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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第201回・夢の向こう側

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【閑話休題】第201回・夢の向こう側

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-19 18:45:00]

【閑話休題】第201回・夢の向こう側


▼「最近、夢見てないんだよね」と、自分でもよく言ったりするのだが、どうやら夢というものは誰でも毎日見ているらしい。いつ見ているのかというと、レム睡眠とノンレム睡眠のうち、レム睡眠のときに夢を見ているのだ。

▼ちなみにレム睡眠とは、「浅い眠りで身体は深く眠っているのに、脳が活発に動いている状態」のこと。トイレに起きやすくなったり、物事で目が覚めやすくなる。“金縛り”にあいやすいのも、このときだ。一方のノンレム睡眠は、深い眠りで脳も身体も休んでいる状態のことだ。筋肉は働いているが、ストレスを解消できる。「居眠り」のほとんどが、このノンレム睡眠である。

▼ところで、夢をなぜ見るのかについては、結論が出ていない。「このところ夢を見ていない」と思っている人も、忘れているだけで何らかの夢は見ているのだ。

▼若い頃(学生のころだったかと思うが)、この「夢を見ること」に興味を持ったことがある。それで「夢を見た」と思った朝、起きたらすぐ、そのイメージを言葉にしてメモ帳に書き綴ったことがある。起きた直後でないと、夢の内容はすぐに忘れてしまうのだ。後日それを読み返してみると、実際そんな夢を見たのかと不思議な内容も多い。

▼しかし、この「夢日記」はあまり続けないほうが良いみたいだ。私自身、当時がなんだかおかしくなってきた気もしたのだが、実際、あまり真面目に根をつめて続けると、精神に悪影響を与えることもあるらしい。

▼夢については、昔から多くの人たちによって研究されてきたが、心理学的なアプローチをしたのはオーストリアの精神科医、フロイトが最初だった。その結論は、「夢は実生活で抑圧された願望の表れである」というものだった。抑圧された願望(ストレス)は自然に消えるものではない。ストレスが無意識にたまり、その中で抱え切れなくなると精神に異常をきたす。フロイトは、患者の見た夢の内容からその人の精神状態を解析し、多くの患者を救った。

▼フロイトの研究は、最終的に一つの説にたどり着いた。性のエネルギーこそが人間の活力源になっていると考えたのだ。分析の結果、その抑えられた欲望が性欲であり、それがしばしば色々な形をとって夢に出てくると解釈した。男性の性器はステッキや棒などによって、女性のそれは靴やスリッパ、そして性行為は踊りや階段の昇降などによってイメージされるらしい。

▼このようにフロイトは、夢に出てくるほとんどのものが性的なものに分けられると考えた。万事この調子だから、フロイトの夢分析が多くの人に衝撃を与えたことは想像できる。ところが、フロイトがなんでも性に「こじつけた」ことに対して納得できなかったのが、弟子のユングである。

▼現代心理学に決定的な影響を与えたフロイトとユングだが、二人は結局、袂を分かつに至っている。「夢は抑圧された願望の表れ」と言っていたフロイトに対してユングは、「夢は未来を予知したり、過去や未来からアドバイスを送っている」と考えた。無意識の下に隠された願望や欲求は大きなエネルギーになり、色々なことを夢が教えてくれるのではないかと考えたのだ。フロイトは無神論を支持したが、ユングは神の存在に関する判断には、一応科学者らしく、判断を保留した。

▼ユングが分けた夢の6つのシンボルは、以下のようなものだ。

グレートマザー(母親的なもの)
ワインズマン(父親的なもの)
アニマ(男性が抱く女性像)
アニムス(女性が抱く男性像)
シャドウ(自分とは逆なもの)
ペルソナ(自分自身)

この6つの要素が人間の心理的な部分を成長させていくと考え、このバランスが崩れたとき心理的に追い込まれたり、病気になったりすると結論づけた。つまり、夢に出てきたシンボルがどの部類に値するか、そしてその部分を分析・解消することによって、明るく楽しい人生を過せると考えた。

▼夢分析におけるフロイトとユングの最大の相違点は、フロイトが性的なイメージを文字どおりに受け取ったのに対して、ユングはそれを最終的には、霊的シンボルとして解釈しようとした点にある。フロイトは無意識を「意識の隙間・暗部」と科学的に堅く捉えたのに対し、ユングは「意識と統合して人格を完成させる対象」ともう少し前向きに見た。

