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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第396回・彼の名はベラスコ2〜逆走する近代

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【閑話休題】第396回・彼の名はベラスコ2〜逆走する近代

【閑話休題】

[記事配信時刻:2015-12-18 17:51:00]

【閑話休題】第396回・彼の名はベラスコ2~逆走する近代

▼近代が逆走している。近代とは、国民国家の成立を前提とする、各国家間の予定調和を図ろうとするステージのことだ。

▼国民国家は、国境線で区分されている。近代の初期には、各国家のエゴイズム(列強による帝国主義)が国際法そのものであったから、国境線はなんども武力によって書き変えられた。

▼しかし、その結果、人類は未曾有の人的被害を出してしまった。

(16世紀以降の戦争犠牲者数ランキング)

▼この反省から、EUのように、国家と国境線を越えた統一世界を模索しようという試みも始まった。「世界市民(コスモポリタン)」がそのゴールということになる。いろいろ問題はあるものの、少なくとも建前上は、そうである。

▼すでに、アメリカ合衆国という壮大な実験によって、多民族による構成でも国民国家たりうるのだ、ということは、18世紀にほぼ立証された。次は、帝国主義時代という惨禍を踏まえて、とうとう国境線を無くしてしまう課題に取り掛かっているわけだ。EUがこの新たな実験の最中で、このところ問題多難である。

▼これに対して、敢然と異を唱え始めたのが、イスラム国である。彼らも世界の統一を目指しているが、あくまで彼らの解釈によるイスラム原理に基づく世界征服にほかならない。異教徒は、殺害されるか、奴隷にされ、売り飛ばされる。もちろん「ふつうの」イスラム教徒たちは、この原理に否定的である。

▼続いてロシアが、公然と国境線を踏み破った。クリミア併合とウクライナ紛争への軍事介入である。戦後、国連発足以後、こういう事態は初めてのことである。しかも、第二次大戦の「戦勝国」であり、常任安保理事会のメンバーである5大国のロシアが行ったのだ。

▼戦後においてはアメリカも、確かにさんざん国連を通さず、独断で種々の武力介入を行ってきたとはいえ、自国の国境線を変更するということは一度もなかった。

▼さらに中国がロシアを追う。南砂諸島の実効支配である。なんとその根拠に、「二千年来、南砂諸島は中国固有の領土であった」という、時代錯誤も甚だしい解釈を臆面もなく主張して憚らない。

▼いずれも、一般的な欧米や日本のように、「近代」から「脱近代」へと時間をかけてでも、話し合いで目指していこうとする「普通の」国々にしてみれば、とてもではないが「話にならない」のである。

▼しかし、「普通の」国々の中にも、これに敏感に拒否反応がでてきている。たとえば、EU内部の不協和音だ。きっかけは、中東紛争が長期化した副産物としての、イスラム系の大量難民流入問題である。

▼ドイツを中心に、イスラム難民の受け入れに対処しようとする過程で、東欧では右翼的な主張が強まり、国境封鎖という手段まで出始めている。ここでも、ナショナリズム(国民国家のエゴ)が台頭してきている。とうとうドイツでさえ音を上げて、移民受け入れ数を減らすと言いだす始末。

▼あの「人権宣言」を1795年に高らかに謳いあげたフランスでさえ、今般のパリ同時多発テロ事件をきっかけに、ルペン一族が指導する反イスラムにして、極右の国民戦線が、大統領を輩出しかねない勢いになってきている。

▼来年に大統領選挙を控えたアメリカでも、共和党の、反イスラムを公言するトランプ候補がダントツの支持率を集めてしまっているような有様だ。わたしも、世論も、「どうせ途中で失速する」と思っていた向きが多いのだが、この段階で、一段と支持を増大させているという事実は、かなり驚きである。

▼こんな時代錯誤も甚だしい潮流がこの時代に復活してくると、一体だれが想像しただろうか。

▼何ゆえ、この近代の逆走が起こり始めてしまったのかというと、直接的には
米国のオバマ政権になってから、「米国は世界の警察官であることを辞めた」ことからだった。

▼今や、「前近代(イスラム国)」と「近代(国民国家)」、そして「できそこないの脱近代(EU)」が、並存しているのが今の世界だということになる。その「脱近代(EU)」も下手をすると空中分解しかねないリスクがでてきている。

▼この先、行き着くところはどういう世界なのだろうか。わたしは、近代が逆走することは無いと思っている。歴史は、繰り返すことはあっても、逆行したことはかつて無いからだ。

▼俗によく言われる、第三次大戦のようなことにもならないと思っている。しかし、より狡猾にして、惨いやり口でかなり凄惨な状況というものも考えておかなければならないかもしれない。

▼三つのステージの勢力は、拠って立つ原理が水と油だから、話し合いで解決されることはなさそうだ。結局のところ、相手が倒れるまで、リングにたち続けなければならない、時間無制限のデスマッチということだ。最後は体力勝負である。

