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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第418回・貧乏人が山へ行く

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【閑話休題】第418回・貧乏人が山へ行く

【閑話休題】

[記事配信時刻:2016-05-13 16:53:00]

【閑話休題】第418回・貧乏人が山へ行く

▼引き続き、ネタ切れなので、一段と「ゆるい話」を書く。

▼GWは、皆さんどこへ行かれたのだろうか。所員の間で話をしたところ、金持ちが旅行をし、貧乏人は山へ行くという結論になった。かくいうわたしは、山へ行ったのだ。

▼もっとも、貧乏人は、ガラ好きの都内でぶらぶらするという説もあるが、わたしの家は、長いGWのうち、山へ行ったのは一度だけで(それも日帰り)、あとは都内すらぶらぶらしていない。ただ、金を使わないように家でひたすら逼塞していたのだ。やはり貧乏人なのである。

▼山といっても、1000m級以上の登山ということではなく、なにしろ、家内と次男(小学校4年生)を伴った3人チームなので(高校生の長女は、最初から拒否)、1000m以下で、近場で体を動かす程度の山ということになると、東京西部の高尾山か、神奈川県西部の大山くらいしか、無い。

▼大山には、電車賃が余計かかるので、自然、高尾山になった。ところが、高尾山はロープウェーを使わずに、何度も家族連れで登り・降りを経験しているので新鮮味がない。

▼そこで家内の発案で、さらに奥に控える陣場山~高尾山の縦走をしようということになった。陣場山の標高854m。高尾山599mであるから、遊びのようなものだ。

▼ただ、20年近く、山らしい山に登っていない。さんざん山に入っていた頃というと、20-30代で、すべて信州の山であった。いずれも、2000~3000m級である。以来、まったく山に入っていないのだ。年も年だけに、あまり無理しないで、とにかく安易な選択をした。

▼つまり、先に陣場山登山口までバスで行き、まず陣場山の山頂に登攀。そこから、高尾山まで下っていこうということにしたのだ。高尾山はよく知っているが、陣場山との縦走コースは、一度も経験が無かった。知らないということは恐ろしいことだ。事前に、よくネットで調べておけば良かったが、甘かったのだ。

▼当初、陣場山登山口でバスを降り、なだらかな登山道を登っていく時分は、「こんなもん楽勝だ」と意気揚々としていたのだ。沢沿いにマイナス・イオンを浴びながら、金のかからない、しかし贅沢な休暇だ、と決め込んでいたのだが。

▼本格的な登山道に入ってから、とんでもないことになった。正直、両手を使わなければ、上がれないといってもいいくらいの箇所が続出するような始末で、陣場山の山頂までの4kmは、地獄と化した。当然、わたしが何十mも遅れて、最後尾であった。

▼悔しいことに、家内は若い頃からバスケで鍛えた運動少女であり、大学も体育大であるから、徹頭徹尾、スポ根でならしてきたわけで(だからわたしは、いつも、「脳みそまで筋肉で出来ている」と揶揄しているのだが)、その彼女もひいひい言いながら、それでもわたしより遥かにマシであった。

▼驚くべきことに、一番「やわい」と思った次男(文太郎と言う。)は、なんと、斜面(それも上りである)を走ったりしているのだ。あれは化け物である。若いということは(10歳だが)、もの凄いことだ。

▼さて、問題はそこで終わらなかった、陣場山で、おにぎりを食い、なんとか足に乳酸がたまらないようにほぐした後、「さあ、ここからは下りだ。ざまあみろ。」というつもりでいたのだが、これが大きな間違いだった。

▼恐ろしい事実をそこで知ってしまったのだ。陣場山登山口から、その山頂経由で、高尾山頂までは、なんと合計18.5kmだった。この縦走距離の長さを知ったのは、陣場山頂においてである。

▼いかに、事前の調べが無い、安易な行き当たりばったりであったかがわかる。しかも、歩いてみれば、高尾山まで、こまかい尾根の上り・下りが連続してあり、いずれも上りは急勾配なのである。あれには参った。

▼ほうほうの体で高尾山頂に辿りつくのに、正味6時間はかかっている。この正味歩行時間で距離を割ると、時速3.5kmであった。

▼普通、日帰りの単独山というのは、往復で8kmを超えるところが、わたしの経験では非常に少ない。山といったら信州しか知らないので(一部甲州を含む)、ほかはわからないが、だいたいそんなものだろうと思っている。

▼幕営することが多かったので、その場合でも、一日合計10時間程度の登攀、距離にしてやはり8kmから10kmというつもりで、いつも余裕を持っていたが、それは幕営するからである。

