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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第231回・男の小物

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【閑話休題】第231回・男の小物

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-02-07 15:34:00]

【閑話休題】第231回・男の小物

▼男は小物が大好きだ。どういうわけだか、小物に惹かれる。男という動物は子供の頃からそのようだ。そして、ほとんどがただのガラクタになっていく。

▼小物のうちで、これまた絶滅危惧種になりつつあるのが、万年筆だ。わたしは、ほとんど万年筆で、相場の雑記帳を書いている。情報やデータ、チャートのイメージなど、どんどん大学ノートに書き殴っていく。新聞のスクラップも構わず貼り付けていく。そのノートは、ツバメの特A版、黄ばんだ紙質のものと決まっている。

▼さて、その万年筆だが、周囲でもこれを日用している人をほとんど見ない。インク類では、ボールペンに圧倒されているといっていい。鉛筆は、学生時代までの話で、大人の世界ではほとんどボールペンのようだ。

▼この万年筆、やがて無くなるのかもしれないが、最後の一人になってやるという感じで使っている。ペンの先には、堅いイリジウムがポチっと付いている。それでも長年使っていれば、磨耗するわけだが、それがその人の癖であり、愛着も湧いて来るというものだ。

▼インクも、大事なことを書き分けたりするので、黒色と、青空のように明るい青色と、明るい赤色で、三つの万年筆を使い分けている。もっとほかの色も欲しいところだが、それではノートがとんだお祭り状態になってしまうので、品格のことを考えて我慢している。

▼書き物といえば、手帳というものある。わたしの場合は、学生時代から能率手帳と決まっている。それ以外、使ったこともない。使う気もない。男の小物というのは、理屈ではなくこういう妙なこだわりがあるから困ったものだ。

▼この男の小物こそは、その人の薀蓄(うんちく)の塊だといっていい。その人の世界観そのものだ。

▼昔、江戸時代などの男たちは、さまざまこの小物へのこだわりがあった。もっとも、それは江戸人特有の「粋(いき)」へのこだわりなのだが、たとえば、「煙草入れ」「鼻紙袋(お金や薬などにも使った)」「手拭い(てぬぐい)」など。

▼なかでも、高価でマニアックなこだわりが集中したのは、「根付(ねつけ)」だ。この根付は、煙草入れや、矢立て(筆記具)、印籠(薬入れ)、小型の革製鞄などを、紐で腰帯から吊るして持ち歩くときに用いた留め具のことだ。

▼ほんの数cmから、小さいものでは1cmくらいのものもあったようだが、堅い材質や象牙が多い。江戸時代が進むにつれて、実用性以上に、その装飾性が競われ、江戸時代後期には爆発的に流行したようだ。ものによってはその精密彫刻ぶりから、もはや美術品として蒐集(しゅうしゅう)の対象となっている。

▼本家本元の、江戸時代の著名根付師などの作だと、ロンドンのオークションで、2000万円から5000万円の値がついてきた記録がある。

▼かく言うわたしも、実は根付を使っている。塗香(ずこう)入れの留め具として安物の木製で、瓢箪(ひょうたん)の根付だ。この根付だが、実は、現代ではもはや化石のようにしか思われていないだろうが、なんと発想そのものは爆発的な勢いで使い継がれているのだ。それが、携帯のストラップである。

▼もともと根付のデザインは、人、動物、植物などのキャラクター化によって造形されてきた。対象となるものの特長をデフォルメ(対象の特徴を誇張・強調して簡略化、省略化した表現方法)し、シンプルに抽出してみせ、巧みに意匠化することにかけては、日本人の右に出るものはいない。ずっと後世の現代抽象画の巨匠・ピカソもびっくりの完成度の高さだ。

▼根付も、キャラクター文化そのものだ。だから、これに現代のアニメのキャラクターが結びついて、大きく育った。携帯ストラップという概念も、世界的には日本が流行の発信源であり、アジアから欧州へと伝搬していった。

▼一度は死んだと思わせて、じつはどっこい、しっかりと現代人の間に、姿を変えて生き残っている。しかも若い女性には、必須アイテムとなってしまっている。日本の古くからのこだわりも、なかなか捨てたものではない。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄


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