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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第8回・連銀マジック

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【閑話休題】第8回・連銀マジック

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-03-12 17:08:00]

【閑話休題】第8回・連銀マジック


▼米国連銀は、見事にサブプライムショックからアメリカを救った。誰もが、これでアメリカが二度と立ち上がることはない、と言った矢先に復活してきたのが、そのアメリカだった。およそ、知識人の言うことなど信じられない。そもそも、アメリカの底力の凄さというものを、知識人といわれる人ほど甘くみている。

▼とはいえ、バーナンキ議長をトップにアメリカの金融政策を担う連銀が、よくもあれだけの恐慌状態を切り抜けたものだとつくづく感心する。前例など無視し、目的のためなら手段を選ばず、銀行の不良債権を片っ端から買い受けて救済。ゼロ金利にまで緩和するだけではなく、国債をどんどん買い入れて市場に資金を湯水のように供給する。

▼しかも、いったん株価が戻り始めると、連銀が肩代わりした不良債権としての証券価格(たとえば、シティの株)は何倍にもなり、結局2010年、2011年と連銀は史上空前の利益をたたき出した。豪腕にしてしたたかなこのアクションは、ドラマや映画を見ているより迫力のあるものだった。

▼連銀が最優先にしたのは、株価を上げることだったといってもいい。綺麗な言葉を使えば、「資産効果」と呼ばれるものだ。何はともあれ、株価さえ上げてしまえば、危機は乗り切れるという目算があった。サブプライムショック後の、すべての金融政策がこの一点に集中していたといってもいい。それには米国ならではの事情が裏にあったからだ。

▼アメリカの家計は、およそ半分がなんらかの有価証券である。日本では、10%もないだろう。したがって、株価を上げてしまえば、どんなに雇用が落ち込んでいようと、どれだけ失業率が高かろうと不労所得が発生するから、労働者は食っていけるのだ。それほど株というものは、アメリカにとっては経済の帰趨を制するキャスティングボートを握っている。しかも、株価を上げることに成功した連銀は、「次は不動産価格だ」と公言してはばからない。実に胸がすくようなプレイである。

▼安倍首相が、景気対策にとりわけインフレ政策的な色彩の濃いヴィジョンを訴えている。それは、これまでの頑迷な原則主義にこだわってきた政府や日銀に比べれば、はるかに「なりふり構わない」必死さを感じるのだが、日本の場合、連銀のまねをしたところで、どうにもマジックが効かない事情もある。株価を上げたところで、所得が瞬間的に増大する家計の仕組みがない。

▼これまで、国債へ国債へと資金誘導してきた当局の責任も大きい。その上、所得が上がらない中で物価だけが上がってしまったら、事態はこれまで以上に悪化するというリスクが見え隠れしてしまう。だからこそ、首相が異例とも言える、企業への賃上げ要求をしたのだろう。実際、最高益を出している企業は、これに応えている。

▼フリードマン流の連銀方式が日本でも有効打となるには、さらに多くの政策が打たれる必要がある。直接的には、確定利回り商品ばかりではなく、変動商品へと国民のマネーを誘導する施策。アメリカでは小学校から投資教育を行っているが、そうした教育面の充実。すぐには効果が出ないが、確実に成果が上がるのは大幅な法人減税であろうか。

▼ドイツの景気のしたたかさは、いち早く法人税を引き下げたからにほかならず、回復してきアメリカでさえ、これを行おうとしている。連銀の見事な実績は、アメリカなればこその連銀マジックだ。日本には、そのまま使える代物ではない。安倍政権も、このことを熟知しているとそう信じたい。

増田経済研究所
コラムニスト 松川行雄



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