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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第12回・ゴールドの威力

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【閑話休題】第12回・ゴールドの威力

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-03-18 16:00:00]

【閑話休題】第12回・ゴールドの威力


▼金(ゴールド)というのは、古来その輝きが人間の心を狂わせてきた。大量の金を保有した国家は、結局それを消費に回し、インフレとなり、成長は失速していく末路となった。人類が、有史以来、記録に残っているものすべてを合計しても、地上に出てきた金のストックは16万トン。50メートルのプールにして、およそ3倍杯分だという。そんなものか、とも思う。

▼この金の単体では、最大の保有者とされているのが米国連銀である。過去、米連邦議会は連銀に対し、保有している金の総量を何度か問いただしているが、公称8000トンというくらいで、はっきりした回答がなされたことはない。しかも、誰もその8000トンという数値を信じていない。90年代以降、欧州各国中銀が放出した金の主な買い手は、当の米連銀であったから、2万から2.5万トンは保有しているのではないか、とも言われる。いずれにしろ、連銀が金を大量に保有しているということが、ある意味、ドルの暴落を不可能なものにしているといっても過言ではない。

▼たとえば、サブプライムショックの際に、ドルは米国経済が恐慌に陥るのではないか、という不安心理からドルが急落した。後で判明したことだが、このとき連銀がとったウルトラCとは、保有する金を複数の業者に貸し出し、それを担保して、金の大量空売りを仕掛けたのだ。金価格はドル建てであるから、金価格が下落すれば、ドルは自然に上昇圧力がかかる。このメカニズムを最大限に利用したのである。

▼結果、大成功。ドルは急落から急反発となり、サブプライムショックによる株価暴落やメルトダウンは、当面の危機を回避できた。世に通貨暴落というが、それはその通貨の価値を担保するものがない場合に発生する。もちろん、担保価値とは、金のようなハードだけではない。成長率や、技術力、社会の安定性など、さまざまな有形無形の担保価値はあるだろう。しかし、金はその中でも決定的にして、具体的な価値であることは間違いない。

▼金本位制度が廃止されて久しいが、いまだに金は通貨の価値を支えており、隠然たる金本位制のメカニズムが金融市場には息づいている、ということらしい。このところジョージ・ソロスが大量の金を売って、代わりに円の空売り、日本株買いを行な」い、1000億円近くの利益を挙げたといわれている。だが、ソロスの金売りで下落した金価格は1500ドル前後にまで落ち込んでいるものの、長い目でみたら、過去のインフレ率を勘案すると、実質価値として2200ドルでなければおかしいという試算もある。

▼思えば、大量に金・銀を保有していた戦国時代の日本は、このふんだんにあるハード価値を湯水のように使って、バブルを謳歌した。バブルは1980年代だけではない。過去に、それ以上のバブルの時代があったのだ。しかし、やがてスッテンテンとなり、江戸時代の究極のリサイクル社会が形成されていったという経緯がある。武田信玄が戦国最強と言われたのも、単に政治力・卓越した戦術によってばかりではなく、大前提として金山を持っていたからにほかならない。ライバルの上杉謙信も、佐渡の金山を抱えており、両者一歩も引かない確執の背後には、膨大な金による体力勝負の風景が浮き彫りとなってくる。

▼中国地方の覇者毛利元就も、銀山を財源としていた。これらを圧倒していった織田信長には、金山はもともとなかった。だが、信長の庇護を見込んで、将来的には中国大陸の商圏を奪おうとしていたバテレン(カトリック教団)が、せっせと信長に政治献金(金)をしていた。これが、信長の最大の「武器」であったことは想像に難くない。金とは、それだけ恐るべきパワーを持っている。

▼住友金属鉱山などは金山保有で有名だが、世界的には見劣りする。ただ、嘆くことはない。都市鉱山という発想が近年高まってきている。日本における年間の金の消費量は273トンだという。携帯電話1トン分には、金が280グラム含まれている。一方、金鉱山では掘り出した1トンに対して、30グラムの金の抽出があれば採算が取れるというから、こうした廃棄物はまさに「都市鉱山」と呼ばれるわけである。

▼そして、日本人というのは江戸時代、究極のリサイクル社会を経験しているだけに、再利用という発想と実行力においては世界でも比類なき遺伝子を持っている。あとは、潜在的に保有する大量の金を、どう生かすかという戦略論の問題になってくる。逆に、そこが一番日本人の弱いところかもしれないが。

増田経済研究所
コラムニスト 松川行雄



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