【日刊チャート新聞記事紹介】

[記事配信時刻：2013-07-11 18:45:00]

【閑話休題】第91回・大統領の好物


▼アメリカの大統領も人間だから、食べ物の好き嫌いがある。おやつを含めて、このネタを探していくと、へえ、あの人がと思うようなこともあり、結構面白い。レーガン大統領が、ジェリー・ビーンズ(豆型の甘いお菓子)が大好きだったことは有名だが、いつもホワイトハウスの執務室の机に、ジェリー・ビーンズがなくならないように言いつけていたそうだ。

▼ブッシュ大統領(父親のほう＝パパブッシュ)は、逆にブロッコリーが大嫌いだという話がよく知られている。どこまで本当の話か分からないが、なんでも、ブロッコリーが嫌いだと公言してしまったために、ブロッコリー農家から、トレーラー一杯分のブロッコリー、実に10トンが送りつけられたそうだ。これの火消しにおおわらわだったのが夫人だったそうで、「私はブロッコリーが好きよ」となだめる側に回ったという。

▼ずっと昔の話だが、独立当初のアメリカでは、トマトとジャガイモには猛毒があると言われて、まったく食されてはいなかったそうだ。第3代大統領ジェファーソンはヨーロッパに住んでいたことがあるため、これがただの根拠のない迷信だと知っていた。アメリカでは、安全の証明として公衆の前で、トマトやジャガイモを食べて見せたこともあるが、それを見ていた女性が失神してしまったこともあったそうだから、よほどのことだ。だが、ジェファーソンはトマトやジャガイモをパーティーなどで率先して使用させたことで、だんだんとアメリカ社会に浸透していったという経緯があるそうだ。これは、好みの話とは違うが。余談。

▼ケネディ大統領はどうだったか。朝食はオレンジジュース、ポーチドエッグ(落とし卵)、焼いたベーコン、マーマレード、ミルク、コーヒー。昼食は、ニューイングランド風フィッシュチャウダー。これにコーン・マフィンをつけると、大変喜んだそうだ。夕食はよく食べ忘れていたと言う。実に質素な食生活だが、本人あまり食に興味はなかったようだ。みなさんがよくご存知のように、彼は別(女性)のほうに興味が集中していたのだろう。

▼ケネディとよく比較されがちなニクソン大統領は、どうしても暗いイメージがある。在任中、多くの功績を残しているにもかかわらず、末期のウォーターゲート事件で汚名をこうむり、これだけで評価も人気もいまだに低いままなのは、残念でしかたがない。

▼ニクソン大統領の時代、アメリカでは心臓病患者が増え、それに比例して医療保険も増大するという深刻な事態になっていた。そこで大統領は、1000人にもおよぶ「食と医療のプロ」を集めて食生活の改善に乗り出した。個人の食事に国が介入したのである。

▼そんなニクソン大統領だから、自身の食生活も実にヘルシー。朝食はフレッシュフルーツとカリフォルニアからわざわざ取り寄せしたヨーグルトが定番だったようだ。カッテージチーズ(柔らかで熟成させないチーズ)も大好きで、辞任の朝、ホワイトハウスでの最後の朝食もこのカッテージチーズとパイナップルだったという。

▼一番、「らしい」のは、クリントン第42代大統領だろう。アーカンソーという中西部出身の彼は、ファーストフード好きとして知られている。いかにも普通のアメリカ人らしい。それ以外ではステーキとオニオンリング(玉ねぎをリング状に揚げたもの)が大好物。そのためヘルシー料理を得意とするホワイトハウスの専属シェフは、いつも献立に悩んでいたと言う。

▼クリントンに続く、ブッシュ第43代大統領(息子のほう＝ブッシュ・ジュニア)はテックスメックスとテンダーロインステーキが大好きで、緑黄色野菜は嫌い。テックスメックスとはメキシコ料理を源流とするホットなアメリカ南部料理で、またまたシェフの頭を悩ませたようだ。クリントンにしろ、ブッシュ・ジュニアにしろ、食に関しては地元志向でお似合いの好物だ。私などは、好感が持ててしまう。

▼ちなみに、オバマ大統領はスポーツマンらしく、健康に気を使っている。食事もそうだろう。せいぜい、パイやアイスクリームが好きだというくらいで、あまりこれといったネタが入ってこない。そういえば、グルメという触れ込みだったこの現大統領は、確かにいい料理屋にいくのが好きらしい。それも、○○賞を取ったというような名店ばかりを物色するのだそうだ。実につまらない。もっとハメを外すような部分があってもいい。なにしろ、アメリカの大統領なのだ。ユニークでセクシーでなければ、つとまらないと思うのだが。さもなきゃ、口の周りをケチャップで汚しながら、ビッグマックでもがっついている姿のほうが、よっぽどアメリカ的だ。

増田経済研究所
「日刊チャート新聞」編集長 松川行雄




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