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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第194回・血統を継ぐということ

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【閑話休題】第194回・血統を継ぐということ

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-10 18:45:00]

【閑話休題】第194回・血統を継ぐということ


▼儒家の始祖・孔子(紀元前552~479年)の子孫と称する人は数多い。話によると400万人を超えるそうだ。中国出身の作家・孔健(コウ ケン)氏は、孔子の直系75代と名乗っている。それが直系かどうかは別としても、孔子の血統が続いていたとしたら、それこそ大変な子孫の数だろうということは、おおよそ見当がつく。

▼各世代ごとに、いったい何人子供が生まれれば、400万人まで増えるのだろうか。そんな暇な計算をした人によると、1世代で平均2.13人の子供が生まれれば、76世代目の子孫は合計440万人になるという。

▼ところで、現生人類は約16万年前の“一人のアフリカ女性”に辿り着くことが判明している。これは母系遺伝する「ミトコンドリアDNA」の調査によるもので、以前にもこのコラムで触れた。だとすれば、1組のカップルから100億人にまで増加する「世代増加率」はどうなるか。同じ計算によると、次世代を担う子供の数は2.009人となる。わずかこんなに少ない増加率でも、16万年後には100億人にまで増えるのだ。これには一驚する。

▼しかし、それはあくまで計算上のこと。歴史や人生というものは、なかなかそのとおりには運ばない。たとえば、いい例が徳川家であろう。幕府そのものは260年間というきわめて長い歴史を打ち立てたが、将軍の血統を見てみると、徳川家康の直系はわずか3代で終わってしまっている。あれだけ大奥という合理的な“生殖システム”を設けていながら、あの程度だ。それには不運な出来事やさまざまな策謀なども影響したのだろうが、いかに直系をつなげていくのが難しいか、ということを思い知らされる。

▼日本の天皇家も、表向きは万世一系とされているが(その意味、定義にもよるが)、実は血統が途中で、なんども寸断されているとの憶測も根強くある。「万世一系でなければならない」という皇国史観的な結論から、歴史が改讒(かいざん)されている可能性も否定できない。民間の歴史研究では、天皇の名前に「神」の字がつく場合が、全125代の天皇のうち3者だけ存在する。神武(初代)、崇神(第10代)、応神(第15代)の3者だ。

▼神武以前に、原大和朝廷が存在したことは確実で、それがスサノオの第5子・ニギハヤヒ(天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊。大物主、別雷尊、大歳命などの別称ありとされる)の王朝だと仮説されている。このことは、当コラムでも書いたことがある(第81~82回「日本のダヴィンチ・コード」参照)。その後、神武から王朝が始まったということは、裏を返せば、すでにそこで一度王朝の断絶があったことになる。

▼これを類推すると、後の祟神、そしてさらに後の応神と、神の字のつく諡(おくりな=死後に奉る名)を持つ天皇のときに、また新たな王朝にとって代われた可能性は高い。つまり、天皇家は少なくとも3回、王朝が交替した可能性があるということになる。実際、祟神、応神両天皇の前後では、文化・文物・政策が、がらりと変わってしまった形跡がある。

▼もっと言えば、神武、祟神の二人の天皇は、日本書紀などには、どういうわけか同じ呼び名が別にある。「はつくにしらすすめらみこと」だ。その意味は、なんと「初代天皇」という意味である。現代風に書き換えれば、「初代国家支配天皇」とでもなるだろうか。これでは、初代天皇が二人いたということになる。ここで古代史を詳しく探ってみようというわけではない。ただ延々と血統を継承していくということは、それほど困難なことであり、「生半可なことではない」ということだ。

▼こう考えていくと、一つのことを受け継いでいくことも、血統と同じように“大変な事業”だということが分かる。合理性を尊ぶことは良いにしても、ただ古いからといって、なんでも改めてしまう現在の風潮に抵抗を覚える今日この頃。「古いもの」や「昔からあったもの」には、それが続かなければならない理由、あるいは続けなければならない理由が何かあるのではないか。そう考えたほうがいいと、心底思う自分がいる。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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