【閑話休題】
[記事配信時刻:2018-07-27 16:31:00]
【閑話休題】第532回・自分が何者か、わかってしまおう。
▼あなたは、自分が日本人だと思っているだろうか。当然そうだろう。わたしもそう思っている。が、遺伝子レベルで、果たして自分が、いわゆる世界地図で分布されている人種・民族のどれに相当しているのか、それは知らないのである。
▼ところが、近年はとても便利になったもので、自分の遺伝子検査がかなり安くできるようになった。たまたま家内の勤めている会社が、そういうところと関係があるらしく、社内割引で、一段と安く一般的な遺伝子検査ができるというので、やってみたのだ。小さな試験管のようなものに唾液をとって、送るだけだ。(採取する前1時間は、飲み食い禁止、たばこも禁止。水だけOK。)
▼ジーンライフという会社だが、田中将大選手(NYヤンキース)のCMでも最近は知られている。すると面白いことがわかってきた。個人情報であるが、わたしのこんな話、個人情報でもなんでもないので、あっさり書いてしまおう。
▼一番ヤバイのは、疾病可能性の高いものである。これは、可能性の高い疾病一覧という項目なのだが、幸い、ガンは一つも入っていない。ところが、である。ウィルス性のものは、たくさん含まれている。
▼ノロウィルス、結核、急性肝炎、ハンセン氏病(ライ病)などの類だ。感染症のオンパレードなのである。考えてみれば、わたしはこの人生のうちで、入院したことが一度だけある。30代だったが、劇症急性A型肝炎である。ほぼ危篤状態に陥った。一か月で、完治できたのは医者も驚いていた。しかも、抗体ができない。実は、A型肝炎は、小学校のころにも一度罹患している。
▼そして父親である。彼は8人の兄がいたが、全員結核で死亡している。ばらばらに居住していた、大人になってからの話だ。父も結核で倒れている。肺を半分無くしたが、これはなんとか助かって、80近くまで生きて死んだ。いずれにしろ、ほぼ兄弟は結核でみな若年で全滅である。
▼もちろん戦前の話なので、結核はよくある病気ではあった。が、成人して内地に出て、一緒に居住していたわけでもない彼らが、片っ端から結核で死ぬというのも、異常だ。どうやら、ウィルスや細菌といったものに対する免疫力が弱いようだ。
▼このことと話がつながるのだが、冒頭で述べた人種・民族である。わたしは、遺伝子検査によると、ハプロD4というタイプなのだが、これは日本人の34%くらいを占めているようで、多数派といってもいい。多数派だからといって、日本に一番古くからいたというわけではない。むしろ新参である。
▼ハプロタイプというのは、生物がもっている単一の染色体上の遺伝的な構成(具体的にはDNA配列)のことだ。通常、母系のミトコンドリアと、父系のY染色体が対象となる。
▼このハプロD4という遺伝子が出現したのは4万年前、中国中央部、どうやら四川省・貴州省・チベットにまたがるあたりであると推測されているらしい。では、漢民族かというと、まったく関係ないのである。出現した場所と、人種・民族は一致しない。当然であろう。移動しているからにほかならない。
▼で、結論を言うと、このハプロD4タイプというのは、満洲・蒙古、ヤク―ト、ブリヤート、チベットなどがこれに該当するという。俗にいう、ツングース系である。日本語は、ツングース語系である。「てにをは」のような助詞がつくことで、文章を膠着させる言語だ。助詞のおかげで、単語をどう逆の順番にしようとも、意味が通じてしまうという、大変優れた言語だ。
▼たとえば、「わたし・は、あなた・を、あい・して・います」は、「あい・して・います、あなたを、わたしは。」でも通じるということだ。ばらばらにどうやっても通じてしまうので。これを「膠着語」という。
▼ツングース語系は、この膠着語が多い。日本史的に言うと、縄文人ではなく、弥生人である。ちなみに、この大分類D系統(古モンゴロイド)は、大陸ではほとんど滅んでしまい、わずかに険しい山岳部(チベット)と、海に隔てられた島嶼部(日本)に最大集積された血統ということになるらしい。
▼ここ数千年において漢民族を中心にしたアジア系O系統が広く生活圏を拡大していったのだ。D4タイプは、大陸から追い出されて、日本島嶼に入り込んできたわけだ。
▼このハプロD4の面白い特徴は、100歳以上の人をサンプリングしてハプロタイプを検査すると、突出して多いタイプの一つにD4があるという。つまり長寿である。非常に耐久性に優れているというのだ。とくにその耐久力は、寒冷に強いということらしい。
▼たしかに、主力であるヤク―ト、ブリヤート人といったら、ツンドラ、永久凍土、シベリア、北極圏というイメージが強い。そうなのだ。寒冷地民族なのである。このD4タイプの人というのは、確かに4万年前、中国中央部で出現した遺伝子なのだが、そのときの地球の環境と密接にその体質が関係しているというのである。
▼当時地球は、6万年続いた氷河期の末期に相当するらしく、地球誕生以来、もっとも気温が低かった時代だったそうである。そこで出現した遺伝子であるため、寒冷などに対する耐久力は抜群のものがあるわけだ。ところが、逆に言えば、その時代、ウィルスや細菌は死滅状態にあり、存在していない。だから、免疫力が無い、という理屈らしい。
▼本当かどうか知らないが、解説にはそういう仮説が紹介されていた。おもしろいではないか。ということで、わたしはツングース系民族ということになり、自分の血種がはっきりしたので、最近実に気分が落ち着いている。それを知ったから、一体なにになるのだと言われれば、恐らくなんにもならない。効用はほとんどないかもしれない。が、わたしは知りたかったのだ。
▼この、ルーツというものに日本人というのはことさら興味を抱くというが、わたしはとくにそうなのだ。一応、これで安心した。4万年前から、わたしは始まっていたのである。日本においては、最古参の在日ツングース人ということになる。
▼さて、みなさんはどうだろうか。わたしがやったところでは、定価2万円くらいのものを1万円割れで、やってくれたのだが(例の社内割引というやつ)、検査の種類もいろいろあり、スポーツ選手なども、自分の仕事に役立てようとしているらしい。
▼可能性が高い疾病を知っておけば、一応は日常生活でも用心はできるというものだ。ということで、今日は、個人情報暴露の回でした。ごきげんよう。悪用しないように。
増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄
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