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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第17回・ドルの基軸通貨性

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【閑話休題】第17回・ドルの基軸通貨性

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-03-26 16:45:00]

【閑話休題】第17回・ドルの基軸通貨性


▼為替市場が大いに荒れている。以前と違い、中長期的にはダイナミックなドル高・円安トレンドが始まっていると、誰もが思っている。そのつど揺り戻しはあるが、直近ではドルが96円台から93円台まで、一気に反落するなどしているので、冷水を浴びせかけられた、というところだろうか。

▼株という世界は、やらない人にとっては、まったく関心の外だ。しかし、不思議なことに為替が動くと、誰もがこれを話題にする。やはり、海外旅行をはじめとして、実生活に直結する部分があるからだろうか。ドルやユーロの値動きを、ふだん経済の話をしない人までが口にするので、最近驚くことが多い。

▼海外に長いこと居住していたことがあるので、アメリカ人に「ドルの基軸通貨性」のことをしつこく尋ねていたころがある。経験から言えば、アメリカ人は誰一人として、「ドルが国際基軸通貨である」という概念をもっていない、ということだった。それもそのはず、彼らにとっては、ドル以外に通貨など存在しないのだ。ドルの国際基軸通貨性が崩れるとか騒ぐのは、非アメリカ人ばかりである。実際、世界の貿易量の9割以上がドル決済なのだから、反論する余地もないのだが。

▼しかし、とその後考えた。もし、アメリカ人がまじめにドルの基軸通貨性を考えるとしたら、どんな局面なのだろうか、と。思い当たるフシはあった。原油である。なにより原油がドル建てでしか決済されない、という事実がある。
これだけは、アメリカ人にとっては決して譲れない点だろう。

▼すべては原油からつくられる。経済の基盤はこの原油価格がベースだ。世界中の国が原油を輸入する際、頭を悩ませるのが、為替差益・差損というリスクだ。世界で唯一、アメリカだけがこのリスクから免除されている。政府にしろ、企業にしろ、このリスク免除による政策や判断の選択肢の自由度が大きいということは、決定的な優位性につながる。

▼イラクのフセイン政権を崩壊に導いたアメリカだが、その大義名分は大量破壊兵器の問題だった。それは後に、事実ではないことが明らかになったが、もはや誰も問題にすることはない。ホメイニ革命によるイスラム原理主義を封じ込めるため、イラクは欧米の意を受けて、イランと7年にも及ぶ代理戦争を遂行した。しかし、見返りはなく、戦争中の援助は結局、借款になってしまった。

▼イラクは唯一の収入源である原油の価格値上げを訴えたが、欧米は景気に悪影響があるとして却下。イラクに残されたのは、ドル以外の通貨で(つまり、闇で)原油を輸出するという一手だった。これに激怒したアメリカが、強引に戦争に持ち込んだ。これが偽らざる開戦の実相だった、とも言われる。ここに、ドルの基軸通貨性は、如実に浮かび上がってくる。逆鱗に触れたイラクは、不幸な結末を迎えることになった。

▼いま、時代は原油からシェールガスへと転換しつつある。アメリカはかつての原油と違い、埋蔵量のほとんどが北米に集中しているこのシェールガスの実用化に成功した。資源戦略は根本的に変わっていくことになるのだろう。ドルの基軸通貨性という言葉は、そのうち死語と化してしまうときがやってくるのかもしれない。

増田経済研究所
コラムニスト 松川行雄



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