▼果たしてこれは、自然発生的な、つまり不可逆的な人類の命運なのだろうか。それとも、誰かが仕掛けたものなのだろうか。

▼自然発生的なシナリオに関しては、学者の研究にでも任せておけばよい。ここでは、誰かが仕掛けたシナリオのほうで、考えてみよう。そのほうが、現実に則しているからだ。

▼キーワードは、おのずと知れた「国際ユダヤ資本」である。前回の「彼の名はベラスコ」で、主人公のベラスコが言った、「第一次・第二次大戦は、国際ユダヤ資本が内部分裂をした挙句の果ての戦争だ」ということから、解きほぐしてみよう。

▼歴史の話であるから、明らかになっている事実は限られている。そこからは想像の域を出ないのだ。想像の部分に重点を置いてしまうと、ほとんど落合信彦的な謀略小説と化してしまう。そこで、できるだけ、わかっている事実だけを整理していこう。

▼まず今回は、すべての問題のキーワードと目される、国際ユダヤ資本とはなにか、ということからだ。

▼それには、現状から「利権を追求」する撹乱者たちが、一体なにを狙っているのか、という結論から出してみよう。

▼彼らに、どんな理念があるにしろ、それは本音をカモフラージュするための「建前」や「正当化」のスローガンにすぎない。本音はあくまであくなき利益の追求、利権の確保以外には無い。

▼仮説を立てれば、まず誰しも思い浮かぶのが、第三世界の開発・近代化の流れだろう。先進国の人口は全人類のたった15%、低開発国(旧共産圏を含む)の人口は85%。先進国マーケットの構造停滞を尻目に、資本は増殖を求めて北から南に、西から東へと大移動を始めたのだ。この流れは、国民国家が欧州で勃興し始めた、18世紀以来、ずっと続いている。

▼よく言われることだが、この流れは理念や手法の違いから、大きく二つのグループに分けることができるとされている。南北間の共生的発展を推進しようとする企業や個人を「グローバリスト(Globalist)」と呼び、この潮流に反対する企業や個人を「ネイティビスト(Nativist)」と呼ぶ。

▼敢えてカタカナで、表記した訳は、どちらも国際資本であり、ボーダーレスな活動をするからだ。

▼ネイティビストというのは、要するに超保守主義・排外主義者のことである。自民族が唯一絶対的な優位者であるというイデオロギーといってもいい。つまりは、内に対しても、外に対しても、民族資本の顔を持っており、国際舞台ではともすると、帝国主義的な言動が顕著になる。つまり、民族的なイデオロギーがかなりその行動原理の中核を占めているのだ。

▼これに対してグローバリストというのは、世界派とも呼ばれるが、この表現にだまされてはいけない。世界派などといっても、けして「ものわかり」が良いわけではない。第三世界との共生に理解を示したり、ときにリベラルな考えに親和的なスタンスを見せたりするものの、本質は自己の利益収奪システムの拡大再生産が目的であって、あらゆる合理的・民主的な主張というものは、すべて「擬態」である。ただ特定の民族主義にこだわっているわけではない、というだけだ。世界中に張り巡らされた自己の利権そのものが、重要なのである。

▼どちらも利権を追求するという点では行動原理は同じなのだが、情念とアプローチが違う。ごく単純化していうならば、このグローバリスト対ネイティビストの対立が実体論における「世界激変」の原因となっているという仮説だ。

▼歴史上、話を複雑にさせてきたのは、攻撃する側も、守る側も、それぞれに、グローバリストやネイティビストがいたということだ。大きく分ければ、これらが合従連衡しながら、共通の利権を求めて争ったという構図だろうか。 大きく敵と味方に分かれることが多いだろうが、それぞれの内部は一段と分派が多く、けして一枚岩ではない。

▼当然ひとつの利権を巡って、「敵の敵は味方」といったような奇怪な共同戦線も頻繁に発生した。これから、整理してお目にかける歴史上の事実は、この奇奇怪怪な「敵の敵は味方」と言うモザイクを、嫌と言うほど見せ付けられることになる。

▼さて、このグローバリストとネイティビストは、ときに手を組み、それでいながら、背後で裏切り、ときに真正面から衝突してきた。今回の閑話休題における主役は、その代表選手であるロックフェラーとロスチャイルドだ。

▼ロックフェラーは、わたしは長いこと「隠れユダヤ」だと思っていたが、今回いろいろ調べて見ると、どうもそれは間違っていて、ユダヤの可能性はないようだ。ドイツ系ではあるが、ユダヤではなく、古くからプロテスタントの家系であり、典型的なWASPだという理解が正しいようだ。

▼WASPとは、白人(WHITE)で、アングロサクソンで、プロテスタントだ、という意味だが、必ずしも、民族の違いは重要ではない。いくらでも、黒人や、非アングロサクソン系白人でも、WASPと同じ行動原理をしている人々がいる。

