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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第274回・下手な外人

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【閑話休題】第274回・下手な外人

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-04-11 15:31:00]

【閑話休題】第274回・下手な外人

▼相場が荒れているので、相場のことを書こうと思う。要するに、相場が下手な外人ということだ。

▼ここもとの東京市場の下げには、年初のクリミア問題発生以来、日々解説を施してきたように、さまざまな理由が重層的に影響している。が、つきつめて言えば、下手な外人の運用ということになる。

▼もともと、2-5月というのは、米国の税還付の時節であるから、好需給だ。実際、先週S&P500は史上高値を更新している。が、これが電子化で、例年だんだん終息時期が早まっている。今年もそうだとすれば、3月はじめには終わっていたかもしれない。つまり、米国における資金需給は、ピークを超えていた可能性が高いということだ。

▼さらに需給を言えば、5月はヘッジファンドの中間決算期末である。そこに向けて、ポジションを整理する、利益確定をする、といったような動きが4月にはいって加速した可能性もある。

▼ファンダメンタルズで言えば、米国においては、四半期の決算が始まっている。大寒波の時期の1-3月分の業績だ。いいはずがない。コンセンサスでは、昨年の10%増益から、年率換算で1%増益か、下手するとマイナスかもしれない、とさえ言われている。しかし、こんなことはわかりきったこと。そうはいっても、手控えられたり、一部警戒感からポジションを落としても、それはけしておかしな動きではない。

▼日本も、消費税増税で大変だと騒いだわりには、予想通り、そもそもかつてのような駆け込み需要に走る国民は少なかったようだし、結果、反動減も限定的になりそうだ。しかし、この多少の業績への悪影響というものは、ハナから織り込まれていたわけで、いまさらの観がある。しかしこれも、それなりに慎重に、ポジションを警戒モードにしても不思議ではない。

▼大きな流れで言えば、米国がじゃぶじゃぶのドル安政策、非伝統的とすら言われる超金融緩和政策を、逆回転させ、政策の大転換をし始めている。これは垂れ流ししたドルを回収していく流れであるから、これまでのように、なんでもかんでも買い上がれというような、金融相場とは違う。まともなデータに沿った業績相場が待っているのだ。

▼とはいえ、金融相場から、業績相場へ、スムーズに時間差無く移行できればいいが、現実にはそうはいかない。その端境期には、どうしてもマネーはそれまでのポジションが大きく入れ替わる。そのため、昨年、大きく上昇した日本株や米国株などを利益確定し、逆に最悪のパフォーマンスだった金相場や、新興経済国家の株の安値を拾った。それが、この前半の動きだろう。だから、この端境期に、それなりの株価調整が東京市場で起きてもなんら不思議ではない。が、程度問題である。

▼日本株というのは、理由はなんでもよいのだ。図体だけは大きいものだから、どうしてもグローバル運用をする巨大なマネーにしてみれば、日本株を運用のヘッジに使うのが便利だということは確かにある。これだけヘッジファンドが霍乱要因になるのも、それが大きい。

▼その理由がなんであれ、リスクが発生するというときに、クリミアだろうが、米国景気だろうが、理財商品だろうが、どこかの首相が会議場で屁をしただろうが、どんな理由でも構わない。つねに、リスクを意識した場合、彼らは必ず日本株を空売り、円を買うのである。これが、現在の国際金融市場の「定石」となっているのだ。それを許しているのは、誰あろう、日本国民の株式投資への関与の無さ加減にほかならない。個人も、機関投資家も、だらしがないのである。

▼さて、直近の日経平均の安値更新をきたし、相場を波乱にさせた直接的な点を見てみよう。けっきょくのところ愚かなヘッジファンドの運用の下手さ加減によるものだと言い切ってよい。

▼米国から見てみよう。今年2月のFOMCで、イエレン連銀議長の発言から、来年4月ごろには利上げ観測となった。それに驚くことがそもそもおかしいが、外人(つまり、米人)が思っていたよりも、早期の利上げ観測になってしまったといって慌てた。

