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増田経済研究所『閑話休題』バックナンバー

【閑話休題】第323回・王道のグルメ

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【閑話休題】第323回・王道のグルメ

【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻:2014-08-29 15:15:00]

【閑話休題】第323回・王道のグルメ

▼「ねこまんま」と何故呼ぶのかわからないが、猫に食わすなどもったいない。例の、冷飯に温かい味噌汁の残りをぶっけるあの食べ方だ。とくに美味いと思うのは、赤出しの味噌汁、とりわけシジミを使ったときは格別だ。まず、家庭によっては忌み嫌われる食べ方らしい。わたしの実家では普通のことだったが、家内の実家では禁忌だったようだ。

▼ありあわせのもので、ジャンキーながら、実に美味い食い方というのは、いろいろあるものだ。最近では、クックパッドのホームページ上で、アノ手コノ手のメニューが花盛りとなっている。

▼本人がよければ、わたしは食い方など何でもアリだと思っているほうだが、わたしがよくやる例を挙げてみよう。

▼これは結構定番だろうが、カップヌードルの残り汁を使う。冷や飯が中途半端に残ってしまっている場合など最適なのだが、これに残り汁をぶっかけて食らう。とくに、カップヌードルの麺だけでは、イマイチ腹が満たされていないという場合に格好のシメになるのだ。人によっては、「うまい棒」を突っ込むそうだ。

▼だいたいからして、この「有り合わせ」の食い方というのは、どういうわけか「汁物」、流動食が多い。たとえば、またサバ缶の残り汁をご飯にかけるという手もやる。醤油を垂らすのは、必須だ。パンチが出る。

▼この種のジャンキーな食い方というのは、食パンにもある。たとえば、西日本の人は眉をしかめてしまうかもしれないのだが、納豆を食パンにかけ、その上に生卵を置く。これで、トーストにするのだ。出来上がったら、絶対に醤油をかけて食うのである。いわゆる「納豆トースト」だが、昔はゲテモノの最たるものだったようだが、今では結構東日本では、一部に市民権を得ているようだ。

▼ちなみに、わたしの父親は、不思議なトーストの食べ方をしていた。「雲丹(うに)」の瓶詰めから、うにをスプーンですくい取り、トーストの上にあたかもジャムのように伸ばして食べるのだ。これは、子供の頃から一緒に食っていたので、非常にわたしなどには思い出深い、美味いトーストの食い方なのだが、はたから見たらとんでもない食べ方なのかもしれない。実際、その後、一人としてそういう食べ方をする人に出会ったことがない。

▼納豆を使う、かなり贅沢な、しかしジャンキーな料理としては、刺身と併用するというのがある。言わば納豆スタミナ丼なのだが、刺身(イカ、タコ、まぐろ、白身魚など、けして値段の張るものでなくてよい。まぐろなど、「中落ち」で良いのだ。)と沢庵を小指の先くらいに切って、生卵と納豆であえて、白米にかけて食べるのだ。実は、これは昔、高級料亭の金田中で出していたことがある。

▼けして一般的には正攻法ではない、しかしちょっとこだわったものの食い方というのは、おそらく各地特有のものがあるだろう。中京地域の「ひつまぶし」などというのも、その類と思う。

▼話は飛ぶが、山に登ると、持参する食材が限定されるだけに、ちょっとしたものでなんとかしてしまおうという工夫が結構出てくる。わたしにも、山登りのときにやった定番というものがある。小さなキャベツを横に半分切りにして持っていった。バーナーでお湯を沸かす。その間に、半分になったキャベツの芯をくり抜き、コンビーフをまるごと突っ込む。そのままお湯に入れるのだ。あとは、コンソメを一個入れるだけだ。パンで食おうが、飯盒(はんごう)でコメを食おうが自在だ。これは、山で教えてもらってから、単独行のときには、まず一回はこれを食っていたような気がする。

▼こういう類は、絶対に手が込んではいけない。なるべく段取りや工数が少なければならない。なおかつ、インパクトがあって、上手くなければならない。

▼山では、人からいろんなやり方を教わったものだ。意外だったのが、切干大根である。なにしろ、かさばらないし、重量もないので、登山用の食材としては実に都合が良い。これを、水で戻す必要はない。

