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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第144回・ホワイト・ゼロ

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【閑話休題】第144回・ホワイト・ゼロ

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-09-27 18:00:00]

【閑話休題】第144回・ホワイト・ゼロ


▼一つの伝説がある。公式な記録はない。しかし、第二次大戦中、とくに戦争も終盤にかけて多発した、「白いゼロ戦」の目撃談がある。錯覚なのか、事実なのか、判然としないことから、やがて伝説と化した。

▼そもそもゼロ戦は、「零戦」と書いたが、開発当初から新聞紙上でも、ゼロとルビを振ってあったり、「れいせん」と呼んだりと、一定ではなかった。これは、終戦まで続く。だから、ここでは、最も人口に膾炙(かいしゃ)した「ゼロ戦」で通す。

▼当時の日本が神武天皇の治世から数えて2600年、要するに皇紀2600年に当たる年である1940年に正式に採用されたことから、一ケタ目の0(ゼロ)を取って、ゼロ戦と名づけられた。その前に作られたものは、皇紀2599年なら「九十九式艦上爆撃機」などといった名称だった。

▼ちなみに、日本の兵器は現在も、西暦の下二ケタの数字をその機種につけて表記をすることが慣例になっている。

▼ゼロ戦が、太平洋戦争の前半まで圧倒的に優位だったのは、なんといってもその航続距離の長さ、旋回能力や縦の上昇運動といった格闘性能の凄さだった。

▼それも、戦争が後半戦に折り返すと次第に陳腐化してしまい、その性能においてはゼロ戦をはるかに凌駕する米戦闘機の開発によって、もっぱら特攻機へと使用目的が狭められていった。

▼そんな頃、米艦隊が太平洋のウェーク島近郊海域を航行中、米空母のレーダーに多数の機影が映った。日本軍と判断し、すぐに護衛空母から偵察機が発艦した。洋上であるため、近辺に日本の空母がいると想定し、爆弾も搭載させた。

▼ところが、いくら探しても日本の艦隊を発見することができない。また、機影が映った海域にも日本の戦闘機はまったく存在しなかった。

▼米機動部隊の司令部が、攻撃隊に帰還を命じた時、折り返し偵察機から一報が入った。「敵、ゼロファイター(ゼロ戦)多数発見、攻撃されている。(怒号・悲鳴)……」。偵察機は、その後交信が途絶した。

▼米軍の戦闘機隊はすぐに現場に急行。日本の空母艦隊がいるものとして、爆撃機や雷撃機も多数発艦した。ところが、戦況は思った以上に悪かった。米軍機が次々と撃墜されていくのだ。

▼ ほうほうの体で帰還したパイロットの報告は、次のようなものだった。
「敵のゼロ戦は、いつもと違い、真っ白だ。日の丸も白かった。動きもおかしく、今まで何も見えなかったところから突然現れ、気がつくと仲間の戦闘機が数機墜とされる。しかも、ゼロ戦は、いくら撃っても弾が当たらない。いや、当たっているけれどまったく火を吹かない。俺のすぐ横を通ったが、ゼロ戦の風防ガラスは割れていたし、両翼にも多数の銃痕が残っていた。普通なら、あんなボロは飛んでいられない。でもゼロ戦に乗っていたあいつ、中でにっこり笑っていやがるんだ。そんな白いゼロ戦が何機も襲ってきた。そいつを撃とうとして、味方を撃ってしまう奴も出てきた。」

▼結局、爆撃機なども多くが帰還しなかった。日本軍側の損害はまったく不明(当時の日本海軍の記録にも、この日のウェーク島近辺における戦闘記録は存在しない)。米軍は結局、空母も見つけることはできなかった。

▼これらの証言は、当時のレーダーの性能の低さなどが理由とされ、一切採用されることなく、米機動部隊の戦闘機・爆撃機の損失は訓練中の事故として片付けられた。その後、米軍では「ホワイト・ゼロには手を出さない。ただ十字を切って帰還する」ということが暗黙の了解とされた。

▼日本軍側にも、似たような伝説がある。南方のラバウル航空隊での逸話だ。俗にラバウル航空隊と言うが、海軍・陸軍ともそれぞれに大規模な航空基地があり、実際にはラバウル航空隊という組織は存在しない。

▼ある日、警戒警報が鳴った。敵機来襲である。ラバウルは山に囲まれており、その山を越えればすぐに基地になる。米軍機はその山の上で急に戦闘を始めた。まだこちらの基地からは一機も発進していないので、戦闘の様子は見えない。どうやら、陸軍の航空隊が迎撃しているらしい。放ってはおけない。海軍航空隊も、すぐに発進した。

▼ところが、海軍の戦闘機隊が山上に到着する頃には、米軍機のほとんどは撃墜され、残存機も退避してしまった後だった。海軍機隊は、ほとんど何もせずに基地に帰還した。

▼その数時間後、いきなり別の編隊が現れた。敵の再来襲かと思われたが、今度は日の丸をつけている。「彼らがさっき米軍を撃ち落したんだろう」と考えた基地の人々は、手旗を持って所属不明の戦闘機編隊を迎えた。

▼その戦闘機隊は、翼を左右に揺らして友軍機であることを示すと、そのまま着陸態勢に入った。そして、滑走路に滑り込んだ瞬間、轟音と風を残して消えた。十数機が着陸したにもかかわらず、機影は一瞬で消えたそうだ。そのうちの一機は、尾翼の印から、つい先日撃墜されたゼロ戦であったことが、確認されている。ただ、この目撃談は、「白いゼロ戦」ではなかった。

▼霊性が物理的に「実体化」するということは、あるのだろうか。撃墜された米軍機、目撃した日米兵士。いずれも“事実”なのだが、ホワイト・ゼロは、あくまで伝説の中で生き続ける。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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