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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第247回・秋刀魚の歌

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【閑話休題】第247回・秋刀魚の歌

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-03-04 16:00:00]

【閑話休題】第247回・秋刀魚の歌

▼サンマのことを、「秋刀魚」と書かれるようになったのは、有名な佐藤春夫の詩からだった。

あわれ秋風よ 情あらば伝えてよ 男ありて 今日の夕餉にさんまを食らいて 思いにふけると ・・・・さんま苦(にが)いか塩っぱいか・・・(佐藤春夫、「秋刀魚の歌」より)

江戸時代には、三馬と書いていたそうだ。夏目漱石が、「我輩は猫である」の中で、やはり江戸時代のままに、「三馬」の字を使っている。

▼秋刀魚(さんま)という魚は、謎に満ちている。耳石に、毎日、年輪のように刻まれる輪の本数が、365本以下なのだそうだ、水産庁の研究所が、1991年に明らかにしたところだが、ほとんどのサンマは1年しか生きないという。そもそも、胃袋が無いそうだ。(鯉も同じ)一体どういうことなのだろうか。

▼太平洋に広く分布するが、夏に千島沖に集結する。8月下旬に移動。産卵エネルギーの脂20%以上を蓄えた群れは、日本列島に沿って南下を始めるのだ。それが、11月に紀州沖で水揚げされる頃には、もう身も痩せ細り、脂は5%以下に減り、腹にはもう卵がないという。いったい、サンマはどこで産卵し、稚魚はどうやって、あの広い太平洋の中で育つのか、まったくの謎だそうだ。

▼日本人がいつ頃からサンマを食べ始たかも実はわかっていない。平安貴族に、全国から献上された魚は、木簡の記録に残っており、タイ、カツオ、アジ、スズキ、イワシ、サバ、ヒラメ、カレイ、カマス、サメなどいろいろでてくるのだが、一向に記録に出てこないのが、このサンマなのだ。

▼ただ、「サンマ漁」というものが、最初に記録されているのが、江戸初期の紀州熊野灘らしい。現在は、三陸沖が有名だが、当時はそもそも利根川あたりでサケが良く採れたというし、平安時代には和歌山県熊野川でも採れた記録がある。サンマもずいぶんと採れる場所が変わってきたかもしれない。

▼つまり、寒流がかなり今よりも南下していたらしく、その観点からすると、紀州が本場だったことも考えられる。現在、ほとんどサンマ漁のない和歌山県が、戦前までは全国一の漁獲量をあげることも多かった。

▼このように、ぱったり取れなくなったり、突如として取れるようになったり。だれもこのことをちゃんと、わかるように説明してくれない。そして二言目には、人為的な地球環境の破壊が影響している、と言う。そうなのだろうか。本来地球自体が持っている環境変化のリズムに、ただわたしたちは振り回されているだけのことではないだろうか、とも思ったりもする。

▼一般庶民の食べ物としてサンマが明らかに登場してくるのは、やはり江戸時代だ。当時は、下等魚といったら、マグロとイワシだった。高級魚はタイだった。サンマは、庶民で人気が出はじめていたことが確認されているが、武士はまったく食べなかったそうだ。相当の下等魚と見なされていたらしい。だから「目黒のサンマ」などという落語が人気を博したのだ。

▼この秋刀魚、なぜ魚の中でも注目されるかというと、まったく輸入に頼っていないという点だろう。書きたかったのは、実はサンマのことではない。この魚という資源のミスマッチのことだ。

▼秋刀魚は、水揚げされたうち、冷凍・缶詰など加工用に30%が使われ、生食用に40%、そして飼料用が30%となっている。これに対して鰯(イワシ)は、生食用がなんと6%しかない。イワシは、「走りやすい(痛みやすい)」という難点があるにしても、極端すぎる差だ。漁獲量では、沖合い、沿岸などが圧倒的に多いにもかかわらず、ほとんどが飼料用であったりするわけで、秋刀魚はその中では生食が多いという点では特例だ。

▼これに対して、もっぱら生食用で消費される比率の多いのが、マグロなど輸入物を主体とする高級魚なのだ。しかし、日本人がとる一日当たりの動物性たんぱく質摂取量46.4gのうち、39%分が魚なのである。だから、明日の漁業にかける期待は大きい。しかし、気まぐれな地球のことだ。いつまた、サンマが、ニシン同様、いきなり採れなくならないとも限らない。これだけ日本国産として庶民の食卓に貢献しているサンマだ。まだ漁ができるうちに、養殖技術の研究をしていたほうがいいのではないか、と思ったりもする。

▼長年の研究の結果、いまや「うなぎ」も、そして今また「マグロ」も、養殖による良質のものを量産できる可能性が、現実味を帯びてきている。サンマもできるかもしれない。

▼さすがに、鯨を養殖するというわけにはいかないだろうが。養殖したところで、それまでして鯨を食ったとなれば、またしても世界中から袋叩きになるかもしれない。どうも不条理を感じる。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄



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