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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第9回・ニュースの読み方〜誰が得をするのか

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【閑話休題】第9回・ニュースの読み方〜誰が得をするのか

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-03-13 17:00:00]

【閑話休題】第9回・ニュースの読み方~誰が得をするのか


▼新聞記事やテレビの報道を見聞きするときには、推理小説だと思えば良い、という話がある。「犯人は誰か」を考えるとき、「一体、これで誰が得をしたのか」、と考えれば犯人の目星がつく、というあれだ。世の中の動きというのは、たいてい経済的要因で起こることが多いから、ニュースを読み解くときには、「誰が得をするのか」を、いつも頭で考える癖をつけると、意外に実態というものが見えてくる。

▼一つの例を挙げよう。一見唐突だが、わかりやすいので南北戦争を取り上げてみる。南北戦争は、19世紀(ちょうど日本は幕末)に起こった、アメリカの歴史上もっとも悲惨な戦争だった。戦死者数(非戦闘員を含む)を比べてみればわかる。独立戦争の2万5000人。米墨戦争(アラモの戦い)の1万3000人。米西戦争の2400人。フィリピン植民地戦争の4000人。第一次大戦の11万6000人。第二次大戦の40万人。朝鮮戦争の9万2000人。ベトナム戦争の5万8000人。イラク戦争の4400人。対テロ戦争の6800人。これに対して南北戦争は62万人である。突出して多い。世に内戦ほど酷いものはないというが、当時の人口を考えても、異常値としか思えないほどの数値だ。

▼きっかけは、北部政府のリンカーン大統領が発動した黒人奴隷解放宣言だった。一見、黒人の人権ということが切り札となっており、普通そう解説されることが多い。しかし、今でも有色人種に対する差別問題が潜在しているアメリカである。19世紀、それも奴隷制度が厳然として機能していた時代にあって、白人同士が黒人の人権回復のために、4年間も血みどろの戦いをするなどということが考えられるだろうか。ちょっと視点を経済的事情にずらしてみると、ことの実態というものが、浮き彫りになってくる。

▼当時、北部は産業革命の真っ只中だった。欧州大陸向けの繊維商品を巡って、英国としのぎを削っていた時代である。しかし北部は人口の少なさに加え、労働賃金の上昇によって、競争力が低下しつつあった。ライバルの英国はエジプト綿やインド綿など、良質の原材料を植民地から半ば収奪してきたために、海上運賃や保険を加えても、アメリカ製品を圧倒しつつあった。一方、南部は北部の苦境にもかかわらず、相変わらず黒人奴隷を使って時代遅れの大プランテーション経営による綿花栽培を行っており、機械化も合理化も行われていなかったのである。

▼これに目をつけた北部政府は、安価で大量の黒人労働力を北部の生産加工にシフトさせようと考えた。もめにもめた末、南部の奴隷制度を憲法違反であるとして、奴隷解放宣言に踏み切ったわけだ。南部は抵抗し、合衆国から離脱を決意。北部はこれを反乱とみなして、戦争に突入する。戦後、果たしてほんとうに黒人は解放されただろうか。彼らの人権など実際には回復しなかったのだ。それが真に実現したのは、ケネディ大統領の時代、1960年代まで待たなければならなかった。これ一つを見ても、南北戦争の発端というものの実態が見えてくる。

▼このように、正論で書かれる歴史というものには、およそ人間の本当の姿が浮かび上がらないことがある。なんでも経済的要因にこじつけるのもどうかと思うが、ニュースを見るときに、「誰が得をするのか」という視点をちょっと使うだけで、また違った風景が見えてくる。




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