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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第188回・日本人と核

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【閑話休題】第188回・日本人と核

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-02 18:30:00]

【閑話休題】第188回・日本人と核


▼日本は唯一の被爆国だからなどと、平和主義的なことを言うつもりは毛頭ない。逆に、核武装でもしなければ、得体の知れない近隣のスーパー・エゴイズムを抑止できないなどとも、言うつもりはない。私が知りたいのは、事実だけだ。

▼原子力発電というものは、今でも、どこまで安全なのか、まったくもって判然としない。不勉強だからなのかもしれないが、あれだけの地震(というより、実質的には津波による被害が圧倒的だったと思われる)によって、揺らいだ安全神話は、そう簡単には回復しない。

▼それでも、原子力推進を主張する人たちは(とくに政府・関係省庁の官僚)、原子力発電に頼らない場合、いったいどういう事態になるのか、明確にして具体的な説明責任を果たしているとはとても思えない。私のような素人でも分かるようにと、心から希求している。が、どうやら、それはおざなりにしたまま、どんどん現状復帰だけが進められてしまうようだ。利権が絡んでいるからではない、と断言するのであれば、科学的な論証をはっきり示してもらおう。

▼人間が処理できないものを使うということは、そもそも自己撞着(自己矛盾)のそしりを免れないだろう。なにしろ、核燃料のゴミ処理一つをとっても、10万年かかるそうだ。これは、処理できないのと同じではないか。

▼では10万年後の世界は、いったいどうなっているのか。人類は、どうなるのか。その想定は実に難しい。だから逆に、10万年前の世界を振り返ってみよう。10万年前というと、われわれ現代人がアフリカをその起点とし、一人のイブから世界に拡散していった時期である。ヨーロッパ、アジアに進出した頃には、すでに先住民のネアンデルタール人もいた。そして、ユーラシアとアラスカは陸続きで、マンモスが生息していた。

▼日本も大陸と陸続きで、日本海は湖だった。阿蘇山が大噴火し、世界一のカルデラを形成したのもこのころだ。続く各地の火山大噴火で、鹿児島湾や硫黄島などが形成される。1年に8~9センチメートル移動する太平洋プレートは、この間に約8キロメートル移動したことになる。10万年の変化はこうしてみると、とんでもない時間の尺度だということが分かる。

▼では、これから10万年後の地球や国家、人類の存続は、いったいどうなっているのか。見当もつかないような時間軸に、核という問題の処理を委ねるのは、あまりにも無謀な気がするのだがどうだろうか。

▼原子力がなければ、いったいどれだけ電力が不足になるのか。それをカバーするのに、どれほどの負担を強いられるのか。とにかくその事実を、まず誰にでも分かるように明らかにしてもらいたい。この国は、いつもそうだ。問題が起こると、なんとなく責任の所在も不明なままに、結局みんなで赤信号を渡ってしまうのである。71年前に起こした戦争のときも、誰も責任を取らない伏魔殿の中で、「ほかに方法がない」と決めつけてしまったところから、悪夢が始まったのではないか。憲法や政治体制の良し悪しではない。この点が日本人の最もだらしのないところだ。

▼曖昧でいいときもある。それで問題を上手におさめる智恵において、日本人に勝る民族もそうはいないだろう。しかし、曖昧ではいけないときがあるのだ。それが、今なのではないだろうか。68年前もそうだ。日本はアメリカに負けたのではない。日本自身の「リアリズムのなさ」に負けたのだ。こんなことだから、園遊会で天皇陛下に直訴状を手渡すなどという、意味不明の国会議員が出てきてしまうのだ。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄





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