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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第190回・ニュースの正体(後編)

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【閑話休題】第190回・ニュースの正体(後編)

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-04 18:45:00]

【閑話休題】第190回・ニュースの正体(後編)



▼ではもう一つ、中国がなぜ今突如として防空識別圏を設定したのか。それは、中国国内問題から、国民の目を外に向けさせるためである。これまた常套手段だと言っていい。直前に国内で何があっただろうか。そう、山東省青島における、石油パイプライン爆発事故だ。50人前後が死亡、166人が負傷ということになっているが、死亡者だけでも100人を超えているのではないか、と取り沙汰された。その後、現場に入った記者の話などから、数百人単位の犠牲者が出ている可能性があるとも報道されているが、一切詳しい被害状況は不明である。

▼この事件は、まさに防空識別圏設定の前日、11月22日に発生している。慌てた当局は、中国国内のメディアにこの事件をスルーさせるために、翌日、急遽防空識別圏を設定。その後、初の空母遼寧(りょうねい)を出向させて、同海域でにわか演習を行なわせたのではないか、というものだ。

▼青島の爆発事故は、お粗末な偶然か、それとも意図的だったのか。パイプラインの破損、石油の流出が発覚してから、付近住民の避難勧告をしていない。未明から修理をしていたが、数時間後に爆発。退去が始まったのは、流出発覚から7時間後のことだ。すでに2000トンの石油が海に流れ出している。

▼もともとこの石油パイプラインは、一般住宅地からずっと離れていたようだが、都市化が進み、今では密集する住宅地と埋設パイプラインが隣り合わせという恐るべき状況にあった。しかも、これまた偶然だろうか、貴州省で同じシノペック(中国石油化工集団)の石油パイプラインが、高速鉄道建設現場で損傷事故を起こしたらしい。27日のことである。1週間に国有石油公社のパイプラインが、立て続けに事故を起こしている。

▼この爆発事故の前には、ご存知のように三中全会(中国共産党中央委員会全体会議)があった。ほとんど何も決まらなかったに等しいお粗末な結果だったが、漏れ伝わる話では、内部では壮絶な権力闘争が行なわれていたらしい。

▼その権力闘争とは、習近平を主席に立てて、これまで培った利権を享受し続けようとする江沢民ら「上海閥」と、前政権の主席だった胡錦濤(こきんとう)ら「改革派」の全面衝突という見方がある。胡派は、未だに政治局員の過半を占めており、習派の対外強硬路線、国内への締め付け強化路線、何より汚職の摘発に焦点を定めている。

▼この汚職摘発こそは、国民が最も憤懣(ふんまん)やるかたない問題であり、改革派も体制派もこの摘発と隠蔽に大わらわだ。一番象徴的な事件になってきているのが、四川省で権勢を振るい、収賄と殺人の容疑で追及され、裁判となった薄煕来(はくきらい)のことはご存知であろうか。あの人物と親しかったのは周永康(しゅうえいこう=前政治局常務委員)であり、その黒幕は江沢民である。

▼五月に、中国石油(CNPC)最高経営責任者の蒋潔敏(しょうけつびん)が査問されたというニュースが流れた。蒋潔敏といえば、第18回党大会では中央委員入りしている大物である。査問の内容は、2010年度の同社決算で輸出入の数字が操作された形跡があるとされたものだ。輸入金額が不当に高く、反対に輸出金額が安すぎたのだ。原油を輸入し、加工した石油製品を輸出するケースで、1トンあたり百ドルの価格差があった。これが、帳簿から消えていたのである。

▼そして、同社の子会社の一つが「シノペック」(青島でパイプライン爆発事故を起こした会社)だ。さらに、この子会社が100%出資している孫会社がいくつもあって、とくに海外に設立した子会社「中国石油国際事業有限公司」が、こうした不正行為の操作も元締めと言われた。同社を通じて差益が海外へ隠匿され、ごまかした金額は650億米ドル( 6兆5000億円)になる。

▼捜査の過程で発覚した事実は、CNPCの子会社(ペトロチャイナ)がハルビンに設立した孫会社は、まさに汚職・腐敗の伏魔殿だったことだ。なにしろ石油会社がナイトクラブを経営し、ロシア人美女を多数抱えていた。そればかりか、接待に日本旅行をたびたび催行、日本ではAV女優らが接客し、豪遊を重ねていたという。ほかにも北京郊外に豪華ラブホテルを経営、酒池肉林の場を設けて幹部のハーレムを築きあげていた。

▼中国全土では、共産党幹部とその師弟(共青団出身にしろ、単なる二世、三世にしろ)たちが、各種公団のトップに君臨し、家族もろともこれに巣食っている構図がある。これは何も江沢民派だけではない。前政権の関係者もみな、同じ穴のムジナだ。一方で、共産主義国家にもかかわらず、大学出身者でさえ就職先が見つからない。巷では今、怨嗟の声が満ちている。

▼江沢民派が牛耳る石油産業へのメスは「氷山の一角」に過ぎないが、これも権力闘争に使われている材料に過ぎない。改革派がこれを激しく追及するのを、もとより江沢民派である習近平主席が、必死で防いでいるという格好であろうか。

▼こうなると、青島のパイプライン爆発が“偶発的な事故”なのかさえ、疑わしい。改革派による作為的な事故である可能性もあるわけで、いったい何がどう絡み合って、何を目的に、どう決着をつけるつもりなのか、皆目見当もつかない様相を呈している。ただ、もし防空識別圏の突然の設定が、国内的な要因だったとするのであれば、「壮絶な権力闘争」から国民の目をそらすのに、これは格好の隠れ蓑だということになる。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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