【日刊チャート新聞記事紹介】
[記事配信時刻:2013-04-18 17:30:00]
【閑話休題】第34回・自分磨き
▼どうも、「はやり言葉」には抵抗を感じるものが多い。たとえば、「自分磨き」という言葉だ。若い女性に多い。言っていることは間違ってないのだが、薄っぺらな感じがして我慢がならないのだ。まあまあ、そうとんがらずに、と言われそうだが。
▼誤解されたくないので先に断っておくが、最近の若い女性は何も考えてないとか、勉強が足らないとか、チャラチャラ飾ることしかしないとか、そういう愚痴を言おうとしているのではない。外見を磨くのは大事だろう。花でも、無造作に選んで、雑然としたまま人には渡さない。ちゃんと選んで、ラッピングして、リボンをかけて人に渡す。それが、心遣いというものだ。人に不快感を与えないよう外見に気遣うのは、当然良いことだと思う。習い事にも彼女らはせっせと通う。これも良い。
▼しかし、やはり女性の魅力とは、月並な言い方だが外見ではない。それは男も同じだ。ましてや、若さそのものではない。こんな言葉がある。
「若さを信頼することこそ女の不幸である。若さではなく、ミステリーをまとうべきである。」
誰が言った言葉だと思うだろうか。香水で有名な、あのココ・シャネルだ。私が言ったら噴飯ものだろうが、彼女の言葉なら納得してもらえそうだ。
▼その女性のことをすべて知りたいと思わせる。つまり、一人占めしたいと思わせる。それが、女のミステリーであり、魅力だ。若さでも、装飾でもない。ミステリー、なぞめいた魅力は、その女性の人格すべてに、広さと深さと多様性が求められる。ココ・シャネルの言葉を、そんな風に理解した文章を読んだことがある。それは磨くことでもなく、若さを利用することでもない。それに気づいた女性は、魅力的なのだろう。彼女がもはや若いとは言えず、むしろ年老いていたとしても。
▼人間は、生まれたときから死に向かって走り続けている。人間は、「未完成の死体」とも言われる。若さ自体には、なんの意味も価値もない。逆に、年を取るということはなんて楽しいことだろう。生きてきた成果を知ることができるのだから。たとえそれが幸せなものではなかったにせよ、人生の意味や価値を知ることができる。気づくことができる。
▼哲学者のジャン=ジャック・ルソーが、著書『エミール』の中で、こんなことを書いている。
「私たちは、二度生まれる。一度目は、存在するために。二度目は、生きるために。」
この世に生まれてきた唯一の理由は、おそらく何か大事なこと一つを「気づくこと」だけなのではないか、とさえ思う。
増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄
日刊チャート新聞のコンテンツは増田足のパソコン用ソフト、モバイル用アプリから閲覧可能です。
15日間無料お試しはこちらから
https://secure.masudaasi.com/landing/pre.html?mode=cs