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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第215回・クールジャパン

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【閑話休題】第215回・クールジャパン

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-01-16 18:45:00]

【閑話休題】第215回・クールジャパン



▼過去1400年間、地球上では「中緯度」地域の平均気温は落ち込んでおり、かなり寒かったらしい。中緯度とは、おおよそ30度付近から60度付近の緯度を指す。ちなみに、低緯度は0から30度付近、高緯度は60度付近から極点(北極・南極)までと分類されている。

▼1400年ごろから1850年前後まで世界的に寒冷化が進み、気温は現在よりも、平均で1~2度低く、この期間は「小氷河期」と呼ばれている。

▼もちろん、気温低下の規模は、地域によって多少の違いがあるものと思われる。日本の場合、小氷河期の時期は18世紀前後だとされている。小氷河期の中には、二回ほどとくに寒冷な時期があり、その一つが15世紀くらい、もう一つが江戸を寒さが襲った18世紀だという。

▼だから、時代劇などを見ると、冬の場面ではやたらと雪景色だ。いまでは東京で雪が降ることなど稀になってきているが、18世紀だけは、それ以前やそれ以降と比べても極端に雪が多かったようだ。

▼ちなみに、この寒冷時期だった18世紀前後というのは、宝永4年( 1707年)に富士山が大噴火している。続いて安永4年( 1775年)には三原山の大噴火、安永8年( 1779年)には桜島の大噴火、天明3年( 1783年)には浅間山の大噴火があった。大噴火が連続して発生したことになる。当然これらは、天候不順や異常気象を引き起こす要因になったはずだ。成層圏に達した火山灰の微粒子が、日射を散乱させることにより、気温の低下は一層進んだかもしれない。

▼文政5年( 1822年)2月22日には、品川で2メートルの積雪だったという記録が残っている。とんでもない豪雪ではないか。また、この年と2年後の文政7年( 1824年)には、淀川が氷結したというのだから驚きだ。

▼この当時、寒い冬を越すのに、さまざまな工夫をした。厳しい環境が、人々の智恵をいっそう洗練されたものにしたのだ。江戸中期ごろから、市中の民草(たみくさ)は風流というものを味わうようになっていったようだが、その一つ、とくに甘味には、こだわりがあった。砂糖が貴重だった時代である。何をするにせよ、この甘味というのは重宝された。

▼そして江戸時代にあって、もっとも一般的で人気のあったスイーツは干し柿であったが、これに工夫が加えられて、さまざまな和菓子も生まれた。冬の貴重な保存食にして、なおかつ栄養満点、優れた健康食品であり、なんといってもその甘さは、羊羹(ようかん)の1.5倍である。元禄10年の『本朝食鑑』にも、「和菓子の甘さは、干し柿を最上とする」とあるくらいだ。

▼ちなみに、(これは江戸時代にはあったかどうか、定かではない)干し柿を使ったお菓子というのがある。工夫を加えているわけだが、まず、包丁で干し柿のヘタを取り、破れないように種を取り除き袋状にする。袋状になった干し柿の中に茹でた栗を入れる。先ほど取ったヘタに小麦粉を付け、栗を詰めた先程の干し柿に口を合わせる。

▼そして、これを低め(目安として170℃)の胡麻油で2~3分揚げる。表面がこんがりキツネ色になったら出来上がり。油を切って冷めてから輪切りにし、いただく。お江戸の上品なスイーツ「柿衣(かきごろも)」の出来上がりだ。年齢が上がってきたためであろうか、こんなものが意外に美味しく感じてしまう。素朴なのだが、深みがある。

▼ただ、江戸時代の日本人の、お菓子に対する偏執的なまでのこだわりと執念は、ちょっとほかの国ではお目にかかれない。

▼伝統的な和菓子にしろ、現代的な洋菓子やスナックにしろ、あるいは創作菓子にしろ、いずれもアニメ級のクールジャパンであると思うが、どうしても料理(和食)のほうが前面に立ってしまい、和菓子のほうはその陰に隠れがちである。

▼おそらく、たいていの外国人は、柿衣のような和菓子の存在自体を知らないだろう。私たちの身の回りには、あまりにも当然すぎて気がつかない「クールジャパン」があるはずだ。寒さ厳しき折、日本が誇る和菓子と熱い緑茶などで、身も心も温められてはいかがか。とにかく、ご自愛を。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄



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