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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第276回・草食系男子の増殖

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【閑話休題】第276回・草食系男子の増殖

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-04-15 15:51:00]

【閑話休題】第276回・草食系男子の増殖

▼マスメディアで「草食系」という用語が使用された最初の例は、2006年10月に、コラムニスト・編集者の深澤真紀氏が『日経ビジネス』のオンライン版だそうな。それからおよそ2年後の2008年に女性ファッション雑誌『non-no』( 2008年4月5日発売号)において、深澤氏の監修の下「草食男子」特集が掲載され大きな反響を呼んだ。

▼もともと性欲の強い性格を肉食動物(狼、女豹など)に例える文化的背景があり、そこから派生した表現らしいが、実際の野性動物においては、捕食対象になってしまう草食動物の方が個体数が多く多産である。従い、一般的に肉食動物に比較して生殖行動は活発だ。そのためイメージ先行で、生物学的な草食動物の特性とはかなりギャップがある。

▼深澤説によれば、「草食男子」じゃ、『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」ではない、「肉」欲に淡々とした「草食男子」』という定義になっている。その後、次第に修正が加わり、いまのところは「心が優しく、男らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと」という意味になっているようだ。

▼なんと、この「草食男子」、まじめに医者が研究した結果があったのだ。日本医事新報 No. 4659号( 2013.8.10)にその報告が掲載されている。この調査によると、40歳以下、平均年齢30.8歳の21名を対象としたというから、サンプル数は致命的に少ない。従い、どこまで蓋然性があるかどうかはわからない。

▼その調査が定めた「草食系」の基準は、
?女性への興味が強くない
?何事にも態度が控えめ
?声が小さく従順な感じ
?色白で筋肉質ではない
?消化器系が弱い
ということだったらしい。
これらの人たちに対して、男性ホルモンであるテストステロンを実際に測定してみたのだ。

▼その結果、21名中4名19%が加齢男性性線機能低下(late onset hypogonadism: LOH)を示し、6名( 28.6%)が境界域だったというのだ。単に外見上「草食系」とされた中で、なんと半分近くの人が、実際に男性ホルモンの値が低い、という結果だったわけだ。いくらサンプル数が少ないとはいえ、この確率はけっこう馬鹿にならない。

▼やはり草食系男子は男性ホルモン値が低いという印象が、現実に近いものだということのようだ。

▼一般的に男性ホルモンはストレスにより減少するとされている。東京における中年男性の男性ホルモン値は、他の地域の高齢者よりも低いというデータは確かにある。しかし、もしストレスだけが原因なら、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールは上昇するはずだが、これもまた低値を示しているところから、ストレスが原因とは考えにくい。専門家は、そう判断する。

▼2010年の調査では、日本の16~19歳の男性の36%が自分を草食系だと考えているという結果が得られている。また、テストステロンは凶悪犯罪者において高いことが報告されている。つまり、「草食系男子」は女性に積極的ではないが、平和で友好的な人たちであると言えるようだ。一見、このことは世の中の静謐(せいひつ)にとって、好ましいようでもあるが、一方ではこのことが日本における出生率低下の一因であるとすると、放置できない問題かもしれない。

▼1985年から1991年に生まれた人たちを対象としたインターネット調査によると、女性では37.5%が草食系であると回答している。これに対して、男性は45.4%が草食系であると回答。

▼一体、この社会現象はなにが原因なのだろうか。食生活の変化、女性の社会進出、経済の長年の低成長と時代閉塞感、一人で楽しめるゲームとインターネットの普及・浸透、いくらでも原因と考えられそうなことは思いつくのだが、果たしてそれは日本だけのことだろうか。海外でも似たり寄ったりであろう。せいぜい、海外と違うとすれば、長年の低成長と時代閉塞感くらいのものだ。

▼もし、「長年の低成長と時代閉塞感」が日本における「草食系男子化」現象の主たる要因であるとしたら、ますます経済を活発化させなければならないことになる。それだけで、おそらく一時期流行の社会現象として、歴史に残るだけのことだろう。

▼しかし、もしそうではない、別の理由があるとしたらどうだろう。姿が見えないだけに、なんとも得体の知れないこの国の病巣がえらく気になってきている昨今である。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄



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