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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第145回・幽霊を殴った男

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【閑話休題】第145回・幽霊を殴った男

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-09-30 18:30:00]

【閑話休題】第145回・幽霊を殴った男



▼霊性が「実体化」するということはあるのだろうか。どうも、あるらしい。私の知人に、幽霊を思いっきりぶん殴った男がいる。怪談とは思えないほど、実に“痛快”極まりないので、ご紹介しておく。

▼その日、彼は自宅で寝ていた。ふと目が覚めたのだが、いきなり生涯初めての「金縛り」というのにかかったらしい。なにしろ、指一本動かすことができない。ただ、あわれな自分のしゃがれた声だけが聞こえる。

▼そのうち、誰かが自分の足の上に乗っかってきたのが分かった。そもそも電気を消しているから暗いのだが、窓から外の街灯やら、近くのビルの明りや月光などが差し込んでいるから、漆黒の闇というわけでもない。

▼ところが、その自分の上に乗ってきたものは(どうやら男らしいという)、上から下まで真っ黒だった。それこそ、漆黒の闇の塊のようだったらしい。彼は、必死でもがいたが、テコでも体が動かない。汗ばかり噴出してくる。

▼やがてその黒い男は、自分の腹の上に移り(明らかに人間の重さを感じたという)、やにわに首を絞め始めたのである。これは苦しい。しかも、その男、笑っていたというのだ。顔の目鼻立ちも皆目分からないはずなのに、どうして笑っていたと分かるかというと、そう感じたという。

▼怒りがこみあげてきた。すると、ふと体が動けるようになったのが分かった。普通なら、恐怖で身がすくむところなのだろうが、彼曰く、「とにかく腹が立ったんだよ」と。「この野郎!」と言って、黒い男の手を払いのけ、やにわに上半身を起こした。

▼黒い男は、どうやら相当びっくりしたらしい。“幽霊”も予想外の展開に、かなり動揺したようだ。少なくとも、彼にはそう感じたという。黒い男の「アッ」といったような、表情が「見えた」というのだ。

▼そうなると、こっちは強い。勢いというものがある。黒い男が服を着ていたのかどうか、感触は覚えてないらしいのだが、そいつの肩につかまって、中腰あたりまで立ち上がると、「馬鹿野郎!」と怒鳴り声をあげて、思い切りぶん殴ったのだそうだ。

▼黒い男は、そのままベッドから足元の壁にぶっ飛ばされた。そして、「アァァ」とも「ウォォ」ともつかない、得体の知れないうめき声をあげながら、窓に向かって走り出したそうだ。彼はそれではとてもおさまらず、「この野郎、逃げるかぁ!」と追いかけ、窓から飛び出す寸前の黒い男の尻から背中にかけての場所に、回し蹴りを食らわせたそうだ。今度は、「ヒィィ」とも、「キィィ」ともつかない声をあげて、もう一度壁に叩きつけられた。そして悲鳴を挙げながら窓をすり抜けて、表に消えていったそうだ。

▼「考えてみれば、強盗と同じだな。どこから入ったか知らんが、窓から逃げていったんだから」と、彼は話してくれた。回し蹴りをしたときの感触というのは、まったく普通の人間に食らわせているのと同じ感触だったそうだ。ちなみに翌朝、「あれは夢か」と思い直してみたそうだが、右手のこぶしは、赤く腫れ上がっていたそうだ。右足はなんでもなかったという。

▼さらに驚くべきことは、乱闘している最中、黒い男がぶつかったりしたあたりのものが、床に落ちて散乱していたという。「確かに殴ったんだよな、俺」と、自分で言いながら、鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしていた。

▼いったい、彼を襲ったのは、本当に幽霊だったのか。それとも、生身の強盗だったのか。しかし、彼は「間違いなく、ありゃ幽霊だ」と今でも、言い張っている。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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