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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第199回・花との付き合い方

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【閑話休題】第199回・花との付き合い方

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2013-12-17 18:45:00]

【閑話休題】第199回・花との付き合い方


▼これから冬がだんだん深まっていく。寒いから、暖かい季節のことを無理して書こう。春の花のことだ。情景を思い浮かべるだけで、多少体の筋肉がほぐれてくるような気がするから不思議だ。

▼菜の花、たんぽぽ、そういった春の花を東京で見ることは、ほとんどない。子供の頃は、横浜の郊外といったらまったくの田舎だった。小学校下級生のころは片道3キロの道のりを歩いて通っていたが、まだ里山が残っていたし、田んぼがずっと広がっている中で、季節の移り変わりを肌で感じることができた。今の都会の子供たちは、本当に気の毒だ。

▼横浜中心部の高校にいたころは、新学期になると坂道を延々と桜の花が学生服に舞い散る中を通ったが、桜が新しい時節の区切りとしては、確かに象徴的な思い出として残っている。たぶん、日本人の多くがそうなのだろう。しかし、どうも、私は桜が好きになれない。

▼古来、日本人は桜が好きだという。本当なのだろうか。幕末の志士たちは、どういうわけか梅が好きだったようだ。尊王の志士たちは、幕吏の追捕から逃れるため、偽名を多用したが、たとえば日本人の大好きな坂本龍馬は、才谷梅太郎と称した。長州の高杉晋作も、谷梅之進、谷梅太郎、谷梅乃助などと称した。二人とも、よほど梅が好きだったようだ。

▼私も梅が好きだ。寒い時期に凜として咲く姿はりりしい。個人的にはあの桜のばらばらと散っていくさまが、上品には思えないのだ。落ちた後も汚い。日本人が桜が好きだと言うのは、なかなか納得がいかない。平安時代、「花」と言ったら、無条件で梅を意味した。

▼華やかじゃないか、というのなら、桃のほうが勝っている。なにしろ色っぽい。健康的な色気とは桃のことだ。東京から車で甲府へ向かう途中、笹子を抜けると甲府盆地が見えてくる。4月上旬から中旬、桃の季節には、盆地一面が桃の花で埋め尽くされている。圧巻の桃源郷だ。まだご覧になったことがない方は、一度行かれたらいかがだろう。思わず感嘆の声を挙げるはずだ。

▼ちなみに、真近で見たときに、「梅」「桃」「桜」の違いが、実はあまり分かっていなかった。全体的に、梅とか、桜だとかわかっていたが、具体的にどう違うかと問われると、考えてしまうことが多かった。せいぜいそれが何月か、ということと、全体的な印象で見分けていたようなものだった。

▼たしかに梅も桜も桃も、同じバラ科・サクラ亜科・サクラ属である。桜は、枝から花枝が付いていて、その先に房状に花が付いている。しかし、桃と梅は、花枝がなくて、枝に花が直接付いているのだ。では、桃と梅はどう見分けるか。桃は、花芽が2個ずつで、しかも花が密集して咲いている。梅はというと、花芽が一個ずつで、花と花との感覚が広いのだ。

▼花弁にも違いがある。桜の花弁は楕円形で、先端が割れている。ところが、桃の花弁は、楕円形だが先端が尖っているのだ。梅は、綺麗な円形をしていて、先端も丸い。

▼花の付き方にも違いがある。桜は、枝の先のほうに花が付いているが、桃は枝全体に花が付いている。梅は、枝の付け根のほうに花が付いているのだ。これだけ違いをはっきりさせれば、まず間違えることはない。が、これに椿が入ってくると、私のように花に疎い向きは、もう大混乱になる。

▼さて、せっかく冬であるから、冬の花のことも書いておかなければなるまい。ただでさえ花の知識が乏しい中で、個人的には冬といったら、山茶花(さざんか)くらいしか思い浮かばない。ただ、京都の詩仙堂の小有洞(しょうゆうどう)の門前に、樹齢四百年とも言われる巨木を知ってから、私にとっては数少ない花の知識を得る一里塚になった。庵(いおり)に舞い散る雪かと見間違えそうだったのを覚えている。

▼1月になると、もうじき春だと季節の変わり目を告げるのが、?梅(ろうばい)だろう。12月から咲き始めるものもある。なにしろ香りが濃厚で、すぐ分かる。?「梅」と書くが、梅ではない。ロウバイなのだ。種子にはアルカロイド系が含まれており、服用するとストリキニーネ中毒を起こす。花言葉は、「先導」「先見」。花の中ではひそかに一番好きなものだ。新たな年が始まることを、最初に気づかせてくれる花だからだ。

▼実は、季節こそ違うが、?梅と同様、季節感を強く私が認識するのは、金木犀(キンモクセイ)である。中国では丹桂がこれに当たるが、一般には桂花(ケイカ)の名で呼ばれることがある。9月下旬から10月初旬に、あちこちで一斉にこれまた強い芳香を放つ。ああ、これで寒い季節がこれからやってくるのだな、と思い知らされるとどめの一発なのだが、私の中では、妙にこの?梅と金木犀が、花という花の中で最もイメージが強い。

▼どうやら、花の匂いが私の鈍感な季節感に区切りをつけてくれているからなのだろうか。私にとって花というのは、見た目を愛でるというより、匂いを尊ぶもののようだ。みなさんは、花とどう付き合っておられるだろうか。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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