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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第170回・食品ロス

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【閑話休題】第170回・食品ロス

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-11-06 18:45:00]

【閑話休題】第170回・食品ロス


▼食品の安全基準には賞味期限、消費期限と二つあるが、私は結構その辺について無頓着で、昔から期限切れのものを大丈夫だろうといって食べては、えらい目に遭ったことが多い。

▼ちなみに賞味期限は、ハム・ソーセージやスナック菓子、缶詰など常温で保存がきく食品に表示されるもので、開封されていない状態で通常保存したときに、おいしく食べられる期限が示されている。一方の消費期限は、弁当や生菓子など常温では長く保存できない食品に表示されており、期限を過ぎたら食べないほうがよいとされている。

▼どうやら、日本ではこの賞味期限のほうを見直す気運があるらしい。廃棄される食品のことを「食品ロス」というが、これをなんとか減少させようというのだ。当然、企業にとっては利益率の改善につながるし、消費者にとっては生活費の節約につながる。また、東日本大震災でにわかに注目を集めるようになった、備蓄食の開発も期待できる。

▼即席麺のメーカーはすでに、来年の春から賞味期限を延長することを決めたようだ。包装材の技術改良も進んでおり、品質が維持できるという判断らしい。具体的には現在6ヶ月が主流の袋麺は8ヶ月、カップ麺は5ヶ月から6ヶ月に延長される見通しだ。

▼驚くべきことに、年間に発生する食品ロスは、500万トンから800万トンにものぼるという。一人当たり、一日におにぎり一個から二個を毎日廃棄している勘定だ。これは、日本の米の収穫量一年分( 850万トン)に匹敵する。飢餓に苦しむ世界各地への食料援助量(年間390万トン)を遥かに超える量だ。以前にもこのコラムで書いたが、日本の食糧自給率というものは、やはり根本的に何かが間違っているとしか考えられない。

▼これを世界レベルで見てみると、9億人とも言われる飢餓線上の人口に対して、3億トンが廃棄されていることになる。つまり、これは世界中の年間生産量の三分の一に相当する。膨大なエネルギーを使って生産した食品を、これまた膨大なエネルギーを使って廃棄処分しているわけだから、皮肉なこと極まりない。

▼メーカーから、卸し、小売りなどへ製品納入する場合には、この賞味期限から換算して、「三分の一ルール」というのがあるらしい。製造日から賞味期限まで三分の一を経過したものは、納品しないというものだ。これも二分の一にする動きが強まっているようだ。実際、この三分の一ルールというのは、日本独自の商習慣だそうだ。

▼また、統計調査によると、どうも年齢が高くなればなるほど、廃棄の比率が高くなる傾向にある。不思議な現実だ。通常、高齢者は食べ残しが少ないはずなのだが、食べきれずに捨てることが多くなっているらしい。「もったいない」と思いがちな高齢者が、実は一番食品ロスを多く発生させているというのは、これまた皮肉な結果だ。ただ、近年、この高齢者のロスの比率は低下してきているようで、小売り側による、小分け売りなどのサービスが浸透してきていることも影響しているらしい。

▼地域別では、ダントツで九州の食品ロス比率が高い。ついで東北、中国、四国と続き、関東・近畿・東海などの大都市圏では、相対的に比率が低い。もっとも九州の食品ロスの多さというのは、食べ残しなどではなく、期限切れによる直接廃棄が多いようだから、おそらく事情があるのだろう。一番ロスの少ないのが沖縄で、「もったいない」意識が、一番高いのかもしれない。

▼さらに食品ロスの中身を見ていくと、これまた面白い。世帯食一人当たり、一日に41グラムということだが、このうち野菜が20.2グラムと圧倒的に多いのだ。さもありなんという感じだろうか。なにしろ、野菜は痛みやすい。

▼水はこの食品ロスの中には含まれていない。が、水こそ農業の根幹であり、世界の水生産の70%が農業に使用されている。たとえば、牛ステーキ200グラム分を作るのに、その飼料(エサ)の生産に必要な水たるや、なんと風呂釜20杯分だというから一驚する。

▼こうやって統計を見ていくと、利便性と引き換えに多くの新たな問題を、私たち人間はいつも増やしていっているようだ。コンビニが24時間営業をするために、最初から廃棄を想定した大量仕入れが行なわれていることは、よく知られている。たしかに、直接的には「もったいない」という類の話なのだが、単にそれだけでは済まされない。何か現代社会のシステムの妥当性が、根本的に問い直されているような事実が、この食品ロス問題には見え隠れする。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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