▼この結果、精神分析の大家である先生と弟子は、時ならずして決別する。ユングはフロイトの性欲理論に違和感を覚え、一方フロイトは、ユングがオカルトに傾斜するリスクに警鐘を鳴らした。フロイトは、スピリチュアル(霊的)なものは人間の弱さからくる神経症のようなものだと考えた。ユングはこれに対して、霊的存在にむしろ人間の心理をとく鍵があると信じた。

▼ところが、ユングは晩年まで長いこと、「幽霊」の存在や「魂の死後存続」には疑問を持っていた。「霊」というのは心理的な現象で、「普遍的無意識の投影」であると考えていたのだ。しかし、晩年、泊まった宿で、典型的な「幽霊体験」をしたことをきっかけに、「霊」の存在や「魂の死後存続」の問題は無視できないとの発言をするようになった。

▼典型的な「幽霊体験」とは、ユングの泊まった部屋に夜な夜な「幽霊」が現れて、いろいろ苦しめられたというものである。ユングは、出るはずのない足音やドアが開けられる音などを聞き、「幽霊」(老女)そのものの姿をも、鮮明に「この目で見て」しまったのだ。

▼ユングは、そのことを宿の主人に話し、いろいろ問い詰めた。しかし、宿の主人は、「まさかと言って」認めなかった。ところが、あるとき、主人の娘たちが、あの部屋にはよく「出る」ことを白状し、「よく何日も泊まっていられるね」と言われる。

▼ユングは宿を紹介した知人の教授にも、その部屋で泊まってみることを薦めたところ、知人も同じような現象を体験したのだ。そして、後に宿の主人もとうとう白状した。その部屋を人に貸しても、すぐ幽霊が出るということで逃げられてしまうので、宿の経営が逼迫し、もはや「手放すしかない」とこぼした。

▼しかし、ユングは、この事件のことを論文に書いている段階ですら、「霊的存在」に対して非常に曖昧な解釈しかしていない。このような出来事は、催眠類似の状態による心理的な錯覚、ないしは幻覚作用下で知覚された何らかの情報に基づき、意識が「構成した」現象などとして説明できるということにとどめているのだ。

▼霊的存在というものを「白昼夢」であるとすれば、脳の睡眠・覚醒時における夢の研究に、それを解く鍵やきっかけも格段に増大する。ユングはそこに目をつけた。ユング自身が臨死体験者だったので、そのような世界観が心理学研究にも及んだといっていい。

▼科学研究史上で大変有名なのに、実は心霊肯定派であることが、意外にもまったく知られていない事例は結構ある。子ども向け偉人伝シリーズの常連であり、放射能の研究で2度もノーベル賞を受賞したキュリー夫妻は心霊研究をしていた。「ボイルの法則」で有名な近代化学の祖とされるロバート・ボイルもそうだ。ボイルの場合は、心霊治療がまやかしであることを暴こうとして研究したところ、結局は霊能力が事実であることを認めざるを得ないという結論に達して、その熱烈な支持者になってしまった。

▼「エクトプラズム」という言葉を使ったのも、ノーベル生理学・医学賞を受賞したシャルル・リシェだったが、彼も最初は心霊現象を肯定する学者たちを軽蔑していて、そのトリックを暴こうとしてミイラ取りがミイラになった典型だろう。変わったところでは、これも偉人伝シリーズに欠かせない発明家トーマス・エジソンがいる。彼は、自分自身は自然界のメッセージの受信機であると認識していた。宇宙という大きな存在からメッセージを受け取り、それを記録することが発明につながった、と考えていたのだ。大真面目に、霊界との通信電話をつくろうとしたくらいである。

▼シャーロック・ホームズの著者コナン・ドイルも、当初は次々と肯定派へと転向して行く科学者たちを見て、「可哀そうに、学者たちの脳には欠陥というものがあるのだ」と思っていたが、40年にも及ぶ研究の結果、最後は自らスピリチュアリストとなってしまった。

▼このような事実は、教科書では当然教えないため、一般的にはまったく知られていない。が、科学を今の姿に創り上げていった主要な科学者や著名な文化人の中に、心霊肯定派が少なからず存在していたというのは皮肉なことだ。

▼ちなみに、精神分析学者としてユングと常に並び称されるフロイトも、彼が「思考の転移」と呼んだテレパシー能力の存在を認めていた。「もう一度やり直せるものならば、思考の転移の研究に一生を捧げたい」と語っていたほどである。これだけ科学が発達しても、人間には夢の謎一つですら解明できていない。科学文明などというものも、しょせんお里の知れたものだと言うしかないようだ。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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