▼日帰りというのは、とにかく帰らなければならないので、考えようによっては非常に選択を間違えると、えらいことになる。

▼楽勝コースなら、大山の阿不利神社をベースにして、週回路でだいたい8km、そのくらいだ。それが、18.5kmの縦走距離というのは、実はとんでもない距離である。

▼陸上自衛隊が、日頃から実戦装備(重装備ではない)状態で行軍訓練を行っているが、わたしの記憶では1日8時間、32kmというものだったはずだ。しかし、それは基本的には平坦路である。

▼1000m以下の低山とはいえ、一応山は山である。下手をすると、両手を使わなければ登れないといったような箇所が続出するようなところを、18.5kmというのは、かなり初心者(家内と次男)にとっては、無謀なコースだと思う。

▼しかし、アゴが出たのは、かくいうわたしであった。衰えたりとはこのことだ。軽装備とはいえ、一応わたしが全部荷物を持たされる。1Lの水を三本持たされているのだ。いつも、ラップトップをリュックに背負い込むのがせいぜいのわたしである。とんだ受難の一日となった。

▼この18.5kmという距離感だが、東京駅から川崎までである。あるいは東京駅から、船橋、川口、三鷹までがほぼこの距離に該当する。

▼関西で言えば、梅田から芦屋の距離だ。あるいは、梅田から生駒山、堺、枚方の距離である。低山とは言え、いかに下調べしないとエライ目に遭うという、素人のような失態であった。

▼まだ、季節的に夏場ではなかったので助かった。これが夏の真っ盛りであれば、1000m以下の低山の場合、猛暑で縦走し切らなかっただろう。1000m以上だと、かなり気温が違うのだ。わたしもあまり低山徘徊をしたことはないので、正直ナメてかかったのだ。

▼ただ、こういう経験をすると(とくに、比較的長い距離を登攀すると)、一つの尺度になるので、今後便利である。距離感が分かるのだ。

▼ちなみに、今回のわたしたち家族の陣場→高尾縦走ルートで、一体どのくらいのカロリー消費であったかというと、通常の計算では、消費カロリー(kcal)=体重(kg)X距離(km)X5であるから、わたしはあの一日だけで、6400kcalを消費したことになっている。

▼この6400kcalがどのくらいかというと、おにぎり一個が160kcalであるから、おにぎり40個分に相当する。

▼今回のように、無謀な18.5kmを、いきなり予備訓練もしないで縦走するなどということは、あまりしないだろうが、通常の8kmほどの登攀距離であったとすると、ざっくり2800kcalを消費するはずだ。

▼成人男性の一日の食事が、おおむね2000kcalくらいではないかと思う(あくまで目安だ。2000ではかなり多いという人もたくさんいるはずだ)。だから、陣場→高尾縦走の6400kcalというのは、3倍以上のカロリー消費をしていることになる。

▼ダイエットという観点から言うと、基礎代謝が重要になってくる。わたしの場合、一般的な計算基準によれば、1500kcalらしい(女性で、年齢や身長・体重にもよるが、ざっくり1200-1300kcalだろうか)。人間が最低限生存するのに必要な基礎代謝量が1200kcalと聞いたこともある。

▼こう考えてみると、いかに登山というものが、あのような低山徘徊ですら、相当のカロリー消費であることがわかる。体重を減らしたいというときには、アスファルトの上を走って膝を痛めたり、単調なトレーニング機材を使ってライザップのようなことを通って精神的苦痛を味わうよりも、遥かに精神衛生上も健康的だ。

▼なにしろ、海より遥かにマイナスイオンが多い。海も多いのだが、それは波打ち際だけである。山はそこへいくと、全山マイナスイオンで充満している。とくに水場、沢はそうである。なにより、海ほど異常な日の焼け方はしない。

▼その日、わたしと家内は、文字通り、ほうほうの体で家にたどり着き、以後三日間、腿や尻、腰から痛みが抜けなかったが、文太郎は翌日もまったくケロリとしていた。

▼筋肉が痛いということは、筋肉細胞が破壊されているからだ。そして、破壊されるからこそ、新たに筋肉細胞が増殖される。つまり、痛くなければいけないのである。

▼そして、筋肉細胞というものは、実は死ぬまで破壊しさえすれば、新たに増殖する。運動が必要だ、というのは、そのためだ。破壊によって、再生・成長するのだ。

▼かくして、わたしたち家族は、今後、できるだけ山に行こうと思っている。貧乏人が山に行くからである。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄



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