▼WASPという者を、一言で言い換えれば、要するに「米保守本流」ということになる。実は、言葉のイメージと違い、あまり民族の区分にこだわらないのである。(もちろん、個人的、私的な感情として、民族蔑視はあるだろうが)
そして、このロックフェラーこそが、いわゆるグローバリストの典型的な代表選手なのである。民族の差異などよりも、優先すべきはなんといっても利権収奪システムの拡大再生産であり、経済合理性なのである。現在、世界を揺るがしているといわれるグローバリズムの総本山といってもいい。それは、結果として事実上「アメリカの支配」と重なる。従って、米保守本流とも言われる所以である。

▼これに対して、典型的なネイティビストとされているのが、英財閥ロスチャイルドである。これは、徹頭徹尾、ユダヤ系が中核を占めている。ここで話がややこしくなる。ユダヤ人といっても、これまたけして一枚岩ではない、ということだ。大きく分ければ、シオニスト(約束の地パレスチナに、イスラエルを建国することが、すべてに勝る優先順位のイデオロギーである)、一般のユダヤ教徒と居住している国に同化したユダヤ人(多くが、カトリックやプロテスタント)の三つだ。

▼このうち、後者の、一般のユダヤ教徒も、同化ユダヤ人たちも、どちらも居住する国家の国民として生きている人たちで、イスラエルに共感する気持ちはそれほど強くない。だからグローバリストのロックフェラー一派の中にも、ユダヤ人は多くいる。けして、シオニストということではないユダヤ人たちだ。

▼さらに話が込み入ってしまうのは、たとえばアメリカにいる圧倒的多数のキリスト教徒(プロテスタントや、一部カトリック)の中にも、ユダヤ人と同じように、イエス・キリストの聖地「パレスチナ」にこだわるシオニストがいるのだ。つまり、シオニストは、グローバリストにもネイティビストにも、ユダヤ人にも非ユダヤ人にもいるのということだ。彼らは、信条こそ違え、結果的に同じ行動原理で動くことが多いのだ。

▼まとめてみよう。『米ロックフェラーvs英ロスチャイルド』という構図は、『グローバリストvsネイティビスト』という構図であり、同時に『米保守本流vs国際シオニスト集団』という構図でもある。両者ともに、国際資本なのだ。ユダヤといっても、両方にユダヤは存在するので、単純に国際ユダヤ資本と呼ぶのは、正確ではないということになる。

▼では、ベラスコが言った「第一次・第二次大戦は、国際ユダヤ資本が内部分裂を起こした挙句の戦争だ。」というのは、誤解のないようにしておきたいのは、なにも敵同士として内部分裂をした、ということばかりではないのだ。むしろ、国際資本(ユダヤだろうと、米保守本流だろうと)、そのやり口として「両建て」主義を採ってきたという歴史的事実をよく踏まえたほうがよい。

▼次回、この国際資本の二強が、いかに両建てで世界を食い散らかしてきたかの一端を、わかっている事実だけで整理してみよう。本日のところは、最後に、このときに衝突し、ときに手を組み、ときに裏切りを繰り返してきた二強に、とんでもない展開が起こった点を書いて締めとしておこう。

▼それは、2012年5月30日のこと。大きなニュースがメディアを駆け巡った。閑話休題でも、一度言及したことがあるのだが、長年確執を続けてきたロックフェラーとロスチャイルドが、資本提携に踏み切ったのである。

▼英ロスチャイルド家のジェイコブ・ロスチャイルドの投資会社RITキャピタル・パートナーズが、米ロックフェラー・グループの資産運用会社の株式37%を取得することで合意したのだ。

▼メディアは、ロスチャイルドがこれで米国の拠点をとうとう手に入れた、という評価をしたり、ロックフェラーがロスチャイルドに「吸収された」という評価をしたり、といろいろだった。

▼本当のところはなにもわからない。ただ、それが2012年5月であり、その前に何があったかといえば、言うまでもなくサブプライムショックによる暴落であり、欧州債務危機であり、チュニジアの民主革命であり、リビアのカダフィ政権の崩壊であり、北アフリカから現在のシリアに至るまで、アラブ諸国の軍事政権が軒並み倒壊していく一連のドミノ現象である。

▼そして、その後に起こったことは、ウクライナ紛争であり、イスラム国の独立宣言。また、スノーデン元NSA(国家安全保障局)・CIA(中央情報部)の職員が機密情報を持ってロシアに亡命している。

▼ちなみに、イスラム過激派による世界的なテロ事件が一気に頻発し始めたのは、二強が資本提携をした3ヶ月後、2012年8月以降である。

▼あの時、二大国際資本がいわば、「合体」したということは何を意味するのだろうか。そして日本は、どう泳いでいったらよいのだろうか。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄



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