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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第142回・エスプリとユーモア

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【閑話休題】第142回・エスプリとユーモア

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-09-25 17:45:00]

【閑話休題】第142回・エスプリとユーモア


▼ジョークとは、聞き手や読み手を笑わせることだ。ただ、同じ笑いを取るのにも、えらい違いがある。つとに有名なのが、エスプリとユーモアである。よく知られているのが、フランス人の笑いは、基本的にエスプリが多いことだという。そして、イギリス人の笑いは、ユーモアが基本なのだそうだ。

▼昨年10月、このフランス的なエスプリの効いたジョークが問題視された「事件」があった。フランス国営テレビ「フランス2」が放送した情報バラエティー番組で、サッカーのフランス代表と対戦した日本代表のゴールキーパー川島永嗣に、腕が4本ついている合成写真を映した。そして司会者が、「日本には素晴らしいゴールキーパーがいた」と述べ、「福島(第1原発の事故)の影響ではないか」と揶揄(やゆ)する発言をしたのだ。

▼これについて、スタジオの一般参加視聴者からも拍手と笑いが起きたという。日本がフランスに1対0で勝ったこともあって、「負け惜しみ」ということなのだろうか。「趣味の悪いジョーク」が炸裂したわけだ。

▼これで笑う人たちについては、その感性や人間性を疑う。ただ、フランス的なジョークというのは、得てしてこういうものなのだ。被爆という現実を、こうしたジョークで笑い飛ばす感覚というのは、なかなか日本人には理解し難いものがある。が、フランスのジョーク、俗に言うエスプリというのは、人を「けなし、貶める」パターンが実は多い。

▼これを、大阪のジョーク(ツッコミ)が似ていると言ったら、かなり飛躍になってしまうが、相手に対する攻撃的な発言で笑いを取るというパターンでは、いわゆる関西の漫才も共通した点がある。ところが、関西漫才とフランスのエスプリでは、実は決定的な違いがある。

▼関西漫才の場合は、聞いていて不快に思うぎりぎりの臨界点で、寸止めをするところがワザであり見事な芸なのだが、フランスのエスプリは寸止めをしない。徹底的に相手をつぶして笑いを取るようなパターンが見受けられる。似て非なるものである。しかも、大阪人のツッコミというのは、それ自体が笑いなのではない。ボケという強烈な自虐的ギャグを引っ張り出すためのトリガー(引き金)だという点も忘れてはならない。二つの掛け合いが、笑いを生むのだ。フランスのエスプリには、ハナからボケなどはない。フランス人には、自虐的ギャグなどという発想はないのかもしれない。

▼皮肉、揶揄、侮蔑、こきおろし、けなしで、上手に笑いに持ち込むのがフランスのジョーク・エスプリなのだが、これも先述の「腕4本」の話などは、さすがのフランスでも問題視する声が上がったそうだ。ここまでくると、およそ品格が疑われる。

▼一方、イギリス人が得意なユーモアは、このフランスのエスプリとはまったく逆で、どちらかというと「自虐的笑い」のネタなのである。コメディアンのローワン・アトキンソン(なんと、オックスフォード大卒のエリートだ)の『Mr.ビーン』シリーズなどを想起してもらえば、あああれか、と合点がいくはず。それはおそらく、イギリスのユーモアというものが、どこかで「マナー」と密接に結びついていることとも大いに関係があるのではないか。

▼イギリスのユーモアの一端を垣間見ることができる、分かりやすい例がある。
中国かインドか不明だが、外国から要人を歓迎するために、英国高官がホストとなって晩餐会を開いた。その要人は、フィンガーボールが目の前にあったので、お茶だと思ってその中の水を迷わず飲んだ。居並ぶ英国人たちは、ぎょっとした。フィンガーボールは、食事中に卓上で汚れた指を洗い、脂を落とすために使うものだからだ。

▼それを見たホストは、賓客に恥をかかせるのは忍びないと思い、自らもフィンガーボールの水を飲んでみせた。ほかのイギリス人たちも、笑って一斉にフィンガーボールの水を飲んだという。

▼それが、実際にあった話かどうかはともかくとして、これがイギリス流だとされてきたこと自体が、イギリス人のユーモアのセンス、マナーを重んじる精神との関係を如実に表している。いずれにせよ、相手を不快にさせることは“罪”だという、イギリスのジェントルマン・スピリットなのだろう。

▼フランスなどの欧州大陸と比べて、どうも日本人はイギリスのほうが「普通に話ができる」相手のような気がするのだが、どうだろうか。オリンピック招致決定後、フランスの有力新聞「カナール・アンシェネ」は、腕や足が3本ある力士が土俵で立ち会っている風刺画を掲載、「すばらしい。福島のおかげで相撲がオリンピック競技になった」とのコメントをつけた。ことほどさように、私などには欧州大陸のこうした“文化性”というものが、「お下品」に思えてならないのだ。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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