▼ところが、直近のイエレン議長の発言では、逆に早とちりしすぎたといって、慌てた。ハト派だと思っていた議長が、思ったよりタカ派だと勘違いして慌て、やっぱりハト派だったと思い直して慌てるという愁嘆場を演じたのが、ヘッジファンドだ。ナスダックが総崩れとなったが、肝心の総合株価指数S&P500はまだトレンドを維持しており、さすがに米国市場とその参加者たちの懐は深い。日本とは大違いだ。

▼翻って日本では、バークレーズ経由の手口が話題になっていた。昨年末、TOPIXを3700枚ほど大口で買い込んでいたその手口は、当然先高感の中で買ったものだろう。それが、クリミアだ、中国の理財商品だ、とノイズが走ったことで、相場が乱調。下げてしまった。マクロ的な分析で動くヘッジファンドだろうと思われるが、この手口の主は、日銀の金融政策決定会合で、日銀がさらなる金融緩和策に動くから、相場は挽回すると見ていたのかもしれない。

▼日本人の間では、ほぼ誰も日銀が今回動くとは思っていなかった。それはそうだろう。まだ消費税の悪影響もはっきりしていないのに、打つはずもない。どころかそれほどの悪影響がなさそうだ、という感触になってきている中でなら、なおさらだ。

▼メディアで取り上げられていたのは、つとに外人の間で騒がしかった金融緩和策期待だ。ふつうまともなマクロ分析から言ったら、ありえないが、先述の連銀議長の話と同様、なんでも性急にこれを期待するのが、外人の特徴だ。米国連銀の政策に関しても然り、今回の日銀の政策に関しても然りだ。そして、いずれも大外れなのである。

▼先のバークレイズ経由の、おそらくはヘッジファンドであろうと思われる手口は、今週黒田日銀総裁のかつてないほど日本経済の先行きに関する見通しの強さにびっくりしたのだ。しかも、「当面、新たな金融緩和は考えていない。」という発言も飛び出した。まず十中八九、金融緩和策を打ち出すと見切っていたところが、無いという結果になったのだ。

▼昨年末買い込んだ3700枚の先物は、大きな含み損を抱えており、やにわにこれを投げた。そこは、転んでもただは起きないヘッジファンドだ。返す刀で、その先物を同規模で、空売った。それが、同じバークレーズの日銀決定会合後の6700枚のTOPIX先物売りだったのではないか、とも考えられている。

▼ヘッジファンドというのは、いわゆるトップダウンアプローチといって、マクロ的に景気循環論を投資に使っている。だから、中央銀行や政府の方針や政策というものに沿ってプレイし、現実とのギャップにつけこんで、逆手に取ったりもする。イベントドリブン型と呼ばれるグローバル投資ファンドの多くがそうである。

▼本来米国人のスタンスは、「中央銀行に逆らうな。国策に逆らうな。」というのが、鉄則だ。ヘッジファンドはしかし、米国から飛び出している「アウトロー」だ。そもそもまともな投資理論を勉強している連中が多いとは限らない。ともすると、ただの金融ゲリラ、金融マフィアと何もかわらない連中が、現在は多数派を占める。 知ったふうなことをとうとうと口ではしゃべるが、中身はしょせん底の浅い技術論の世界だ。相場観もなにもあったものではない。

▼今回も、彼らの一部は自分の「見当はずれ」による失敗をカバーしようとして、余計な波乱を東京市場に引き起こしてくれたことになる。

▼もし彼らが、好きなように東京市場を料理できると思っていたら大間違いだ。日経平均が2月の安値更新をする一方で、ドル円はそうなっていない。仮にドル円を崩してしまえ、などと思っているとしたら、とんでもないことだ。

▼よってたかって外人が昨年一年で買った日本株が15兆円。黒田総裁という人物が、財務官時代に一気に13兆円にも及ぶ円売り介入をやってのけた恐るべき武闘派のつわものだということを忘れてもらっては困る。今の黒田総裁は、当時にも増して権力を手中にしている。あまり、日本という国をなめておもちゃにしていると、火傷を負うのは、彼ら自身だということをやがて思い知らされるだろう。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄




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