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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第13回・飽食の時代

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【閑話休題】第13回・飽食の時代

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-03-19 16:30:00]

【閑話休題】第13回・飽食の時代


▼安倍首相がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加方針を表明して以来、株式市場では農業・農薬・農機具関連の銘柄がずいぶんと上昇した。また、参加によるメリット、デメリットも世上、盛んに議論されている。なかなかものわかりが悪いほうなのか、いまだにとんとわからないのだが。ただ、はっきりしていることが1つある。事態はそんな次元ではない。こと食料に関していえば、世界的で需給逼迫の度合いが増しており、危機的状況さえちらついている。国際的な農業の効率化がはかられなければ、とんでもない事態になりかねないのだ。

▼批判するつもりはないのだが、事実だから書く。中国人が飽食の時代を迎えているのだ。かつて、長年中国を渡り歩いていたころ( 80年代)、中国人経営の料理屋で刺身を食おうと思ったら、大連くらいにしかなかった。それが今では一般家庭でも、こぞってマグロを刺身で食べているという。驚天動地の変化だ。

▼世界の野菜の半分を、実は中国人が食べている。豚肉は43%。水産物は37%。この食べっぷりは、所得の増大によって加速している。石油をガブ呑みするなど、まだかわいいものである。もともと、中国人は牛肉をそれほど食べなかった。しかし、いまやその美味さに味をしめたらしい。牛肉の消費量がうなぎのぼりだそうだ。そしてこの中国で起こっている現象が、やがてインドや、その他の大人口を抱えた新興国家群に波及していくことは、火を見るよりも明らかだ。中国人の大好きなフカヒレも、乱獲によって世界中でサメが取れなくなっているという。

▼ことは、肉だ、魚だ、というレベルにとどまらない。というのも、牛肉1キロをつくるのに、飼料としてトウモロコシ11キロが必要になる。豚肉なら7キロ。鶏肉なら4キロ必要だ。おまけに、トウモロコシは「地球にやさしい」エタノール燃料にも使われるから、半ば飼料と燃料用とで取り合いの構図となっている。

▼ある試算によると、60億を数える世界中の人間を、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に押し込んだ状態にしたら、ちょうど香港にスッポリおさまるというのだ。香港といったら、東京都の面積の半分しかない。そこに世界中の人間が立てるというわけだ。人間などというものは、なんとちっぽけな存在であろうか、と思い知らされる一方で、戦慄すべき事実が語られている。その世界の人口を食わせるのに、ロシア一国の農地面積が必要だというのである。しかもこれは必要最低限の計算だというから、飽食化がすすむ今日、おそらくロシア一国ではとてもすまないことだろう。ところが、かたや世界では、1日に500万ヘクタールの土地が砂漠化している。日本の全耕地面積465万ヘクタールより広い土地が、毎日砂漠化していっているというのだ。これではとても計算が合わなくなってくる。

▼お先真っ暗、という状況なのだが、ここに1つの清涼剤となるような話もある。アメリカで、当局が長年膨大な研究予算をつぎこんだ、「もっとも理想的な食生活とはなにか」という研究結果がある。4人に1人が肥満だというアメリカ人の食生活の改善は急務である。医療費保険・負担の問題からも、最重要課題の1つである。だから、過去にさかのぼって、世界中の食生活と健康状態のデータを集め、徹底的に研究したわけだが、その結論というのは、いささかわれわれには拍子抜けするようなものだ。

▼なんのことはない、昭和30年代の日本の一般家庭の食生活だというのである。野菜、豆、芋、水産物を主体としたおかずと、適度な動物性タンパク源(当時は、コロッケの中の貧弱なひき肉や、良くてもせいぜいベーコン、ソーセージくらいのものだった)、味噌汁というビタミンや栄養の補完食、そしてなにより、主食と副食が厳密に区分されているというバランス。

▼言われてみればそのとおりなのだが、それだけの年月と予算を使ってこの結果かと、呆れてしまうのは日本人ばかりだろうか。話を元に戻せば、世界の食料需給の逼迫、飽食の世界化というのも、やがては問題にもならなくなるのかもしれない。このアメリカでの研究結果の意味に世界中の人が気づけば、ことは一瞬で解決してしまうからだ。

増田経済研究所
コラムニスト 松川行雄



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