▼これをどうするのかというと、スライスガーリック(薄切り乾燥にんにく)をオリーブ油を使って弱火で香りを出す。ベーコンの真空パックがここで登場する。だいたい、常温で三日くらい持ち運んでもどうということはない、これを適当に切って、加える。そこに、いったん水洗いした切干大根を突っ込んで水を加え、煮る。10倍に膨れ上がるから、一人分なら量は加減しないといけない。このとき、鷹の爪もふんだんに加えると、味がぴりっとしてくる。

▼最後に塩・胡椒で味を整える。これで、飯にぶっかけてもよし、おかずで食ってもよし。山ではこんなものが存外に美味い。

▼ちなみに、山では、あらかじめ料理をつくって持っていくことも多い。よくやるのが「ペミカン」という代物だ。普通やるのは、微塵切りした玉ねぎとシメジが食材だ。バター( 1箱の半分くらい使う)を使って、弱火で煮る。これに鶏肉を加えて出来上がりだ。

▼熱いのが、多少ぬるくなってきたら、ビニール袋に一食分ごとに分けて入れる。二重にしてもよいが、できるだけ中の空気を抜いて、口を縛っておく。そして、冷凍庫でカチンカチンにするのだ。夏であれば、保冷用のタオルや袋に入れて、山へ持参する。

▼山では、これを取り出し、休憩したりしている間に、自然解凍させる。それをバーナーで暖めるのだ。これに市販のホワイトシチューの固形ルーを突っ込めば終わり。山でかなり贅沢なシチューを食うことができる。

▼この「ペミカン」というのは、アメリカに先住するインディアンたちの伝統的な 携帯保存食の一種の呼称だ。加熱溶解した動物性脂肪に、粉砕した干し肉とドライフルーツなどを混ぜ、密封して固めることで保存性を高めた食品だ。毛皮交易の際に携帯保存食として広く利用され、後にスコットやアムンセンのような極地探検家の間で高カロリー食品として利用された歴史がある。日本では、昔から山岳部でよく用いられていたものだ。

▼わたしが、ほかにこの「ペミカン」でやるのが、カレーだ。カレーというのは、山で非常によく食されるのだが、わたしは苦手だ。というのは、どういうわけか山でつくると、手間と時間がかかるわりには、美味くない。理由はわからない。それに、持ち物が多くなり、重い。いいことが一つもない。だから、先に家で作っておき、これを「ペミカン」にして持っていくのが常だった。時間の短縮になるし、かさばらず、しかもなぜかこのほうが圧倒的に美味い。

▼話がそれた。有り合わせの秘密のレシピだった。ちなみに、「ああ面倒だ、お茶漬けでいいや」というとき、普通一般的にはどうするのだろうか。やはりお茶(緑茶)をかけるのだろうか。あるいは、インスタントお茶漬け海苔をふりかけて、お湯を注ぐのだろうか。わたしは、鱈子(たらこ)にしろ、鮭にしろ、なにか塩気のあるおかずがあるのなら、間違いなく「白湯(さゆ)」をかける。よほどそのほうが、あっさりしていて気が利いている。

▼鱈子も鮭も、イカの塩辛も、おしんこの類もなければ、どうするか。長ネギの青い部分。これを細かくみじん切りにする。味噌と醤油と、わずかなみりんを加えて掻き混ぜる。気が向けば、これに七味をかけて、若干ごま油で香りを添える。これをつまみながら、お湯づけを食うのだ。場合によっては、冷や飯にぶっかけて、それでお湯づけで食っても良い。格別に美味い。

▼世にグルメというのが、究極のグルメとは、こういう「有り合わせ」の食い方のこだわりだろう。もっとも、あまりこだわりすぎて、手間がかかってはかえって嫌味だ。ざっくり、あっさりでなければならない。

▼なにも、有名シェフの、とんでもない高い料理を食いにいくのがグルメなのではない。どこどこのお店は安くて美味いよというのを、はしごするのがグルメなのではない。グルメというのは、自分でその場で、格別なものをさっとつくって堪能できることを本当のグルメというのだ。食い物で、これ以上の至福はない。

増田経済研究所 日刊チャート新聞編集長
松川行雄


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