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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第310回・トトロ 前編

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【閑話休題】第310回・トトロ 前編

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-06-05 15:13:00]

【閑話休題】第310回・トトロ 前編

▼正直、アニメ・漫画という世界はとんとご無沙汰だったのだ。小学校までは溺れるように漫画ばかり読んでいたが、卒業した。中学以降、漫画をマジで読んだことがまったくない。電車の中などで、いい大人が漫画を読んでいると、不思議でならなかった。

▼そうしたアニメ・漫画の概念を一変させたのが、宮崎駿の作品群だった。目からうろことはこのことだ。ひょんなことで「千と千尋の神隠し」を見てびっくりしてしまったのだ。これは、子供が見てわかるのだろうか。大人でさえ、いくらでも深読みができる内容になっているではないか。

▼この「千と千尋・・・」が、日本の古代史の暗部にかかわった、重大なテーマを潜伏させていることは、閑話休題の第81-82回「日本のダヴィンチ・コード」で紹介した通りだが、そのほかの作品でも、非常に考えさせるポイントがいくらでもある。

▼「となりのトトロ」は、宮崎の最初の大ヒット作だが、あの妖怪(?)・トトロは、なんのためにあのドラマの中に存在しているのだろうか。ほとんど、トトロは、アニメ中のドラマ展開に、意味のある絡み方をしていない。トトロはいなくても、筋はちゃんと進行するのだ。「トトロ」を、ハッピーエンドで解釈している多くの人たちに、僭越ながらその幻想を壊すようないじわるをしてみようと思う。

▼あなたにとっての「トトロ」があることは、十分に認める。しかし、わたしにもわたしの「トトロ」がある。他意はない。

▼「となりのトトロ」をまだ見たことが無い方は、一度DVDでもご覧になることをおすすめする。1953年の日本の、どこにでもあった「里山」が設定である。見て損はない。あの「世界の黒沢明」が「100本の映画」の中に、アニメ部門では唯一選んでいるくらいだ。トトロを知らない方に、トトロの話を書くのはかなり恐縮するが、(それも前後編と二回分もだ。)少々我慢していただこう。

▼宮崎の描いた「里山(さとやま)」の風景には、昔から数多くのこうした妖怪が棲んでいた。彼のアニメの中で、いつも非常に重要な役回りを演じる妖怪の類いだが、その完成度の高い原点が、このトトロだとすれば、トトロは、劇中でなにも言わない。なにもしない。なにも影響を与えない。およそ、宮崎アニメの中で、典型的な妖怪の原点がそこには描かれている。

▼おそらく、妖怪というものは、そういうものなのだ。意味がないのだ。しかし、存在することそのものに意味があるのだろう。それではあれは一体、なにを仮託した存在なのだろうか。最後まで明確な正体は明かされないまま終わる。

▼さて、ここからが問題だ。トトロ誕生以降、ちまたでは数多くの都市伝説が生まれている。わたしがこのアニメを見て、「?」と思ったところと、あるていど巷の都市伝説は「かぶ」る。それは当然の疑問だからだ。

▼サツキ(皐月、12歳)とメイ( 4歳)の姉妹は、トトロと知り合ってから、次第にその人間としての影が薄くなっていく。妖怪とは、死そのものであるから、二人の死を暗示するものとして、そこに存在しているにすぎない。俗な言い方をすれば、トトロは死神にほかならない。死が迫った人間にしか目にすることができないのだ。だから、作中、後に行方不明になるメイから最初に見始めたのだ。やがて、姉のサツキまでが見るようになる。二人に、死が近づいていたのだ。

▼サツキは事実、序盤ではトトロを見ることができない。メイが行方不明になってから、「妹のところへ連れて行って」と願いをかけると、見えるようになった。自分の死を引き換えにである。

▼作中でも、主題歌の中でも、「子供のころにしか見えない」と上手にカモフラージュしているが、同じ子供のカンタたちには見えていない。子供であることが、要件ではないことは、明らかだ。

▼もともと、メイが療養所にいる病弱な母親のところへ、大事にしていたトウモロコシを届けようとして、行方不明になったところから、話は急展開している。おそらく、メイはすでに死んでいるはずだ。

▼二人は、「墓道」「森塚」などと行き先表示された「猫バス」に乗って、母親の所に向かう。この段階で、二人ともすでに、この世にいないことになる。二人が、病室の外の大木の枝に座って、母親の様子を伺う。

▼持ってきたトウモロコシは、母親に確かに届いた。が、母親は、二人が来ているような気がしながらも(彼女は、「サツキとメイが笑ったような気がする」と言っている)、二人の姿を見ることができない。ここで描かれている事実は、言うまでもない。

(後編に続く)




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