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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第195回・幾何学的な美

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【閑話休題】第195回・幾何学的な美

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-11 18:45:00]

【閑話休題】第195回・幾何学的な美



▼形状の美しさは、きっとある真実を伝えている。よく知られているのは、黄金比であろうか。これは線形力学的には最も美しく、最も堅固であると言われる比率である。もともと、フィボナッチという中世イタリアの数学者が導き出した、「フィボナッチの特殊数列」を用いたものだ。

▼黄金比とは、1:( 1+√5)/2で導かれる。近似値は1:1.618。約5:8に相当する。最も美しい比とされる貴金属比の一つ(第1貴金属比)だ。レオナルド・ダ・ヴィンチも発見していた記録が残っている。

▼1202年にフィボナッチが発行した『算盤の書』(Liber Abaci) に記載されたことで「フィボナッチ数」と呼ばれているが、それ以前にもインドの音楽家であるヘマチャンドラが和音の研究により発見し、書物に記したことが判明している。

▼ちなみに、この数学者、フィボナッチと一般に呼ばれているが、本名はレオナルド・ピサノという。彼の父親がボナッチという名だったので、その息子という意味のフィボナッチと呼ばれるようになったそうだ。本名が普及しなかったのは、なんとも気の毒な話ではある。

▼ところで、その特殊数列は以下のように示される。
0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,987,1597,2584・・・・・・・・・・
0と1に始まり、隣の数と足し算すると、次の数になる。0+1=1。次は、1+1=2。さらにその次は、1+2=3。と、延々と続いていく数列だ。数列の個々の数は、まったく無関係のように見えるが、このように隣同士の2つの間には隠された関係がある。それは、隣同士の数の比をとると、その比が次第に黄金比に近づいていくという性質だ。隣同士を割り算した答えが、右に行くにつれて、どんどん黄金比に近づいていく。つまり、フィボナッチの特殊数列の隣同士の数の比は、黄金比の近似値が並んでいるということになる。

▼この黄金比は、自然界に日常的に見られ、生物の形を考える上で、大変重要な意味を持つ。生物の成長、あるいは生物の一部分の成長(爪、髪、角、甲羅など)の様子を見ていると、 少し伸びても全体としての形が変わらないよう、常に相似形を保ちながら伸びていく。その伸びた部分が空間を隙間なく充填するとき、黄金比の長方形と対数螺旋(らせん)が浮かび上がってくる。

▼自然界の生物における現象は、その環境や進化の過程により多種多様だから、すべてがこの規則や性質を持つのではない。例外はたくさんあるだろう。しかし、その奥に潜むルールは共通しているかもしれない。

▼ひまわりの種、バラの花びら、松ぼっくりなどの螺旋には、この黄金比を見ることができる。また、木の幹を上から見たとき、枝と葉が黄金角ごとに生える様子を示している。葉が多く茂っても、重なり合う部分が少ないことに気づく。これは、枝分かれについても黄金比が関連しているからであり、幹の周りのどの方向に枝を出すかに関係している。

▼木は、自分の枝の葉が上からの太陽光線を最大限に受けられるように、最適な格好で枝を出す傾向にある。最初に出した枝から、ある一定の角度で次の枝を出すとすると、どんな角度がよいだろうか。それは1周360°を黄金比に分けた角、すなわち黄金角ごとに枝を出すのが最適なことだと言われている。

▼オウム貝などは最も美しい自然界の螺旋だが、貝の巻き込み点を中心に黄金比を持つ長方形を縮小しながら回転すると、常にその中に対数螺旋を内包する。言い換えれば、黄金比に内接する対数螺旋は、どこで切ってもそれに外接する黄金比を持つ長方形が存在する。どの内接点、外接点を結んでも、相似曲線が現れるのだ。

▼この現象は細胞の分裂、動物の交配による子孫継続など、生物界の随所に見られる。日常生活の中にも、名刺の縦横の比率、スポーツカーのトレッド(輪距)とホイールベース(軸距)の関係、パルテノン神殿やピラミッドといった歴史的建造物にも黄金比が垣間見られる。

▼このフィボナッチの特殊数列と、そこから割り出される黄金比は、投資運用の世界でも使われている。エリオットの波動論も、ベースはこの黄金比である。近年ではアルゴリズム(algorithm)だ。アルゴリズムというのは「算法」とも訳されるが、解法(問題を解く方法)への手順である。黄金比はアルゴリズムの世界の中で、とくに「探索」の場面で重要な役割を果たしている。

▼例えば、1本道の地下に埋設された水道管のどこかに、「穴が空いて水漏れをしている箇所がある」としよう。そこはAとBの区間内にあることは分かっているが、それが何処なのかまでは特定されていない。そこで、観測点とした地面に好感度のマイクを当てて、水漏れの音を聞きながら穴の場所を特定していく。具体的には、区間ABを黄金比に内分する視点で測定し、次に水漏れのある側をさらに黄金比で内分していくのだ。これを繰り返しながら区間を狭めていくと、最も少ない手順で目的の場所が特定できる。

▼こうした分析法をコンピューターにプログラミングし、高速回転で最適化。これらのデータを売買判断に直結させたアルゴリズムが、運用の世界では実際に用いられている。果たして、運用の世界でそれがどれだけの確率で、どれだけの利益を生み出すのか定かではない。自然界に数多く見られる「傾向」を、市場原理に当てはめることが有効なのかも、分からない。ただ、チャートを見ていて思うのだが、「強いチャート」は必ずしも美しいチャートであるとは限らない。しかし、美しいチャートは必ずと言っていいほど、「強いチャート」になっている。仮にそれが黄金比に則したものではなかったとしても、なんらかの“自然の法則”が内包されている可能性は高い。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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