者マルサスが書いた『人口論』で、「人口は幾何級数的に増えるのに、食糧は等差級数的にしか増えていかない」と書いたことがもとになっている。幾何級数的な増え方とは数倍の勢いで増大するさま、等差級数的な増え方とは隣りの項との差が常に一定になる増え方(例:2→4→6)である。これが現在の食糧危機説、終末論に結びついているのだが、マルサスのこの理論は立証されたためしがない。

▼考えてみれば、話は単純なことだ。食糧が増えなければ、人口は増えるわけがない。素人的にはそう考えてしまう。どうして、食糧より先に人口が増えるのか、なぜ、食糧危機が急速に訪れるのか、おかしな論である。しかも、誰もこれに納得できる答えを教えてくれない。

▼そういえば、自民党は最近、マニフェストなどを見る限り、「自給率」に関する記述をなくしている。いまだに、自給率向上と声高に叫んでいるのは、民主党、共産党、公明党、みんなの党ばかり。社民党は、そもそも存在しているのかいないのか。

▼はっきりしていることは、農政というものは農家を保護することでも、消費者を保護することでもない。それも分からない農水省なら、いちど解体してしまえばよい。

▼こうした当局やメディアの出すデータというものは、鵜呑みにしていいのか、実に疑問が残る。アメリカ発の、「地球温暖化」という危機論もそうだ。私は昔から、現在は1万年サイクルの間氷期にあり、今後寒冷期がやってくると教わってきた気がするが。

▼しかし、今やそんな話はどこかに飛んでしまって、やれCO2だの、海面が上昇しているだのと大騒ぎだ。確かにそういう側面はあるのだろう。地球という壮大な質量をもった大自然に対して、たかだかちっぽけな人間のやることが、そんなに影響を与えられるものなのか。太陽系の中で繰り返されるこの1万年サイクルの間氷期・寒冷期(氷河期)が、いとも簡単に狂ってしまうものなのだろうか。

▼そんなに人間のすることは凄いのだろうか。私などは、どうしてもそのような疑問が頭から離れない。けっきょくエコだとかなんとか言って、誰かが、あるいはどこかの国がボロ儲けをするための口実ではないか、などとどうしても体を斜に構えてしまう自分がいる。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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